AUTOSAR対応ツールの最新事情(2/2 ページ)

» 2008年09月01日 00時00分 公開
[本誌編集部 取材班,Automotive Electronics]
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新規ツールを開発

 ドイツdSPACE社は、車載ソフトウエアのモデルベース開発とコード生成を行う「TargetLink」や、評価用ツールであるHILS(Hardware in the Loop Simulation)システムでも有力なツールベンダである。


dSPACEJapanの三浦健伸氏 dSPACEJapanの三浦健伸氏 

 AUTOSARという新しい標準規格の誕生に合わせて、同社は従来よりも上流側の設計プロセスをカバーする新ツールとして「SystemDesk」を開発し、2007年9月から発売している。日本法人dSPACE Japan技術部マネージャーの三浦健伸氏は「当社が関わりの深い航空機業界におけるシステム工学に沿ったソフトウエア開発に比べて、自動車業界ではソフトウエアがハードウエアの付録のようなものにとどまっている。System Deskの投入は、AUTOSAR対応だけでなく、モデルベース開発のさらに上流の設計段階からの車載ソフトウエア開発を支援したいという思いもある」と語る。

図5 ショックアブソーバ制御システムにおけるAUTOSAR対応ソフトウエアの構造(提供:dSPACEJapan) 図5 ショックアブソーバ制御システムにおけるAUTOSAR対応ソフトウエアの構造(提供:dSPACEJapan) 連続制御ダンパ、距離センサー、加速度センサーなどとECUをFlexRay、CAN、LINでつなげるシステム。SWCが2個のECUに分配されているが、RTEによりハードウエアやバスに関係なく通信ができる。

 TargetLinkでは、コード生成時におけるAUTOSAR対応とXML記述による仕様生成が行えるので、同社のツールを利用すればシステム設計からECU内で使用するSWC生成までをカバーできるようになっている。さらに、AUTOSAR対応のBSWを展開するフィンランドElektrobit社と提携することにより、AUTOSAR対応のソフトウエア開発プロセスをすべてカバーしている。

 SysytemDeskは、2008年夏にAUTOSARリリース2.1に対応したver1.1を発売し、2008年末にはリリース3.0対応のver2.0の開発が完了する。ver 2.0では、ツール上で設計したシステムの動作をシミュレーションできる機能なども追加する予定だ。採用実績では、Target Linkが、Audi社のショックアブソーバ制御システムやDaimler社のインテリア関連ECUなどのAUTOSARソフトウエア開発に、System Deskは、イタリアMagneti Marelli社のエンジン制御ECUの既存ソフトウエアをAUTOSAR対応ソフトウエアに移行するプロジェクトに利用されている(図5)。

プロトタイピング環境を提供

 Bosch社のグループ会社であるドイツETAS社は、モデルベース開発とコード生成を行う「ASCET」、ラピッドプロトタイピング環境「INTECRIO」や各種HILSシステムなどを展開している。

 ETAS社は、AUTOSAR対応に向けて新製品を投入するのではなく、既存の製品ラインアップの機能を拡張することとした。日本法人イータスでアジア・太平洋地域マーケティング部テクニカルエキスパートを務める濱田悦子氏は「これにより、ソフトウエア開発を従来と同様に行う場合にも、AUTOSAR対応で新規開発を行う場合にも、従来のソフトウエアをAUTOSAR対応に移行する場合にも、すべての局面で利用することができるようになる」と語る。2008年秋に発売する「ASCET V6.0」は、AUTOSARリリース2.1に対応したSWCのコード生成とXML記述による仕様生成が可能になる。AUTOSARとASCETの仕様が類似していることから、既存の車載ソフトウエアのAUTOSARインターフェース作成にも対応できるという。

 現在注力しているのが、INTECRIOを使って、ASCETモデル、米The MathWorks社のMATLAB/Simulinkモデル、AUTOSAR対応ではないCコードプログラム、SWCなどを混在させた状態で評価ができる、パソコンベースのバーチャルプロトタイピング環境の提案である。「INTECRIO V3.0」から、SWCやRTEの生成などAUTOSAR対応の機能が組み込まれている。また、INTECRIOでの評価に必要な組み込みOSとしては、多くの採用実績を持つ「RTA- OSEK」がリリース2.1に対応している。

