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» 2009年01月27日 00時00分 公開

マイケル・ポーター教授が日本ものづくりを診断!モノづくり最前線レポート(8)(2/3 ページ)

[上島康夫,@IT MONOist]

エンジニアの人材不足にどう対応するべきか

Q2:日本の製造業界では、若年人口の減少、理科離れなどで、製品開発に従事するエンジニア不足が深刻化しています。ここで日本の製造業界の取り得る戦略としては、

  • エンジニア不足を不可避として受け入れ、より上流のR&Dや構想設計に集中し、それ以外は海外企業を利用する
  • エンジニア不足を不可避として受け入れ、より高収益を狙える製品だけにラインアップを絞り込む
  • 不足するエンジニアを海外から受け入れ、従来のフルラインアップの製品開発を維持する
  • 業界再編によって企業数を減らし、エンジニア不足を解消する

などがあると思います。それぞれの戦略に対する所見、あるいはこれ以外に考えられる戦略についてお聞かせください。

ポーター氏 
アメリカも同じ問題を抱えていますので、これは興味深い質問ですね。ただアメリカは外国からエンジニアを招く体制ができていますから、日本ほど深刻な問題ではないかもしれません。世界中からアメリカの大学に留学生が来て、そのままアメリカに定住して働く人も多いですから。

 日本もスキルの高い外国人エンジニアの受け入れに、もう少し積極的になるべきでしょう。これは国家の競争戦略として非常に重要です。歴史的、文化的に、外国人の受け入れは日本にとって困難な面もあると思いますが、ものづくり企業がリーダーシップを発揮して、日本を変えていってもらいたいです。日本語はほかの言語から孤立しているので、言葉の問題が最も高い障壁になるでしょう。

 これ以外の人材不足を解決する重要な方法としては、どんどん海外に製品開発の拠点を移すことです。これについて、PTCは良い事例になるでしょう。かつてPTCのソフトウェア開発はアメリカに拠点を置いていました。しかし現在では、約60%だけがアメリカ国内で、あとはイスラエルやインド、東欧などに製品開発センターを移転させています。

 新しい製品開発ツールを使い、マネジメントをしっかり行えば、世界中に展開した開発拠点を統合して効率よく作業を進めていくことは可能なのです。そして海外拠点をうまく利用すると、人材不足解消のほかにもエンジニアに掛かる人件費を大幅に削減できます。しかし海外に開発拠点を移す際には、本社のリーダーシップを維持していく仕組みや、製品開発のどの部分を海外に出すべきかといった点について、細心の注意を払う必要はあります。

 才能のある外国人エンジニアを積極的に採用すること、そして注意深く海外展開することの2つをもってすれば、日本も人材不足には十分対応していけると思います。ただし、日本企業のトヨタやコマツ、キヤノンといった企業が行っている製品設計はとても複雑です。もっとスキルの低い人でも同じ結果が出せるようなやり方に変えていく必要はあるでしょう。

 またもう1つ重要な点として、最新の製品開発手法であるデジタルプロトタイピングや3次元CADによる設計のモジュラー化など、数年前とは比べものにならないくらい製品開発は効率化されています。設計の再利用(デザインリユース)をうまく活用できれば、現状の開発者数のままでこれまで以上の製品数を開発できるようになるでしょう。

 日本の企業は製品開発に資するテクノロジーを取り入れるスピードが、外国企業と比べてやや遅いようです。テクノロジーによって解決するよりも、人を投入して何とかしようとする傾向にあります。この点を改めるのも、人材不足への対応にとって必要でしょう。

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