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» 2008年10月27日 00時00分 公開

会社のムダを根こそぎ撲滅! TOCスループット(3):スループット計算書を作れば何がムダか一目瞭然 (2/3)

[村上 悟/ゴール・システム・コンサルティング,@IT MONOist]

値引きはどう利益に影響するか

 この売り上げを上げようとするムダが収益にどう影響するか見ていきましょう。納入数量を水増ししたり、売り上げに対して一定率をキックバックするリベートは、要するに値引きです。極端に月末症候群にむしばまれている会社では、月中の出荷量の50%程度が月末の数日間に出荷されます。目標売り上げを達成するために、この50%の月末出荷分を平均10%の値引きで受注した場合、どう収益が変化するか見てみましょう(表2)。

 売上高は(1万円×5000個:変化なし分)+(9000円×5000個:値引き分)=9500万円、1個当たりの資材費は変わりませんから、値引きして売り上げが下がった分ですべての利益が吹き飛んでしまいました。

表2 A社のスループット利益計算書(10%の値引き販売) 表2 A社のスループット利益計算書(10%の値引き販売)

 実はA社のスループット構造では、数量は8750個(12.5%)まで減少しても何とかなります(利益ゼロ)が、平均単価はたった5%(500円)下がっただけで利益が吹き飛びます。

 「ちょっと」で10%、「もう一声」で20%というのが営業値引きの常識ですが、値引きは入ってくるお金がそのままマイナスするわけですから、値引きは利益の分配とイコールだと覚えておいてください。

外注するとどうなるか

表3 内製と外注加工費の比較 表3 内製と外注加工費の比較

 さらに月末に納期が集中することで、工場内で作り切れなくなった1000個を外注に出したらどうなるでしょうか。表3を見ると外注加工単価は3000円で、一見すると社内で作るより5%余計に利益が出るように見えますが、この判断は正しいのでしょうか。

 実際に表4のスループット計算書で全体の損益を計算してみると、月末の押し込み値引きと分と合わせて、300万円も赤字が出ています、どうしてこうなるのでしょうか。インとアウトの差額で考えるスループットで見ればすぐに分かります。

表4 A社のスループット利益計算書(10%の値引き販売+外注) 表4 A社のスループット利益計算書(10%の値引き販売+外注)

 値引きで実際の売上高は5%ダウンしましたが、出てゆくお金は、原材料費も固定費も変わっていないので実際の支出が減るわけではありません。さらにその上に能力が足りない月末に外注費として300万円支出した分がそのまま赤字になったのです。これではいけませんね。

見込み生産のムダ

 生産管理では、実需に合わせて納期どおりに作ろうとするから外注を使うことになるのだ、と考えて月初から見込み生産も活用し平準化して投入すればよいと考えました。果たしてこれで問題は解決するのでしょうか。

 何千品種もある製品ラインアップから今月売れるものを、ピタリと当てることはほとんど不可能です。見込みは外れるものであるという「真理」があります。でも、300万円も外注に出すよりはよいだろうと、外れ率を3%と割り切って考えてみると損益はどう動くでしょうか(表5)。

表5 A社のスループット利益計算書(10%の値引き販売+見込み生産) 表5 A社のスループット利益計算書(10%の値引き販売+見込み生産)

 確かに外注費用300万円はなくなりますが、代わって売れないことを覚悟で仕入れた原材料費180万円が新たに発生し、これでもまだ180万の赤字が出ます。

 もし、この見込み外れの3%がそのまま売れてくれたらどうなるでしょうか、インとアウトの差額で考えると、300個の売上高がそっくりそのまま収益に貢献します。

  ▲180万円+300万=120万

 このように何とか黒字にできることが分かります。だったら、需要予測の精度を上げる努力をすればいいじゃないかと思われるかもしれませんが、事はそんなに簡単ではありません。現在多くの会社で行われている「見込み生産」とはまさにこの考え方にほかなりませんが、果たして皆さんの会社ではデッドストックは発生していないのでしょうか。

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