センシング技術の応用で新提案、発売間近の電気自動車にも注目人とくるまのテクノロジー展 2008(2/2 ページ)

» 2008年09月01日 00時00分 公開
[本誌編集部 取材班,Automotive Electronics]
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電気自動車は市場投入間近

 急激なガソリン高騰により、電気自動車やプラグインハイブリッド車の早期市場投入に対する期待が高まっている。


図15 三菱自動車のiMiEV 図15 三菱自動車のiMiEV 2009年夏から国内市場に投入される見通し。リチウムイオン電池を使った市販量産の電気自動車としては世界初となる。
図16 明電舎のiMiEV用インバータ 図16 明電舎のiMiEV用インバータ アルミ鋳物で密封しているa水冷式で交流出力は最大330Arms。 
図17 ニチコンのiMiEV用車載充電器 図17 ニチコンのiMiEV用車載充電器 入力電圧は100〜265Vで、国内外の家庭用電源に対応できる。
図18 富士重工業のR1e 図18 富士重工業のR1e 市販量産車はR1eのシステムを移植したプラグインステラがベースとなる。 
図19 富士重工業の次世代電気自動車用モーター 図19 富士重工業の次世代電気自動車用モーター 最大トルクは200Nm、最高回転数は1万rpm。TOPとの共同開発。
図20 富士重工業の次世代電気自動車用インバータ 図20 富士重工業の次世代電気自動車用インバータ 最大出力は100kW。ニチコンとの共同開発。
図21 トヨタのトヨタプラグインHV 図21 トヨタのトヨタプラグインHV トヨタは2010年中にリチウムイオン電池を搭載したプラグインハイブリッド車を市場投入する。
図22 豊田自動織機のプラグインHVチャージャー 図22 豊田自動織機のプラグインHVチャージャー 充電だけでなく、非常時の家庭への電源供給もできる。

 三菱自動車は、2009年から市場投入する電気自動車「i MiEV」を展示した(図15)。新型バッテリーの採用により満充電時の航続距離は160kmにまで向上している。モーター、インバータ、車載充電器などの主要部品も、サプライヤの明電舎とニチコンブースに展示されていた(図1617)。

 富士重工業は、実証走行を続けている「R1e」を展示するとともに、次世代電気自動車用のモーターとインバータも展示した(図181920)。R1eのモーターの最大出力で40kWだが、次世代用では65kWとなる。インバータは、直接水冷でパワー半導体を冷却することにより小型・高効率になるという。

トヨタ自動車は、公道走行実験を行っている「トヨタプラグインHV」を展示した(図21)。i MiEV、R1eは、家庭用と急速充電用のコネクタが車両の両側面にあるが、トヨタプラグインHVは、車両左側面に家庭用電源からのコネクタがあり、右側には従来通りガソリン注入口がある。また、豊田自動織機ブースではトヨタプラグインHVが採用している車載充電器を展示していた(図22)。


図23 三菱ふそうの新シリーズ式ハイブリッドの展示 図23 三菱ふそうの新シリーズ式ハイブリッドの展示 中央のディーゼルエンジンは発電専用となる。インバータはドイツSiemens社製。
図24 東芝のハイブリッド車用システムのトータル展示 図24 東芝のハイブリッド車用システムのトータル展示 SCiBを発表したことで電動駆動システムのトータル提案が可能になった。
図25 日立の2モードハイブリッド用インバータ 図25 日立の2モードハイブリッド用インバータ ChevloletTahoe2モードハイブリッドに採用された。

 三菱ふそうは、2007年9月に発売したハイブリッドバス「エアロスターエコハイブリッド」の新シリーズ方式ハイブリッドシステムを展示した(図23)。従来モデルと比べて、エンジン駆動だったエアコンもモーター駆動として完全モーター駆動を実現し、バッテリも日立製のリチウムイオン電池に変更するなどして燃費を向上。2016年度の燃費基準4.23km/リットルを上回る5.0km/リットルを達成した。

 東芝は、ハイブリッド車に必要となるモーター、インバータ、バッテリをトータルで提案できることを示す展示を行った(図24)。モーターとインバータは、すでに日野自動車のバスなどへの採用実績があるが、今後は70kW以上の高出力モーターや、専用に開発したパワー半導体を使っての放熱設計の最適化により、12Vバッテリサイズにまで小型化するなど、今後の開発の方向性を示した。また、従来はカバーできなかったバッテリについては、産業用で販売を開始したリチウムイオン電池「SCiB」の車載用を開発している。

 日立は、米GM社が採用している2モードハイブリッドシステム向けのインバータユニットを展示した(図25)。2モードハイブリッドは、変速機内の2つのモーターで走行や電力回生などを行っているが、日立のインバータは1ユニットで2つのモーターを個別に制御できるようにしている。


図26 パナソニックエレクトロニックデバイスの電源バックアップユニット 図26 パナソニックエレクトロニックデバイスの電源バックアップユニット エネルギ密度は低いものの急速充放電が可能な電機二重層キャパシタを用いている。

