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» 2008年09月29日 00時00分 公開

Excelで学ぶ実験計画法の基礎(1):品質管理と実験計画法の基本を押さえよう (3/4)

[菅民郎・福島隆司/株式会社エスミ,@IT MONOist]

データの収集方法

 実験計画法のデータの収集方法には、フィッシャーの3原則と呼ばれる順守すべきルールがあります。ちなみにフィッシャーは実験計画法の創始者です。フィッシャーの3原則とは次の3つで、おのおのの原則をベースにデータ収集方法を解説します。

  • I. 反復の原則
  • II. 無作為化の原則
  • III. 局所管理の原則

I.反復の原則

 「データは同じ水準で繰り返し測定せよ」といった原則です。水準とは条件のことです。例えば、新型と旧型の工作機械の製品強度の優劣を知りたい場合、おのおのの機械で製造した製品の強度を測定します。この場合の、要因は工作機械、水準は新型と旧型、特性値は強度です。

 ここでおのおのの機械で1個ずつの製品を製造して、その強度を測定したとしましょう。その値に違いがあったとして、新型と旧型の製品の強度に違いがあるといえるでしょうか。先に述べたとおりデータはバラツキます。測定した製品の強度が、その工作機械で製造したすべての製品の強度であるとはいえません。

 このような場面で、統計は工作機械で製造した製品(製造を無限回行ったと仮定)の平均値で真の強度を定義します。この値は母平均と呼ばれます。実際に測定したデータの平均値は標本平均と呼ばれ、母平均の推定値となります。ところで、1個のデータでは平均値が計算できないので(データ=平均値なので計算できないことはないが)、誤差の大きさが計算できません。誤差の大きさを計算できないということは、統計的方法を用いて母集団を推測することができないことを意味します。

 よって、「データは同じ水準で繰り返し測定」する必要があるのです。この場合であれば、おのおのの工作機械で製造した製品の強度の平均値で優劣を議論するのが正しい方法となります。

II.無作為化の原則

 品質管理の分野で頻繁に利用されている無作為化の方法が抜き取り検査です。このほかの代表的な無作為化の方法として、無作為抽出や無作為化割付といった方法があります。方法の違いは分野や測定対象の特性の違いに由来するものですが、共通点はすべてランダム(デタラメ)に測定の対象や測定の順番を決めるということです。

 例えば、あるラインに流れる製品で抜き取り検査を実施したい場合、5分置きに実施するのではなく、1分、6分、8分、12分、13分とデタラメな間隔の時間で抜き取り検査を実施します。また、箱に詰められた製品であれば、デタラメに製品を抽出して検査を実施します。

 無作為が必要な理由は、交絡の防止です。交絡とは、2つ以上の要因の影響が交じり合って分離できない状態をいいます。例えば、先ほどの例で、新型は午前中に、旧型は午後に測定が実施されていたとしましょう。強度の違いは、工作機械の違いが原因なのか、製造した時間が原因なのか、特定できません。この製造した時間のような原因の影響は、完全に除去することができませんが、無作為化を行うことによって、統計的に偶然誤差として処理することが可能になります。

III.局所管理の原則

 実験の精度を高めるため、実験の場を層別して管理することを局所管理といいます。例えば、ある3種類(A〜C)の製品の違いが、品質に影響しているかを知りたいとき、5人の技術者がそれぞれ3種類の製品を製造したとします(要因:製品、水準:A〜C、特性値:品質特性)。このときおのおのの製品について5個のデータが記録されますが、品質には技術者の違いも影響しているはずです。

 このような場合に、技術者(No.1〜5)を要因として取り込むと統計的に分析の精度を高めることが可能になります(要因1:製品・水準:A〜C、要因2:技術者・水準:No.1〜5、特性値:品質特性)。局所管理の層別因子として取り込む要因としては、この例のような人のほかに、日、機械、場所などがあります。

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