新型「インサイト」、ハイブリッドシステムのコストを4割削減(1/2 ページ)

» 2009年04月01日 00時00分 公開
[Automotive Electronics]

 本田技研工業(以下、ホンダ)は2009年2月、ハイブリッド車「インサイト」の新モデルを発売した(写真1)。価格が200万円以上の既存のハイブリッド車よりも安価な189万円からという価格設定により、これまでにハイブリッド車を購入したことがない客層への浸透を図る。月間目標販売台数は5000台。2009年3月からは欧州市場で、同年4月からは米国市場で販売を開始する。


写真1ホンダの新型「インサイト」と同社社長の福井威夫氏 写真1 ホンダの新型「インサイト」と同社社長の福井威夫氏 

 ホンダ社長の福井威夫氏は、「当社は、現時点で環境に最も貢献できる自動車はハイブリッド車だと考えている。そこで、購入しやすい安価なハイブリッド車を実現するために、新型インサイトではハイブリッドシステムのコストを従来比で4割削減した」と語る。続けて、「まず国内市場での立ち上げを成功させて、その後はグローバルで年間20万台販売できる製品にしたい。『フィット』、『シビック』、『アコード』、『CR-V』に続く、5番目のグローバルブランドに育てていく」(同氏)とし、世界戦略上、重要な車であることを強調した。国内の販売店には、発売前の時点で月間目標値に相当する5000台の予約が入っているという。

電池のみでの航続距離は1km

写真2 車両前部に配置したエンジンとモーター 写真2 車両前部に配置したエンジンとモーター
写真3 荷室床下に配置したIPU 写真3 荷室床下に配置したIPU PCUとその下にある2次電池ボックスで構成される。IPUの重量は48kgで、そのうち2次電池が20kgを占める。
図1PCUを構成する主な部品(提供:ホンダ) 図1 PCUを構成する主な部品(提供:ホンダ)
図22次電池ボックス(提供:ホンダ) 図2 2次電池ボックス(提供:ホンダ) トヨタ自動車のハイブリッド車は、隣接した2次電池モジュールの間の空間を最小限にするために角型の電池セルを採用しているが、インサイトの電池セルは円筒型である。共同開発パートナーである三洋電機が、円筒型をベースに車載用ニッケル水素電池を開発していることに加え、一般的に円筒型が角型に比べてコストを低く抑えられることも大きな理由となっている。

 新型インサイトは全長4.39m×幅1.695m×高さ1.425mで、車重が1190kg。5ドアハッチバックの、いわゆる“5ナンバーサイズ”のコンパクトカーである。価格や走行性能など、インサイトの特徴を実現しているハイブリッドシステムは、駆動用モーターを1個だけ搭載するパラレル方式の「IMAシステム」を採用している。エンジンには排気量1.3l(リットル)の「i-VTEC」を、トランスミッションにはCVT(無段変速機)を搭載した。燃費は、10・15モードで30km/lである。

 IMAシステムは、車両前部に配置したエンジンと一体化させたモーターと、後部の荷室床下に配置したIPU(インテリジェントパワーユニット)から成る(写真2、3)。モーターとしては、新たに薄型DCブラシレスモーターを開発した。最高出力は10kW、最大トルクは78Nmで、エンジンとモーターの組み合わせによって排気量1.5lクラスの加速性能を発揮できるとしている。また、モーターだけで走行する場合、最高で40km/hの速度で走行することが可能だ。

IPUは、PCU(パワーコントロールユニット)、2次電池ボックス、冷却ファンなどから構成される。PCUには、モーターと2次電池の制御機能を1パッケージにまとめたECU(電子制御ユニット)、2次電池の100Vの直流電圧から、モーターを駆動するための交流電流を生成するPDU(パワードライブユニット)、同じ100Vの直流電圧を一般の車載電子機器で用いる12Vの電圧に変換するDC-DCコンバータなどが入っている(図1)。2次電池ボックスは、円筒型のニッケル水素電池セルを12個直列につないだモジュールを7個搭載している(図2)。容量は5.75Ahで、満充電の2次電池の電力だけでモーターを駆動した場合に、約1km走行できるという。なお、モーターはホンダの内製で、モーター用のECUとPDUはケーヒン、PDU内のインバータモジュールは三菱電機、DC-DCコンバータはTDK、ニッケル水素電池は三洋電機が供給している。

 CVTは、フィットや「オデッセイ」とは異なり、トルクコンバータを採用していない。トルクコンバータを使わないことで、ブレーキを踏んだときにモーターを発電機にして行うエネルギー回生の効率が高くなるとともに、トルクコンバータに必要な電動オイルポンプも削減できることが理由である。また、2006年発表の「シビックハイブリッド」と比べて、より低い回転数でもクラッチをつなげるようにするとともに、最終減速比(ファイナルレシオ)を6.7%下げた(ローレシオ化)。「より低い回転数でもクラッチをつなげるようにしたのは、低回転域でもトルクの高いモーターの特徴を生かして、低速時の加速性能と燃費を向上するためだ。一方で、一般的には燃費を悪くするとされる最終減速比のローレシオ化は、燃費だけでなく走行性能を確保することを目的にしている」(ホンダ)という。

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