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» 2007年11月30日 00時00分 公開

メカ設計者たちよ、ニッポンの製造業を救え!(下)エンジニアスジャパン 加藤社長インタビュー(2/2 ページ)

[小林由美,@IT MONOist]
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――品質の最適化の統計学的な考え方とは?

 信頼性でも品質でも、いくつかのパターンがあります。当社のソフトウェアで行っている「最適化」というのは、目的に対して最もいい解を求める、つまり品質や性能特性の平均値をターゲットに近づけていくということです。

 ちなみに、図1の赤い線が制約条件です。赤い線を超えたら、性能もしくは品質が悪いことになります。この「性能もしくは品質が悪い(NG)」、すなわち「制約条件に達しない中で一番良い設計を見つける」という作業が最適化です。

図1 品質のばらつきとNGゾーン

 それに対して、統計的なアプローチがあります。バラツキや制約条件に対して、信頼性の高い解を求めていきます。

図2 信頼性の改善

 まず、制約条件から、なるべく離すことにより、バラツキが出ても制約条件に製品が触れないように、品質特性の平均値を移動することを、信頼性の改善といいます(図2)。

図3 ロバスト化

 平均値は移動せずに、ばらつきの分布そのものを狭くする(ばらつきを抑える)方法もあります。実はこの手法が、日本で有名なタグチメソッドに当たり、すなわち「ロバスト化」と呼ばれるものです(図3)。

 もう1つ、平均値をずらしながら、同時にばらつきを抑えるようにする方法もあります。

図4 ロバスト最適化

 これを「ロバスト最適化」と呼び、「シックスシグマ」は、これに当たります(図4)。

 もし、ばらつきの分布そのものを変えることで、制約条件に接触する部分が十分に少なくなるのであればロバスト化で十分だと思います。しかし、制約条件との関連が不明な場合には、ロバスト最適化を考慮する必要があるのではないでしょうか?

――シックスシグマについて教えてください。

 シックスシグマの手法は、20年ぐらい前にモトローラで実践されました。「実験のときは結構良かったのに、実際に製品を出荷してみたら故障率がすごく高くなってしまう」、これはどこの企業でもよくあるパターンですが、モトローラのポケベルでもこのようなことが起こっていて、その問題に対処するために始められたのです。そのとき、製品の品質を統計的に分析したら、出発点の品質特性値の標準偏差が1.5σ(シグマ)でした。社内のプロセスを改善して3σにして、社外のサプライヤのプロセスを改善して5σにして、さらにロバスト設計により6σの製品品質を達成できたのです。

 また、「量産品は、長い生産期間や使用環境で品質にバラツキが起こり(*その要因として、金型や工具の疲労・摩耗などが挙げられます)、最終的には1.5σずれてしまう」という統計学的な特性も見いだされました。それによれば、「設計時もしくは新製品時に6σの製品」とはつまり「使用時に4.5σの製品」だということになりますね。

 「標準偏差が1σ」とは、「100万個当たり31万7000個の不良品が出ること」を示します。6σでは、「100万個当たり0.002個の不良品」ということになり、ひとまずは信頼性が高いといえます。

 ちなみに、ほとんどの日本企業では、3〜4σで設計しているようです。3σなら「100万個当たり2700個の不良品」で、これならまあ、まずまずの品質ですよ。ところが、生産期間や使用環境によるバラツキで、そこからさらに1.5σずれれば1.5σですから、「100万個当たり約6万7000個の不良品(6.7%の不良率)」になってしまいます。

 なので、できるかぎり6σレベルで設計しなければならないということになります。そうすれば、1.5σずれたとしても4.5σですから、100万個当たり3.4個の不良率なので、大きなトラブルは発生しないというわけです。

――日本の書店だと、シックスシグマの本といえば、「設計の本」というよりは、「経営学の本」として売られていますね。

 日本で出版されているシックスシグマの本の多くが、「DFSS(Design For Six Sigma)とは経営品質を実現するための業務プロセスを設計する、あるいは再設計する」という内容だからだと思います。

 しかし実はDFSSには「製品の品質をシックスシグマレベルに持っていくための設計プロセス」という「狭い意味」もあるのです。日本のシックスシグマカンパニーと呼ばれる企業は、どこも経営学的な方、すなわち「広い意味」でのシックスシグマを中心に推進しているために、製品設計段階における品質向上には十分反映されず、相変わらず生産技術による品質改善に依存しています。

 ですから、設計技術者も誰かに「シックスシグマを勉強しろ」といわれたとしても、「ただでさえ設計が忙しいのに、そこまで考えている余裕はないでしょう」と考えてしまう、そんな感じですよね。

 しかし、こんな考え方をしているのは、日本だけなんですよ……。

――「日本だけ」ということは、韓国の設計技術者は、「狭い意味」の方のシックスシグマを理解しているということになりますか?

 そうですね。最近世界的に活躍している韓国企業の多くはシックスシグマカンパニーであり、狭い意味のシックスシグマのプロセスもしっかり実行しようとしています。また設計における品質改善としてシックスシグマとタグチメソッドをうまく組み合わせようとしています。そういうこともあり、韓国の製品の品質が大幅に上がってきたのではないでしょうか。

 「韓国の製造業というのは、すでに世界のトップレベルである」ということを日本の技術者も一般の人も理解しなくてはいけないのではないかと思います。また、韓国の企業の強みはやはり、生産技術を日本から学び、設計技術を欧米から学んでいることなのではないかと思います。

 もはや「ニッポンの製造業が一番!」だと思っているのは、日本人だけです。確かに、生産技術そのものは、まだトップレベルかもしれません。しかし、その技術を最大限に生かす設計がなされていないために、製品の品質が低下している現状だというのは、すでにお分かりいただけたのではないかと思います。

 いまの日本の製造業に対して危機感を持ち、製造業の意識改革をし、日本で設計をちゃんとしていくようなきちんとした教育体制を作っていくことも大事なのではないでしょうか。大学や企業などで、優秀な設計技術者をもっと積極的に育てていかなければならないと思います。

 近い将来、「日本で“生産した”ので安心」ではなく、「日本で“設計した”ので安心」、つまり「どこの国の誰が作ろうとも、世界レベルでの高性能、高品質な製品が生産可能な設計がなされています」と堂々といえるようになりたいものですし、そこに日本の企業の競争力の向上、すなわち生存と成長へのキーがあると思います。

エンジニアスジャパン 代表取締役社長 加藤毅彦氏

――加藤社長、お忙しいところ貴重なお時間をいただきましてありがとうございました。

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