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» 2008年03月21日 11時00分 公開

いまさら聞けない エンジン設計入門(3):縦置き直6サイコー!? シリンダ(気筒)の基本 (2/3)

[カーライフプロデューサー テル,MONOist]

 アルミの強度の弱さは、シリンダブロックにシリンダヘッドを組み付けただけでも変形してしまうという事実からもご理解いただけると思います。これらを留意した製造の工夫として「ダミーヘッドホーニング」があります。シリンダ内部はピストンが高速で上下運動しますので、理想としては真円であることが望まれます。

 しかしシリンダヘッドを組み付ける(ボルトで締め付ける)ことでこの真円度が崩れてしまうということを懸念して、

 「ダミーのシリンダヘッドを組み付けた状態でシリンダをホーニング(最終加工)する」

という工夫をします。

 要は先に変形させておいて、その状態で真円加工するということです。ただし通常の製造過程に加え、さらに工程が増えてしまうので、全てのエンジンに施行することは困難であると考えられます。

 また少し踏み込んだ解釈をすれば、本当に求めたい真円度は、

 「エンジンに熱や負荷が掛かった状態での真円度」

ですので、これらを計算に入れた製造手法が導入されていくことを筆者は期待しています。燃費向上に欠かせない「フリクションロス(摩擦抵抗)の低減」という観点で見れば、シリンダ内のフリクションはとても大きな課題だと思いますので、ぜひとも実現してほしいものです。

 シリンダ内部は高温高圧にさらされる過酷な部分であり、さらにピストンの摺動にも耐えなければいけません。従って「油膜の保持」はシリンダにとって必要不可欠なものです。

 そこで、ピストン同様にシリンダ壁には「油膜の保持」のための細かい溝が用意されています(写真3)。

シリンダ壁の油膜保持用溝 写真3 シリンダ壁の油膜保持用溝

 筆者が初めて新品のシリンダを見たとき、「新品やのにめっちゃ傷だらけっすよ!」と勘違いしてしまった思い出を第1回でもお話ししましたが、肉眼で十分に確認できるほどの溝です。金属タワシでこすってできた傷のように見えますが、これは油膜保持に必要な部分です。

シリンダの気筒数

 現在までに考え出されたエンジンのレイアウトというのは数え切れないほどあります。もちろんいままでにないエンジンレイアウトを考え出すというのも1つの開発手段ではあります。

 ここでは「数あるエンジンレイアウトの中から、どのようにして1つのレイアウトに絞り込んでいくのか?」基本的な考え方を説明したいと思います。

 まず開発する車の基本的なコンセプトというのが重要になってきます。走行性能重視のスポーツカーなのか、乗り心地重視の高級車なのか、それとも使い勝手や安さが売りのコンパクトカーなのかで大きく方向性が変わってきます。

 基本的に、1つの気筒の排気量を小さくして多気筒化することで「高回転型エンジン」になりやすく、スポーツカーなどで採用されるエンジンなどに採用される高性能エンジンになります。

 しかし1つの気筒があまり小排気量(多気筒)になり過ぎても、それだけ多くのピストンが必要となって、

  • フリクションロスの増大
  • 冷却損失の増大

につながります。つまりデメリットが大きくなって実用的ではなくなるということですね。

 「冷却損失」とはエンジンの燃焼行程において発生する高温高圧のパワーが、エンジン損傷を防ぐために設けられている冷却システムなどに吸収されてしまうことをいいます。爆発力に比例する高温高圧のパワーを回転力につなぐことができないので「損失」という表現がされますが、エンジン保護の観点では必要なことですので非常に難しい部分です。

 現在考えられている1気筒当たりの適切な排気量範囲は「250cc〜600cc」です。これは「出力」「重量」「最高回転数」「音振性能」などを計算してみると、必然的にこの範囲内に収まるようになるのです。

 開発する車のコンセプトに合わせて1気筒当たりの排気量をイメージしたうえで、大まかな総排気量との兼ね合いで必然的に気筒数が決まってくるはずです。もちろん考える項目の順序というのは定まっていませんが、求められているコンセプトに合わせて検討していけば自然に「排気量」「気筒数」というのは決まってくるはずです。

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