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» 2008年08月05日 11時00分 公開

カムシャフトを2本にするか、1本にするかいまさら聞けない エンジン設計入門(7)(2/3 ページ)

[カーライフプロデューサー テル,MONOist]

ハイカムとは

 レースエンジンなどでエンジン出力を上げるチューニングの際、「ハイカム」と呼ばれるパーツを組み込むことがあります。その名(high=高い)の通り、カム山がノーマル形状に比べて大きく(高く)成型されています。つまり最大バルブリフト量が大きくなるので、高回転領域などでの混合気の取り込みがスムーズとなって充填(じゅうてん)効率が向上します。ただし、どんな車に取り付けても性能が向上するというわけではありません。あくまで、高回転領域の走行が主であるレースや、最大出力のみに注目するチューニングなど、ごく限られた分野でのみで有効な手段といえます。

 バルブリフト量が向上し混合気の取り込みがスムーズになることは、全ての車においていいことのように思えます。しかし普通に街中を走行させるときにメインとなる低・中回転領域(取り込む混合気が少ない場合)では問題が生じます。

 エンジン性能で重要なのは「混合気の過流」です。ピストンによって取り込まれた混合気が効率よく燃えるためには、燃焼室内にて過流(「スワール」)が発生することが重要ということは第1回で解説しました。しかしバルブが大きく開いた状態では、混合気量が少ない場合、過流は必然的に発生しにくくなります。つまり「燃焼効率が下がって、走行フィーリングや燃費に大きく影響するトルクが下がってしまう」という致命的なデメリットが生じます。

 さらに「フリクションロス」という観点だと、ハイカムはノーマルのカム山よりも回転する際に必要な抵抗が大きくなります。カムシャフトでバルブスプリングという非常に大きな抵抗を押し縮めることでようやくバルブの開閉ができます。カムリフトが大きくなれば、それだけバルブスプリングを押し縮める量が増える、つまり、その分さらに抵抗が増えるということになります。

 レースの世界のように、とにかく高回転を重視する場合、ハイカムによって増えてしまう抵抗を超えるほどのパワーアップ(高回転領域のみ)を多用するので問題ありませんが、街中を走行させる場合は逆に性能が落ちて逆効果となってしまうのです。

 逆の考え方をすると、カムリフトが小さいカムであれば低・中回転領域はとても効率が良いといえるのですが、高回転領域での充填(じゅうてん)効率が悪くなってしまいます。長年この2つのジレンマをうまくやり繰りしながら、カムリフト量を決定していたのです。それを解決する技術が、後の回であらためて解説予定の「可変バルブリフト機構」です。

2種類のレイアウト

 最近はDOHC(ダブルオーバーヘッドカム)が採用されている車が増えてきていますが、依然としてSOHC(シングルオーバーヘッドカム)も存在しています。

 「DOHCエンジンの方が高性能、高効率」

 といったイメージがありますが、本当にDOHCの方がSOHCよりも優れているのであれば、全ての車で採用されていてもおかしくありませんよね? そうではない、ということは、DOHCとSOCHそれぞれにメリットとデメリットがあるといえます。

 まずはDOHCとSOHCの意味から説明しましょう。「ダブル(D)」「シングル(S)」という数字を意味する名称が付いていますが、この数字は「シリンダヘッドに対するカムシャフトの本数」を意味します。例えば、V型エンジン(シリンダヘッドが2つ)のDOHCなら、カムシャフトが計4本となります。

 DOHCの場合はインテークバルブ用のカムシャフトとエキゾーストバルブ用のカムシャフトとで2本となり、一般的に各シリンダに対して2個ずつのカムが付いています。つまり、インテーク側2個とエキゾースト側2個の計4個のバルブが各シリンダに設けられます(写真3)。

DOHCのレイアウト 写真3 DOHCのレイアウト:バルブスプリングを付けたバルブが横方向に並んでいる。インテークバルブのライン(桃色枠)、エキゾーストバルブのライン(黄色枠)にそってカムシャフトを配置する。それぞれのバルブはカムシャフトのカム山で押される

 SOHCの場合は1本のカムシャフトでインテークバルブとエキゾーストバルブとを開閉する構造になり、一般的にシリンダヘッドの中心付近にカムシャフトをレイアウトします。中心に位置するカムシャフトが、その左右対称にレイアウトされたバルブを駆動するために、ロッカーアームと呼ばれる部品で動力伝達を行っています(図2)。

SOHCのレイアウト 図2 SOHCのレイアウト:バルブがロッカーアームにぶらさがっている。その真下でピストン(図中下の円筒部)が待ち構える。インテークバルブが2本、エキゾーストバルブが2本

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