連載
» 2009年02月09日 00時00分 UPDATE

マイケル・ポーター教授のものづくり競争戦略(1):ものづくり企業の犯す間違った競争戦略を正す! (2/2)

[上島康夫,@IT MONOist]
前のページへ 1|2       

正しい戦略とはユニークであること

 戦略とは、これとはまったく違います。戦略とは最高の企業になることではないのです。そうではなくて、ユニークな企業になる。これが戦略です。何かこれまでと違った価値を届けるのです。競争力とは最高のものではなく、ある重要なニーズに最適化したものを他社とは違った方法で提供することから生じるのです。

 戦略を立てるうえで最悪の失敗とは、他社と同じ商品・サービスを持って、競争のただ中に飛び込む行為です。もしある企業がアフターサービスを強化し、それを主たる武器として競争に参加したとしましょう。最悪な選択とは、あなたも同じくアフターサービスを強化して競争に臨むことです。なぜなら、こういった競争はお互いを擦り減らすばかりで、勝利するのが非常に困難になるからです。

 顧客にしてみれば、商品に本来的な選択の余地はありません。なぜなら2つの企業は同じことをしているからで、どちらを選ぶかの判断は、価格しかないのです。そうではなく、それぞれの企業が特定の顧客に向けて他社とは異なった方法で価値を提供するならば、商品はその異なった価値によって選ばれるでしょう。これが優れた戦略の核をなす基本的なフレームワークです。

 もし、顧客のすべてのニーズに合致した製品で、なおかつ最高のものを提供しようとするならば、必ず失敗します。そんな戦略では、勝てるわけがありません。皆さんが考えるべきことは、対象としている顧客に価値を提供するに当たって、どうやったら他社と違ったやり方を創造できるか、どうやったら顧客にとってユニークな利得を生み出せるか、それも特定な顧客の層に対してです。他社よりも優れたやり方でです。

戦略ではないものを戦略と混同する失敗

 企業が戦略を立てる際、共通して犯すもう一つの間違いを紹介しましょう。それは戦略と「特定の行動」を混同する間違いです。例えば「わが社の戦略はもっと国際化することである」だとか、「わが社の戦略は生産をサプライヤにアウトソースすることだ」などです。これは戦略でしょうか?

 市場における自社の位置取り、どうやったらユニークな製品を生み出せるか、競争優位は何か、そういったことを考慮しないのは戦略とはいえません。もちろん、国際化を進めるのは有意義であるに違いありません。しかしそれは戦略ではないのです。国際化などは戦略の効果を強めるツールとはなりますが、戦略そのものではないのです。戦略とはあくまでも、どうしたらユニークな存在になれるか、どうしたら競争優位を打ち立てられるかです。

 さらに別のありがちな間違いとは、戦略を目標と混同することです。例えば「わが社の戦略は、市場でナンバーワンになることだ」、あるいは「業界で最高の成長率を獲得することだ」などです。これらは願望や夢であって、戦略ではありません。戦略とは、優位性をどうやって獲得すべきかです。どうやったら目標に到達できるか考えるのが戦略です。

 多くの企業は、目標と戦略を履き違えています。だから、業界の1位になる、2位になるといった間違った戦略が生まれてしまうのです。これは深刻な失敗を招きます。なぜなら、こうした間違った戦略では、ユニークさの代わりに市場シェアの拡大が目的となってしまうからです。そして最後には、他社に対して優位性を持っていない製品を、たくさんの市場セグメントに投入することになるでしょう。日本の企業の多くがこの間違いを犯しているのですが、市場におけるユニークなポジションではなく、シェアに焦点を絞ってしまうのです。しかしシェア拡大を目指すのは、ユニークなポジションを獲得することとは似ても似つかぬことです。こうした間違った考えもよく見られますね。

 それからアメリカでよく見られる間違いとしては、戦略とビジョンを混同することです。多くの企業はディシジョンステートメントやミッションステートメントなどの声明文を発表して、「当社の目的は優れた製品で人類の発展に貢献し……」などと定義しています。こういった声明文は、社員を興奮させたり会社に所属している意義を見つけさせ、「自分たちは社会に対して役立っているんだ」という動機付けを与えるには重要です。なのでCEOたちがいろいろな声明を発表する気持ちは理解します。私自身は、この手のビジョンを表したステートメントに興味はありませんが(笑)。

 しかし、この点だけは明確にしておきましょう。ビジョンは戦略ではありません。戦略とはもっと範囲が明確で特定の目的を持つものなのです。戦略とは例えば、顧客の中でもどんな層に対して価値を提供するのか、どうやったら競争優位を最大化できるか、自分たちの競争優位はどこから生み出されるのか、という質問に答えるものです。戦略はビジョンと違って、特定の事柄を指すものなのです。一般的だったり、広範なテーマへの言及ではあり得ません。しかし多くの企業で、ビジョンを語った声明文を戦略と取り違えた末、競争優位を見失ってしまいます。

 そういったわけですから、戦略に対して正しい考え方を理解するのは、非常に重要な第一歩だと思います。戦略とは実のところ、何なのでしょうか。失敗しないようにするために何が必要なのでしょうか。どうしたら皆さんのビジネスにおいて、堅牢(けんろう)で素晴らしい戦略を作り出せるのでしょうか(次回に続く)。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.