Magnaのスポット溶接点削減大作戦メカ設計 イベントレポート(7)(3/3 ページ)

» 2009年01月26日 00時00分 公開
[小林由美,@IT MONOist]
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固有振動数に関する最適化

 次は固有振動数の最適化をした事例である。こちらは従来のプロセスとCAEを組み合わせたプロセスと比較した。スポット溶接点数は基準デザインと変えず、1次と2次の固有振動数をできるだけ上げる設計変数を設定した。

 その結果、先述の剛性や耐久性能の最適化結果とは異なるスポット溶接接合パターンが得られた。この繰り返し計算回数は、49回だった(図13)。

図13 梁モデルによるスポット溶接点の最適化検証(固有振動数の最適化:接合パターン)

(マグナ・インターナショナル・ジャパン  プレゼンテーション資料より)

 基準デザインに対し、1次モードと2次モードの固有振動数がどのように変化したかをグラフ化したものが図14である。

図14 梁モデルによるスポット溶接点の最適化検証(固有振動数の最適化:接合パターン)

(マグナ・インターナショナル・ジャパン  プレゼンテーション資料より)

 最適化の結果、1次モードと2次モードの固有振動数はそれぞれ上昇し、スポット溶接点の密度を2倍にした場合とほぼ同等になるということが分かった。

 以上の検証の結果をもって、構造最適化設計と疲労寿命予測との合わせ技によるスポット溶接点の最適化プロセスは、剛性・耐久性能・固有振動数、この3つのパラメータにより適用可能であると判断した。

車体モデルに、検証した解析手段を適用する

 次に紹介するのは、先述で検証してきた解析を車体モデルに適用した事例である。「車体リア(後)側を拘束しフロント(前)側にねじり荷重を入力することで、ねじり剛性を計算する」という条件で、スポット溶接の最適化を行った。目標は「スポット溶接点数を基準デザインの30%まで削減する」とした。

 図15の赤色の点は残されたスポット溶接点であり、水色の点は削減された点である。

図15 車体モデルへの適用事例(ねじり剛性)(マグナ・インターナショナル・ジャパン  プレゼンテーション資料より):左がリア、右がフロント。リアとフロントで点の分布が異なる

 リアハッチ開口ヒンジ部の周辺、つまり拘束した点の周囲では多くのスポット溶接点が残されている。

 図16のグラフは縦軸が基準デザインと比較した相対剛性、横軸がスポット溶接削減率である。

図16 スポット溶接点の削減数推移(マグナ・インターナショナル・ジャパン  プレゼンテーション資料より)

 図16の上側の線が構造最適化によりスポット溶接点数を30%削減した場合の推移である。下側の線は、均一に手動で削減したものである。

 「このように手動で削減する場合、どこを削減するか? どうしたらいいか? と、なかなか方針が決まらないものです。方針決定、モデル修正時間というものを考えると、非常にたくさんの時間が必要になるということになります」と加藤氏は話す。

 次は、車両のバックドアフランジのスポット溶接点をできる限り削減していく事例を紹介する。最適化計算のための準備として、図17のようにスポット溶接点数を事前に多めに追加しておく。もともと119点あったスポット溶接点数を195点(約2倍)に増やした。

図17 バックドアフランジのスポット溶接点最適化事例(スポット溶接接合パターン)

(マグナ・インターナショナル・ジャパン  プレゼンテーション資料より)

 そして195点に増やしたスポット溶接点数の60%以下に減らすことを目標とした。また、疲労損傷度は均一化させるとした。

 図18は、最適化後のスポット溶接点の接合パターンである。

図18 バックドアフランジのスポット溶接点最適化事例(最適化結果)(マグナ・インターナショナル・ジャパン  プレゼンテーション資料より)

 スポット溶接点数は108点となり、もともとのオリジナルデザインのスポット溶接点数より少なくすることができ、目標を達成した。

 また、図18のグラフはスポット溶接点における、疲労損傷度の値を昇順に並べたものである。最適化前(紫色)を見ると、この高低差が非常に大きいことが分かる。すなわち不要なスポット溶接点が多いということになる。最適化後(紺色の線)より高低差が減り、疲労損傷度が均一化されているということが分かる。

解析プロセスのさらなる改善

 今回紹介した解析プロセスでは、スポット溶接点の位置調整など局所的な最適化が困難で、今後もその改善に取り組みたいという。また、異なる評価基準を同時に最適化する手法を確立したいという。静的・動的な挙動を複合した最適化も現在、検証中だとのことだ。

 「一番重要になるところだと思いますが、生産要件を考慮したスポット溶接点の最適化をできるようにしていきたいです」と加藤氏は話した。

 本事例のようなCAEに限らず、CADでもPDMでも、従来のシステムが多少使いづらくても、操作に慣れたシステムを甘んじて使い続けてしまう。もっと便利なシステムを検討している時間も惜しいと感じてしまうものだ。しかしシステム導入の評価もまた設計の一部であると考えたほうがいいのではないだろうか。

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