連載
» 2008年01月18日 00時00分 公開

CADに振り回りまわされるのは、もうたくさん龍菜の3次元CAD活用相談室(3)(2/3 ページ)

[西川@龍菜,@IT MONOist]

変更しやすいモデルって、どういうこと?

 ゆみさんの頭を混乱させてしまったようなので、テーブルの上にメモ帳を広げ、簡単な樹系図を描きながらモデリングの考え方を説明することにした。普段持ち歩いているA4サイズのメモ帳は、全面に5mmの方眼罫が印刷されているものだ。文字を書くのはもちろん、フリーハンドの図やグラフを描くのにも使いやすいのでオススメである。

龍菜「いまから描くのは、フィーチャ履歴を表現したモデルツリーだと思ってほしい。丸の大きさは設計機能の重要度に対応するとしよう(図2)」

図2 変更できないモデルのツリー

ゆみ「小さな丸と大きな丸がバラバラにつながっている感じですね?」

龍菜「そう。設計で重要な機能ほど、実際にも大きな形状となる場合が多いから、形状の大小と考えてもらってもいいかな」

ゆみ「……ということは、このツリーをどう見ればいいのでしょう?」

龍菜「設計の重要度や形状の大小に関係なく、作りやすいところからモデリングしていったら、『こんなフィーチャ履歴になりました』というところかな」

ゆみ「なぁるほどぉ〜! これは分かりやすいです。私のモデリングもこれに近いのかも。フィーチャにフィーチャを重ねるから、親子関係もたくさん付いてしまうんですよね」

龍菜「親子関係が数珠つなぎになった状態なので、最初のフィーチャに設計変更が発生したら、大変な作業になることが想像できるでしょう?」

ゆみ「はい、親になっているフィーチャを変更したら、それを参照してモデリングしている子のフィーチャにも影響が及んで、延々とフィーチャの再定義を続けていく羽目に陥ります」

龍菜「最初のフィーチャでなくても、どこかのフィーチャに変更が発生したら、同じことだよね。複雑な断面スケッチも、いくつかの設計機能を1つのスケッチに含めているにすぎないので、変更しにくいのは同じことだ」

 このとき、ゆみさんは<だからこそ、設計変更を予想しながらモデリングしておく必要があるのでは?>と考えたようだが。読者の皆さんは、どう考えただろうか?

龍菜「今度は、ちょっと形の違うツリーを描いてみるよ(図3)。まずは、設計で重要な機能を作って……」

ゆみ「大きな丸だけのモデルツリーですか?」

図3 変更できるモデルのツリー

龍菜「最初に設計で重要な部分を作って、それほど重要じゃない形状はツリーの途中に挿入していくとね……」

ゆみ「大きな丸に小さな丸が、ぶら下がるようになりますね」

龍菜「設計で重要な機能から順番にモデリングしながら、フィーチャ履歴を適切な位置に挿入していった結果だよ」

ゆみ「ツリーの形は違うけれど、最初のフィーチャに変更が発生したら、次々とフィーチャの再定義を続けていくことになるのは同じことなのでは?」

龍菜「ところが、そういうことにはならないんだ」

ゆみ「どうしてですか!?」

龍菜「設計変更というのは、どこかの設計機能を変更することになるんだけど、重要な機能ほど変更の頻度は少ないんだ。逆に、それほど重要じゃない機能が頻繁に変更されるという経験則がある」

ゆみ「このツリーだと、大きな丸の部分ほど設計変更が発生しにくいってことか!」

 そう。小さな丸の部分には設計変更が頻繁に発生するけれど、親子関係がまとまっているので、フィーチャの再定義が延々と続くことにはならない。つまり、設計変更を予想する必要はなく、設計で重要な部分から作っていけば、自然と変更しやすいモデルが出来上がるというわけだ。

ゆみ「あー、なんかスッキリしました」

 胸のつかえが下りたのだろう、彼女は氷も溶けて表面が水滴だらけになったコップの水を一気飲みすると、以下のような皮肉っぽい質問をぶつけてきた。

ゆみ「設計の機能とか、フィーチャの順番とかをあれこれ思い悩むくらいなら、フィーチャ履歴のない3次元CADを使った方が楽じゃないんですか? 私の会社でも、そんな主張をしている人もいますよ」

「ノンヒストリーって、簡単」は、甘ーい!

 ヒストリーCADを使いこなせず四苦八苦している設計者にとっては、ノンヒストリー系の方が「簡単にモデリングできる」「なんだか楽そう」なんて思えることもあるのかもしれない。しかし、「CADを使うこと」=「設計すること」ではないのだから、いずれの3次元CADであっても、使いこなすにはそれなりの設計スキルが必要である。

龍菜「履歴のない方が、本当に簡単で楽なの?」

ゆみ「そうだと思いますよ。だって、親子関係を気にせずに変更できるんだから」

龍菜「じゃあ、簡単な部品で試してみよう。ゆみさんは“ノンヒストリー系CAD使い”の役だよ?」

ゆみ「分かりました」

図4 軸受けの3次元モデル

 私は、軸受けの画像をパソコンの画面に表示しながら(図4)、ヒストリー系CADとノンヒストリー系CADの「本当の使い方」を説明することにした。

龍菜「これは、メタル一体型の単純な軸受けなんだけど……」

ゆみ「形状はそれほど難しくなさそう。適当に基準平面を作って、ボルト留め用のフランジ部分をスケッチするでしょう? それから軸受けになる部分を……(図5)」

 ――チョチョイのチョイっとな!

図5 ノンヒストリーCADのモデリング(ゆみさん)

龍菜「ほほぉう。簡単やねぇ?」

ゆみ「……龍菜さん、それって絶対イヤミでしょう?」

龍菜「そうじゃないけど(笑)。いまのは、軸受けの形を作っただけだよね?」

ゆみ「簡単でしょう?」

龍菜「形状は簡単だけど、フランジ部分はどうしてひし形なのか分かる?」

ゆみ「えっ!? それは例題がそうなっていたから……」

 それでは完成形状をトレースしただけにすぎない。物の形にはすべて意味があるのだ。

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