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» 2008年04月21日 00時00分 公開

リーン製品開発でムダな工数を30%削減する!(2):今日から始める設計ムダ取り健康診断のポイント (2/3)

[後藤智/PTCジャパン,@IT MONOist]

ステップ(1):会社側の大義(ビジョン)の理解

 会社の事業戦略や設計現場の業務上の取り組みに関する問診です。現場のムダ取りの「大義(ビジョン)」を、マネジメント層がどう考えているか確認します。

 設計部や製造部の部長さん以上の方が対象です。できる限り、事業部長さんまで巻き込んでほしいところです。会社の規模によっては、ずばり社長さんや、次期社長候補の息子さんも、ぜひメンバーに加わってください。

 インタビュー形式で進めます。1人当たり約1時間です。限られた時間ですが、マネジメント層1人1人の想いを直接肌で感じながら意見集約することが大事です。

 まず、ステップ(1)で使用する問診票には、「製品開発のありたい姿」を9個用意しています(表1)。1〜6は、会社の成長性に貢献するための製品開発の方向性です。6〜9は、会社の収益性に貢献するためのものです(6番目は、成長性と収益性の両方に関係があります)。

1. 現在の市場の中で、新規顧客層への浸透をはかることにより、シェアを拡大すること

2. 市場シェアを維持するため、競合の市場参入に対して何らかの障壁を設けること

3. 顧客の要望に、これまで以上に適切に対応し、売上数量を伸ばすこと

4. 主力製品ラインの販売に加え、サービスおよびその付随品などを販売することで収益を拡大すること

5. 新しい革新的技術や応用製品の開発に取り組み、新しい市場を開拓すること

6. 高付加価値製品を開発することによって、高価格でも売れるものを提供すること

7. 製品自体のコストを削減すること(原材料、人件費など)

8. 製品のライフサイクル全般にわたるコストを削減すること(企画、開発、調達、生産、販売、保守など)

9. 製品に関する有形資産・無形資産の再利用性を高めること(有形:在庫、無形:知財)

表1 9つの製品開発のありたい姿

 次に、この優先順位に応じて、設計現場ではどういう取り組みをITで合理化してほしいと考えているかを、もう少し掘り下げた質問で投げていきます。これには、約80の質問カードが用意されています。

 日本では、図1に示したような21種類の内容が話題の中心になることが多いです。この21種類について、それぞれ優先順位を考えていきます。先ほどの9個のありたい姿との相関関係も見ながら1つ1つマッピングをしていきます。

図1 IT活用によって業務の合理化が期待できる現場の取り組み問診カード(抜粋) 図1 IT活用によって業務の合理化が期待できる現場の取り組み問診カード(抜粋)

 マネジメント層の考えの方向性は、当然担当の責任内容によって1人1人異なります。その方向性の相違点や特異点を、この機会に確認することで、幹部同士のコンセンサスを合わせられる効果もあります。

 幹部同士でベクトルがばらばらのままでは、どの業務のムダを除去すればいいのか、現場側が振り回されてしまいます。会社の方向性にマッチしないITを導入しても、それこそムダなIT投資になりかねません。

 ところで、「上の人は、何も考えていないから、こういう活動は意味がない」と、思っている読者の方はいませんか。

 決してそんなことはないです。誰でも、その役職・役割に応じた“ありたい姿”というものは、必ず持っています。ただ、そのことが、うまく表に現れていないのかもしれません。経営層に対しても、きちっと問診する機会を持ち、会社の大義(ビジョン)を確認しなければ、現場のムダ取りの意義が見えてきません。

 例えていうならば、「来春の結婚式までに、無理のないウォーキングで、3kg程度のダイエットで済む」のか、「徹底した食事制限までして、いまから夏休みまでに、10kgも減量しなければならないのか」。この2つは大きな違いです。いま、自分の会社の製品開発システムが、どのくらい危機的な状況に直面しているのかを、真剣に計測する時期に来ています。

 下記に、ある企業での実例として、5人の経営幹部の方々の、それぞれのスコアを一覧にしてみました。この企業の経営層が考えている製品開発戦略の方向性や、中間層が期待している設計現場のあるべき姿について、皆さんはどのように感じますか。ちなみに、私は、社長と工場サイドのベクトルが合っていないことが、非常に気になります。

ある経営幹部のスコア一覧

1.現市場の中で、新規顧客層へのシェア拡大を……

全体 社長 取締役全員 本社サイド 工場サイド
10 9 9 10 7

2.競合の市場参入に対し、何らかの参入障壁を……

全体 社長 取締役全員 本社サイド 工場サイド
2 2 2 2 2

3.顧客の要望に、これまで以上に適切に対応し……

全体 社長 取締役全員 本社サイド 工場サイド
8 5 8 5 9

4.サービスや付属品などで、収益を拡大……

全体 社長 取締役全員 本社サイド 工場サイド
5 7 5 7 6

5.新しい革新的技術や製品開発で、新しい市場を……

全体 社長 取締役全員 本社サイド 工場サイド
4 6 4 4 4

6.高付加価値製品で、高価格でも売れるものを……

全体 社長 取締役全員 本社サイド 工場サイド
7 4 3 6 8

7. 製品自体のコストを削減する……

全体 社長 取締役全員 本社サイド 工場サイド
9 10 10 9 10

8. 製品ライフサイクル全般にわたるコストを削減する……

全体 社長 取締役全員 本社サイド 工場サイド
3 3 6 3 5

9. 製品に関する有形・無形資産の再利用性を……

全体 社長 取締役全員 本社サイド 工場サイド
6 8 7 8 3

 考察 総じて「1. 新規顧客層へのシェア拡大」「7. 製品コスト削減」の優先度が高くなった。全社で一致した視点といえる。「3. 需要対応力の強化」「6. 高付加価値製品の開発」に関して優先度にややバラツキが見受けられる。6は工場サイドでの優先度は高いが、経営サイドからは現状を改善、筋肉質化してから次のステップに進みたいという意向がフォローアップインタビュー時に議論された。


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