部品図をおざなりにする者は、不良品に泣くデキるエンジニアのCAD設計(5)(2/3 ページ)

» 2007年12月07日 11時00分 公開
[山田 学ラブノーツ/六自由度技術士事務所]

魂を込めた製図をしよう

 設計者の皆さんは、3次元CADを使って設計することで、“エンジニアリングな設計”をしていると勘違いしているかもしれません。そのため、設計者はCADで計画図を描いたら、設計者の仕事は「もう終わり!」と勘違いしている人も多いと思います。

 CADで計画図を作成した後には、部品を製作するための部品図を作成する必要があります。ところが、この部品図は設計者の仕事ではなくトレーサーや外注設計者の仕事と勘違いしている人も多いようです。

 ベテランのトレーサーや外注設計者が作図を引き受けてくれる場合は、設計者の意思を確認しなくても、どこが基準か、どんな寸法公差が必要かを勝手に判断して部品図を描いてくる場合があります。しかし若手のトレーサーや新入社員に作図を依頼すると、そんなことは考えもせず、端から順番に寸法線を記入されてしまいます。

 現状のように、日本国内で加工する分には、基準があいまいであったり、公差が不適切であってもそれなりの寸法精度で出来上がるため、すぐに不具合は発見されません。ところが、同じ図面を海外で加工するとさまざまな不具合が発生して、収拾がつかなくなるのです。

 このように製図作業を分担するシステムが会社内にあると、設計担当者は製図の重要性を見失い、おろそかに扱ってしまいます。部品図を作成すること、つまり機械製図は、技術者の間では次のように思われています。

  • 部品に寸法線を記入するだけの単調作業
  • 創造性のない仕事
  • 寸法を記入するだけなら、誰がやっても同じ

 そう、製図は地味な作業で、技術的なインパクトもないし、製図ができるといって上司から高い評価はもらえません。

 でも、どんなに素晴らしいアイデアを創造し、CADで計画図を描いても、そこには魂が入っていなければ、単なる「画面上のオブジェクト(物体)」でしかありません。トレーサーや設計外注者が、計画図を理解して図面を描いてくれると期待してはいけないのです。寸法基準や公差を明確に指示できなければ、設計者といえません。

 製図は機械設計者が行う設計作業の中の「最後のとりで」といえます。つまり、設計者自身が生み出した部品1つ1つに魂を入れる作業なのです。

 魂を入れる作業とは、次の5つの項目を部品図として指示することです。

  1. 寸法基準(機能基準・加工基準・計測基準)を決める
  2. 寸法公差・幾何公差を記入する
  3. 表面性状(表面粗さ)を記入する
  4. 材料を指定する
  5. 表面処理(めっきや熱処理など)を指定する

 これらの5項目を設計者として意思を入れて製図することで、製品の信頼性向上やコスト低減につながるのです。

 そして設計者が意思を入れて製図した部品図は、第三者が図面を見たとき、誰でも同じように判断できるものでなければいけません。そのために製図の作法を決めて守ることが大切なのです。

 設計者は、部品図を出して部品が出来上がるのを待つだけですが、設計者が出図した図面を後工程の技術者が見て作業をするということを意識しなければいけません。

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