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» 2008年09月30日 00時00分 公開

会社のムダを根こそぎ撲滅! TOCスループット(1):“もうけること”を知るのがスループットの第一歩 (3/3)

[村上 悟/ゴール・システム・コンサルティング,@IT MONOist]
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もうけるための3つの指標

 今後の検討を加えていくうえで必要になりますので、3つの指標を詳しく見ていきましょう。

スループット(Throughput)

 スループットは、生産ではなく顧客に販売され、企業に入ってきたお金を意味します。要するに販売を通じてシステムがお金を生み出す割合なのです。顧客に販売された時点で考えるという理由は、製品は顧客に販売されるまで企業に対し収入をもたらさないからなのです。

 従来の会計では在庫を資産と考えますが、製品は販売されるまでは価値を持っていません。従ってTOCでは、在庫は「将来それを売って資金を回収するべき投資」と考えるのです。価値の発生はあくまで生産時点ではなく販売時点なのです。価値の発生を生産時点でとらえるのは、売り手市場から買い手市場へという現実のビジネス環境の変化を反映したものです。

 もしもスループットを販売時点ではなく、製品が製造され工場から出荷された時点に変更したらどうなるでしょうか。当然工場では出荷された製品が販売されようが、倉庫に積まれようが関係なくなります。企業は、製品在庫に組み入れるために製品を生産しているわけではなく、製品は販売されるために生産されるのです。従って製造活動の評価を行うに当たっても、生産時点ではなく、販売時点で測定する必要があるのです。

 スループットは、製品1個当たりや、特定の期間内に生み出されたスループットの合計金額で表されます。企業がお金を投資して得た資源(原材料や部品)を利用して、最終製品に変換するという活動を、本質的に「変換プロセス」であると考えます。従って、製品の1個当たりのスループットは、1個当たりの売り上げから、1個当たりの購入原材料費を差し引いたものになります。

T = 1個当たりのスループット(Throughput)=
   1個当たりの売り上げ(Sales)−1個当たりの購入原材料費(Inventory)

在庫と投資(Inventory、Investment)

 TOCでの在庫の定義も、いくつかの点で通常の在庫の定義と異なります。第一に、ここでの在庫の定義では、原材料が工程を進んでも、価値を付加しません。従来の在庫の概念では、原材料の処理が進み加工されていくにつれ、付加価値が増加すると考えます(原価の擬着性)。しかし、TOCでは、この部品の在庫価値は、生産の工程のどこにあっても購入価格のままです。TOCでは付加価値の考え方とは逆に、工程が進むにつれ原材料は自由度を失い(別の製品への転用ができなくなり)、実際にはその利用価値を減少させてしまうと考えるのです。

I = 原材料、購入部品、仕掛品、製品在庫に含まれている材料の購入費(システムが販売しようとしているモノへの投資額)

業務費用(Operating Expense)

 システムが在庫をスループットに変換するために消費したすべてのお金です。TOCでの経費も財務会計における経費とは異なり、経費の中に、直接労務費も間接労務費も含みます。なぜならば、現代の経営では直接現場作業を行うオペレータも間接部門のスタッフも固定給で雇用されています。従って、人件費は大半が固定費としてとらえた方が実態に即しているのです。またTOCの経費は、実際に支出された費用だけです。従って減価償却費などのような要素は含まず、実際に社外に流出したお金を計算します。

 スループットの考え方を理解するうえで大変重要なのは「時間」の概念です。時間とはすべての人間や組織にとって等しく、かつ有限なものです。同じ1万円の利益を生み出すにも、1時間で生み出すことが可能なのか、24時間を必要とするのかを正しく認識し、会社に滞留するキャッシュ(お金や在庫)の最小化を実現しなくてはならないのです。このような考え方を用いることで、従来とは異なった意思決定が可能となるのです。

 例えば、ボトルネック工程を通過するスピードが製品ごとに異なる場合には、ネックを速やかに通過できる製品を優先した方が、トータルで得られるお金は大きくなります。つまり、スループットの考え方は個々の製品の原価を最小化するアプローチではなく、全体での利益をマネジメントすることによって、企業の最終利益を最大化しようという方法論なのです。

 TOCのスループットの考え方は、まさに江戸の昔からいわれている商売の基本「入るを量りて出ずるを制す」(注1)や「利は元にあり」(注2)の考え方と基本は同じであり、企業がキャッシュを生み出す基本原理(注3)なのです。こうして考えてみると、企業のムダとは「利益(スループット)につながらないことと考えればすっきりしますね。


注1:入るを量りて出ずるを制す 収入の額を計算して、その中で支出を考えなさいという教え、至極常識です。

注2:利は元にあり 利益は、売り値と仕入れ値の差で、同じ売り上げなら、仕入れ額の少ない方が利益は多い、また安く仕入れて安く売れば、回転が上がり、結果として利が多くなるというこれまた当たり前の教えです。

注3:企業がキャッシュを生み出す基本原理 TOCのスループットは「入るを量りて出ずるを制す」や「利は元にあり」の教えに「時間の概念」を取り入れています。要するに一定期間内にキャッシュを稼ぎ出すレートという意味合いなのですが、分かりづらいので「科学的どんぶり勘定」と説明することにしています。


 次回は、この考え方を使って工場に潜むムダについて具体的に考えていきましょう。

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