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» 2008年06月27日 00時00分 公開

日本のエンジニアはNASAと同レベルの待遇?モノづくり最前線レポート(4)(3/3 ページ)

[上島康夫,@IT MONOist]
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製造・サービス拠点が多ければ多いほどPLMは効果を表す

 最後に取り上げるのは、全世界にサービス・製造拠点を展開するグローバル企業におけるPLM導入の成功事例である。「統合されたグローバルな製品データ管理」というタイトルで講演を行ったのは、油田・ガス田開発に必要な資材やサービスを提供するWeatherford社で、PDM(Product Data Management)システムの構築責任者を務めるルイス・ローレンス(Lewis Lawrence)氏だ。

 オイルビジネスがあるところ、必ずWeatherford社があるといわれるほど業界有数の企業であり、多くのM&A(160社以上)による拡大路線で世界100カ国以上の拠点を持ち、4万人以上の従業員を持つ同社は、“Design Anywhere-Build Anywhere”(どこでも設計し、どこでも作る)という事業方針をスタートさせた。これを実現するPLMとしてWindchillを導入したという。100万以上の部品をPLMで管理すると同時に、効率的な在庫・資産管理を行うため、ERPシステム(JD Edwards)とも連携させたシステムを構築している。

Weatherford ルイス・ローレンス氏 Weatherford ルイス・ローレンス氏

 ローレンス氏はこのデータ管理システムで目指したものを3つ挙げて説明した。1つ目は「検索と取得の効率化」である。同社の製品は100万を超える膨大な点数を持つことに加え、製品寿命が10年以上も続くという。ここで重要となるのは、同じ仕様の製品があることに気付かず再設計したり、既存のコンポーネントがあるのに同じものを構成しないこと。既存の設計情報や在庫を徹底して再利用し、重複開発を削減するために、PLMシステムは不可欠だったという。現在、同社のすべてのパーツ情報はPLMに格納され、さまざまな手段、さまざまなシステムから検索可能になっているという。

 2つ目は設計部門から製造部門へのスムーズな流れを作り出すことである。設計データはPLMの中で管理され、設計変更やレビューを行い、最終的に設計部門の作業が完了すると、自動的にERPへデータが転送され、製造部門がこのデータを使って生産業務を行う。つまり製造部門のエンジニアは、PLMからのトリガによって製品の製造開始を指示されるのだ。

 最後の目標は、マネジメントの変革である。ローレンス氏によれば「設計変更は、設計以外の部門にも変更の影響が及ぶということを理解すべきです。設計者が図面を変更するだけでは、実際の製品に変更が加えられることはありません。変更が実際に製品に実装されなければ、設計変更に費やしたコストはムダになるのです」。このムダを断ち切るために、Weatherford社では次のようなシナリオを実現したという。

設計変更のシナリオ

  • 中東のドバイにいる製造部門のエンジニアは、PLMユーザーではなく、ERPシステムを参照しながらあるコンポーネントの製造に取り掛かった。すると設計変更が起きていることに気付く
  • 製造部門のエンジニアは同じドバイにいる設計部門のエンジニアにアドバイスを求める。すると設計部門のエンジニアはPLMにアクセスして、設計変更を担当しているのが米国テキサスの設計エンジニアであることを知り、問い合わせを行う
  • テキサスの設計エンジニアは、設計変更は承認済みになって、最新のバージョンがリリースされているので、製造を開始してもOKだと答える。ただし、在庫品や製造途中のものはやり直しが必要だ
  • ドバイの設計エンジニアは、製造エンジニアに製造を開始しても大丈夫だと伝える。製造エンジニアがERPを開くと設計変更済みの製造データが更新されていて、作業を開始できる状態になった。“設計変更中”のステータスだったのは、テキサスの製造部門で作業が続いていたからだと判明した

 このPLMからERPへ自動的につながるワークフローは、設計中や仕様変更中の製品を誤って製造したり、古い仕様の製品を製造してしまう無駄の低減に役立つ。また変更にかかわるコストも算出できる。変更に必要なタスクは、ITシステムによって特定の部門へ正しく伝達される。設計変更にかかわる製造部門の混乱は、このシステムによって解決されたという。

 Weatherford社の事例は、世界各地に拠点を多数持ち、非常に多くの製品点数を管理するという、PLM導入に最も適した企業だといえる。もし読者の中でWeatherford社に部分的でも類似する製造スタイルを取っているのであれば、PLM導入を検討する価値はあるだろう。

◇◇◇

 日本の製造業はどちらかといえば垂直統合型の経営スタイルが多いため、欧米ほどPLMの導入が進まないという事情があるようだ。ここで取り上げたEAC社とWeatherford社の事例は、まさに欧米型の水平統合型モノづくりの企業でありPLMとの相性は良い。しかし最近、日本の製造業でも中堅企業からSMB企業までグローバル化の波は押し寄せている。海外拠点と連携しながら設計・製造フローを効率よく回していくには、PLMに代表されるデータの集中管理、コラボレーション機能、ワークフロー管理といった業務をサポートするITシステムの導入は必要になるだろう。

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