 パナソニックエレクトロニックデバイスは、ハイブリッド車のブレーキなどの補助電源に用られている電気二重層キャパシタを使用した「電源バックアップユニット」の第4世代品を展示した(図26)。この開発中の第4世代品では現行の第3世代品に比べて約40%の軽量化を実現できるという。


図27 横浜国立大学の電気自動車FPEV2-Kanon 図27 横浜国立大学の電気自動車FPEV2-Kanon 各後輪にインホイールモーターを搭載しており、最大トルクは680Nmに達する。

 dSPACE Japanは、同社が研究開発に協力している横浜国立大学藤本博志研究室の「FPEV2-Kanon」を展示した(図27)。後輪に東洋電機製造のインホイールモーターを採用し、ステアリングもバイワイヤー化している。現在、試験車が完成し性能評価を行っている段階だが、将来的には前輪にもインホイールモーターを採用するなどさらなる進化も計画されている。dSPACEは、制御用コントローラとして「AUTOBOX」を提供している。


図28 イータスのFlexRayバギーカー 図28 イータスのFlexRayバギーカー 運転操作に対応してFlexRayで接続したバギーカーが動作する。
図29 アンシンテクノのモーレツワイパー 図29 アンシンテクノのモーレツワイパー ふき取り範囲を半減して、1分間あたりのふき取り回数を倍増。どんな「猛烈な」雨でも前方視認ができるようになるという。

 イータスは、次世代車載ネットワーク「FlexRay」のデモンストレーションとして、ミニバギーカーと同社製品群を利用しての実演展示を行った(図28)。ドライバのステアリング、アクセル/ブレーキ操作に合わせて、走行アニメーションを表示するとともに、ミニバギーも動作する。

 モーターで動く自動車部品の代表といえるワイパーだが、アンシンテクノは、フロントガラス用ワイパーに、従来の高速モードの倍速となる300回/分で動作する「モーレツモード」を、低コストで追加できる新機構を開発した(図29)。その“モーレツ”な名前のインパクトもあり、注目展示として人気を集めていた。


植物由来の材料

図30 三菱自動車のPTT繊維フロアマット 図30 三菱自動車のPTT繊維フロアマット 三菱自動車が発表する植物由来樹脂技術としては第3弾となる。

 三菱自動車は、植物由来プラスチックの応用製品として「PTT繊維フロアマット」を展示した(図30)。PTTは、とうもろこしなどから製造できる1,3-プロパンジオールとテレフタル酸を重合して製造するプラスチック。2008年秋発売の軽自動車に採用する予定。


図31 マツダのバイオプラスチックを使った内装部品 図31 マツダのバイオプラスチックを使った内装部品 とうもろこしなどの食糧を発酵させて得られるポリ乳酸を使用している。
図32 日産自動車の高性能植物 図32 日産自動車の高性能植物 従来の小麦(左)と高性能植物の小麦。それぞれ4株づつ植えている。

 マツダは、射出成形による製造、耐熱性、強度など植物由来プラスチックの課題をクリアしたバイオプラスチックで製造した内装部品や、植物由来原料100%の繊維からなるバイオファブリックなどを展示した(図31)。2008年度中にリース販売を開始する水素ロータリーエンジンのハイブリッド車「プレマシーハイドロジェンREハイブリッド」の内装部品に採用する予定だ。

 日産自動車は、バイオ燃料の原料となる穀物の収穫量を飛躍的に増加させることのできる「高性能植物」に関する研究成果を展示した(図32)。植物が行う光合成では、太陽光が強い高負荷状態の時には太陽エネルギーの1割程度しか利用しておらず、残りの9割は活性酸素を作り出して、この活性酸素が光合成を阻害して成長を抑制してしまう。開発中の高性能植物は、高負荷時の活性酸素を無害化する酵素を多く生成することで、光合成の効率を高めて、植物の成長を促進する。


図33 豊田自動織機の樹脂製パノラミックルーフ 図33 豊田自動織機の樹脂製パノラミックルーフ 比重がガラスの約2分の1となる透明樹脂のポリカーボネートを使用している
図34 童夢カーボンマジックの炭素繊維強化プラスチックの軽量化展示 図34 童夢カーボンマジックの炭素繊維強化プラスチックの軽量化展示 黒色のパーツが炭素繊維強化プラスチックで代替されている。

 豊田自動織機は、透明なプラスチックであるポリカーボネートで製造したサンルーフを展示した(図33)。従来のガラス製の場合20kgのところを11kgにまで軽量化した。1.54m2と他社の現行量産品よりも広い面積を持ち、周辺部品との2色成形による生産性向上も可能としている。

 童夢カーボンマジックは、ホンダ「シビック」を使って、各パーツを鉄製から炭素繊維強化プラスチックに代替した場合の軽量化できる重量を示した(図34)。ボンネット、フロントバンパー、リアスポイラ、トランクリッド、ルーフパネルなどに炭素繊維強化プラスチックを採用することで、総計約23kgの軽量化を実現している。

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