【問題19】 オペアンプによる増幅回路(1)完全マスター! 電子回路ドリル(21)

今回の宿題は、トランジスタ増幅回路をIC化して1つのチップに収めたアナログ素子「オペアンプ」に関する問題です

» 2007年11月15日 00時00分 公開
[横田一弘 埼玉県立新座総合技術高等学校 教諭,@IT MONOist]

【問題18】の解答

 【問題18】のような増幅回路において、入力信号は何倍に増幅されるか? 電圧増幅率AVを求めなさい、という問題でした。

 皆さん解けましたか?

 解けた方も解けなかった方も答え合わせをして、次項の解説までぜひ読んでみてください。毎週コツコツ問題を解いて、電気・電子回路の基礎知識を身に付けてください。

 それでは、解答を発表します!


【問題18】の解説

 【問題17】【問題18】は、基本的なトランジスタ増幅回路の問題です。

 最初に、【問題17】【問題18】の回路を比べてみましょう。

基本的なトランジスタ増幅回路 図1 基本的なトランジスタ増幅回路

 図1(a)は「固定バイアス回路」と呼ばれ、トランジスタと2つの抵抗から構成される最も基本的なトランジスタ増幅回路です。それに対し、図1(b)ではエミッタ抵抗REが付加された構成になっています。

 図1(b)で、REはバイアスを安定化させる働きをします

 トランジスタの電流増幅率hFEはトランジスタによってバラツキがあります。また、hFEは温度変化に敏感で、温度が上昇するとhFEも増大してしまいます

 ここで、図1(b)のトランジスタ増幅回路のバイアス(図1(b)の青線)をたどると、

が成り立ちます。

 エミッタ電流IEは、

となり、コレクタ電流ICとほぼ等しく、よってIBは、

と求められます。

 結果、図1(b)のトランジスタ増幅回路では、hFEが増加するとIBが減少し、そしてIC、IEも減少することになります。

 このような効果を“負帰還”といい、このバイアス回路を“電流帰還バイアス回路”と呼びます。

 それでは、【問題18】を解いてみましょう。

 【問題18】は、電流帰還バイアス回路の電流増幅率AVを求める問題です

 図2に、電流帰還バイアス回路の各部の電流・電圧を示します。

電流帰還バイアス回路の動作 図2 電流帰還バイアス回路の動作

 ここでは回路の交流分を考えます。

 入力信号電圧viは、

となります。

 そして、出力信号電圧voは、

となります。

 よって、電圧増幅率AVは、

となります。

 上記の式より、トランジスタの入力抵抗hieは、hie≪hfe・REであるため、

となり、「3倍」の反転増幅が求められます。

 電流帰還バイアス回路では、交流成分にも負帰還が掛かるため、大きい電圧増幅率を得ることはできません。そこで、図3のようにREと並列にCEを付加します。コンデンサは交流電流のみを流す作用があるので、実効的にREを低下させ電圧増幅率を大きくすることができます。このような働きをするコンデンサを、“バイパスコンデンサ”と呼びます。

バイパスコンデンサの付加 図3 バイパスコンデンサの付加

次回までの宿題 ― 【問題19】

次回までの宿題【問題19】

関連キーワード

回路 | ハードウェア | マイコン | 設計


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.