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» 2008年03月17日 00時00分 公開

リーン製品開発でムダな工数を30%削減する!(1):日常業務に隠されたムダをとことん洗い出す (2/3)

[後藤智/PTCジャパン,@IT MONOist]

グローバルな視点も大事

 人材の流動性が極めて低い日本では、たとえ中途採用であっても、本当に採用が困難です。確かに、最近のモノづくり企業は新卒採用を増やし始めてきました。しかし、設計者が一人前になるには、どうしても最低3年はかかります。国内向け製品の開発のために、人材豊富な東アジア地域の技術者を積極的に採用している日本企業も多くなりました。

 しかし問題もあります。どんなにCADの操作能力が高くても、設計自体の造詣がないために、結局莫大なコストの掛かる手戻り(設計変更)が発生することも否めません。エース級の日本人設計者が、現地技術者より10倍以上高いコストを掛けて、火消しに回るということもあります。非常に残念ですが、結果として、海外人材は使えないという印象がトラウマとなります。

 その一方で、物理的に人材は国内だけではまったく足りません。自分の会社の事業戦略が、国内市場よりむしろ海外市場であることも多くなっていませんか。売り上げの50%以上が海外という企業は多いです。これからは、設計者もグローバル規模で最適調達すべきという認識を、皆さんのような現場の技術者自身は認識しておく必要があります。今後、皆さんの同僚には、海を越えた異なる国の異なる民族も加わり、日本人の同僚と同じように増えます。そのような事実も直視する必要があります。

 つまり、グローバルな設計環境においても、どこにムダがあるのか。そのことを設計者1人1人が意識する時代となっています。単純にそれをITでムダ取りできるのであれば、システムに任せるべきです。ただし、ヒトとシステムとのマッチングがベストになるかどうかは、それぞれの国や民族の考え方にも依存することはいうまでもありません。

なぜムダが出てしまうの?

 さて、そもそも、なぜムダが出てしまうのでしょうか。特に、今回着目している開発・設計・試作の分野では、皆さんはどんな業務環境で仕事をしていますか。設計プロセス全体でマクロ的に、個人1人1人の業務でミクロ的に、それぞれのムダを確認していきましょう。

 まず、1998年前後に、3次元CADによるコンカレントエンジニアリングが非常に注目されました。この取り組みによって、短納期開発の目覚ましい成果がありました。量産品を扱っている企業では、この10年で設計リードタイムは、50%短縮できたといいます。受注品でも、おおむね30%の時短効果がありました。一貫して、企画〜構想〜詳細〜試作〜生産準備の、“同時並行開発”に取り組んできました。

 人材の流動性の低い日本企業ですから、結局、それを自社内の人材で実践していたことになります。優秀なエンジニアに限って、すべてのプロセスにかかわっていたり、後工程での不具合対応の火消し役に回ったりすることは少なくありません。これでは、次の開発案件に優秀なエンジニアを投入できません。結果、顧客に魅力ある製品イノベーションが損なわれます。

 これを危惧(きぐ)した企業は、企画・構想のプロセスと、詳細・試作・生産準備のプロセスとに、あえて2分割する体制を取る場合もあります。つまり、再び工程分業する体制です。また、製品機能自体が技術的に複雑になり過ぎて、分業しないと設計できないという事情もあります(図2)。

図2 製品開発スタイル進化の過程 図2 製品開発スタイル進化の過程

 さらには、コスト低減の目的で、単純な設計や、ルーチンワークな詳細設計の仕事は、正社員ではなく契約社員(派遣社員)を流動的に雇い、固定費の削減を狙う取り組みが、設計現場でも非常に多くなりました。全設計者の半数以上が派遣さん、という設計現場も珍しいことではない昨今です。

 そして設計者同士の関係はばらばらになってしまいました。これでは、プロセス同士が分断され、人の付き合いも希薄となります。結果として、ものづくりの全体の情報を把握するために、過剰な調整業務が莫大な設計工数として加算されてきます。これは明らかにムダな工数です。

 かといって、いまさら10年、20年前の大部屋方式に戻れるほど、単純ではありません。良かれと思って取り組んできた、コンカレントエンジニアリングから工程分業までの開発スタイルの変遷が、設計のムダを助長していることも否定できません。

 いま利用している社内の情報システムはどうでしょうか。分散した設計体制をつなげるためには、社内のIT基盤は必要不可欠です。ワープロソフト、表計算ソフト、電子メールは当然ですが、そこにCAD/CAM/CAE、図面管理、部品表管理、生産管理システム、会議室予約システム、購買部品手配システム……。とにかく、情報システムに埋もれた中で、日々の設計をしています。

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