 Bosch社では、2007年中期からETAS社のOSとRTEを採用しており、BMW社はボディ電子ECUのAUTOSAR対応にASCETを採用している。

全方位外交と国産OS開発

サイバネットシステムの天野祐治氏 サイバネットシステムの天野祐治氏 

 車載制御ソフトウエアのモデルベース開発ツールで事実上のデファクトとなっているMATLAB/SimulinkのAUTOSAR対応はどのようになっているのだろうか。

 国内販売代理店サイバネットシステムで応用システム第1事業部マーケティング室シニアプロジェクトマネージャを務める天野祐治氏は「モデルベース開発に注目が集まるのは、ソフトウエアアーキテクチャの取り扱いに最適だからだ。AUTOSARでは、ECU単体ではなく、ECUネットワーク全体を考慮する必要があるため、Vector社、dSPACE社、スウェーデンTelelogic社などのシステム設計を行うアーキテクチャツールとのインターフェースを取らなければならない」と語る。

 2008年3月発表の最新バージョン「R2008a」では、AUTOSAR対応の組み込みコードとXML仕様書生成に対応した。また、Volkswagen社がボディ電子ECU用ソフトウエアのAUTOSAR対応にMATLAB/Simulinkを採用している。

 現在、車載ソフトウエア開発の分野では、欧米のツールベンダが主導権を握っているものの、国内でも技術力を持った企業が育ちつつある。

ヴィッツの服部博行氏 ヴィッツの服部博行氏 

 名古屋市内に本拠を置くヴィッツは、2004年に名古屋大学教授の高田広章氏と共同してOSEK/VDXに準拠するオープンソースの「TOPPERS/OSEKカーネル」を開発して以降、車載ソフトウエア開発に関する需要が拡大している。同社組込みソフトウエア開発部部長で取締役の服部博行氏は「現時点では、TOPPERS/OSEKカーネルをベースに、AUTOSARリリース2.0に対応したOSを提供できる状態。ただし、AUTOSAR対応OSには、スケーラビリティクラス(SC)というものが設定されており、OSEK/VDXにはないスケジュールテーブルやメモリー保護を必要とされるSCが存在する。数年前の経済産業省の地域プロジェクトで、ルネサス テクノロジのマイコンを使ってメモリー保護機能の開発を行ったことがあるので、SCへの対応も十分可能だ」と語る。現在は、JasParでの活動に参加しながら国内自動車メーカーやTier1サプライヤのAUTOSAR対応に関する方向性を見守りつつ「リリース3.0対応のOSを一般公開するタイミングを探りたい」(服部氏)という。

300以上のインターフェースを標準化

AUTOSARスポークスパーソンを務めるドイツRobertBosch社オートモーティブシステムインテグレーション部門部長のJurgenMossinger氏 AUTOSARスポークスパーソンを務めるドイツRobertBosch社オートモーティブシステムインテグレーション部門部長のJurgenMossinger氏 

 AUTOSAR設立時と比べても、自動車の電子化は加速しているが、その電子システムを制御するソフトウエアの重要性も高まっている。自動車1台に占めるソフトウエアのコスト比率は、2000年の4.5%から2010年には13%になるという試算もある。このような環境下では、AUTOSARの求める再利用可能で互換性を持ったソフトウエア構造の標準化が必要不可欠だ。

 AUTOSARでは、自動車メーカー間の非競争領域として、ソフトウエアアーキテクチャの再構成と、各階層、モジュール間でのインターフェース仕様策定のみを行っている。モジュールとなる中身は各社で開発することになるが、ツールベンダの積極的な活動参加もあって、すにでBSWなどの提供が開始されている。

 2008年2月に発表した最新仕様のリリース3.0では、300以上のインターフェースの標準化を行った。インターフェースを標準化するといっても、参加メンバー間で合意されたものだけを標準化するので、すべてを網羅するわけではないが、まだ標準を策定中のインターフェースも多数あるので、リリース4.0で追加されるだろう。

 2008年中ほどに発表するリリース3.1では、ECUの診断システム「OBD(On Board Diagnosis)II」に対応する。そして2009年末発表予定のリリース4.0では、エラー処理、機能安全、ライブラリ、コンフォーマンステスト、マルチコア対応などを追加する。日本の標準化組織である「JasPar」とも協調関係を深めており、リリース4.0ではJasParからの提案について検討して行くことになるだろう。(Mossinger氏/談)


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