製缶構造と板金構造のイイトコドリでコストダウン事例で知るVA・VEのコストダウン手法ABC(1)(1/2 ページ)

とにかく既存の設計物を参照に設計すればいいわけではない。加工法と工程を考慮し、製缶構造の筐体を最適化設計しよう

» 2008年04月25日 00時00分 公開
[舩倉 満夫/フナックス・エンジニアリング,@IT MONOist]

 本連載では産業機械をコストダウンする手法の1つであるVA(価値分析)およびVE(価値工学)を紹介します。

 仮想のユニットを設計しながら、そこに潜むコストダウンの要素を項目ごとで考えていきましょう。現実の設計内容とVA・VEを行った場合を比較し、事例を用いながら説明します。

【設計課題1】部品の一部をVA・VEする

 【設計課題1】では「製缶構造」の一部に板金構造を取り入れてのVAを行います。製缶構造は、「アングル」「チャンネル」「角パイプ」などを用いて形成します。この構造にすることで、要求仕様もしくはそれ以上の強度となります。

 以下の筐体(図1)ではアングル材を使用し、加工しています。赤色に区分けしている部分をモーターやインデックスなど小部品を取り付ける台座とします。

図1 【課題1】の筐体(製缶構造)

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 製缶構造にアングル(赤色)2本を溶接した後、さらに下部に補強バー(濃緑色)2本を溶接しています。

別に製缶構造でなくてもいい部分を見極める

 各部分において、周りの構造に左右されることなく、“要求されている仕様に基づいた構造体”を“最適な加工方法”を用いて形成することで、最適設計にします。

 製缶構造の利点は、「剛性を持たせること」です。剛性が必要な個所においては、製缶構造で製作します。それほど要求されない個所については、板金折り曲げ構造にします。そうすることで、NC加工で精度の高い品質を維持することもでき、加工工数や組み込み工数の削減へとつながります。

 この例では、剛性を要求されない(小物を取り付ける用途であるため)台座部を板金で一体部品化することで、加工工程の簡素化(アングル構造と板金とすることで製作工程を分ける)、工数削減を図ります。 板金の台座は、アングルの台座とほぼ同じ仕様を満たすよう設計します(図2)。

図2 【課題1】の筐体、VA・VE後

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 板金折り曲げ形状には、強度を維持させるため“三角リブの溶接”としましたが、この三角リブを板金部と一体化してもいいでしょう。

 VAの利点は、“1つの発想で終わり”ということではなく、それぞれ個別に発想の展開ができることにあると筆者は思っています。これを肝に銘じておけば、さらなるコストダウンおよび品質改善が行えるということになります。

動画1 台座をアングルから板金に変更する*別窓で表示します。「START」をクリックすると、動画を開始します

One Point 部品削減

VAの利点の1つが部品削減です。【設計課題1】の例は部品点数4点から3点となりました。さらに台座を完全に板金で一体化させることで1点にできます。これは、管理品目の削減にもなり、注文書発行においても合理化が図れることになります。



製缶構造と板金構造のメリット、デメリット

 以下で、製缶構造と板金構造を比較しました。これらを考慮して、最適設計の見極めを行います。

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