テクノフロンティアで見た CAEの最新動向メカ設計 イベントレポート(10)(1/2 ページ)

電子機器・産業機械の専門技術展「テクノフロンティア2009」 に展示された解析ソフトウェアの機能や新製品情報を紹介する

» 2009年04月28日 00時00分 公開
[小林由美,@IT MONOist]

 今回は、2009年4月15〜17日に幕張メッセで行われた電子機器・産業機械の専門技術展「テクノフロンティア2009」内の「第22回 EMC・ノイズ対策技術展」「第11回 熱対策技術展」で出展した解析ソフトウェア(CAE)ベンダのブースの一部および製品を紹介する。なお今回は、お隣のフォーラム「電子機器」とも関連する製品情報も一緒に紹介する。

7種の解析が可能な日本産CAE――ムラタソフトウェア

 ムラタソフトウェアは、同社で開発した「Femtet 7」を展示した。Femtetは村田製作所内で長年使用してきた連成解析ソフトウェアで、2008年6月より社外にも販売し始めた。その経緯を踏まえ(そして結果的に験を担ぎつつ?)の「7」である。ライセンス価格は年間で20万円(PC1台分)からとのこと。同製品は解析専任者というよりも、主に設計者を対象にしている。

ムラタソフトウェアのブースとFemtet

 3次元ソリッドモデラーと併せ、応力、電磁波、熱伝導、電磁場、磁場、圧電、音波の7種類の解析の機能が付いている。それぞれの連成解析も可能だ。ただし熱流体解析に関しては未対応で、ひとまず気体解析の実装を検討中とのことだ。 「廉価だが、機能も計算能力も実務でしっかりと使えるレベル」(ムラタソフトウェア 営業企画部 販売推進課長 辻 剛士氏)。解析結果のアニメーションも保存可能だ。

 メッシュ分割は「アダプティブメッシュ」により自動で行え、粗さも場所ごとに適切な値に調整してくれる。「メッシャーに自信あり。村田製作所内で複雑な電気部品の解析をしながら、メッシュが切れない事態が起こるたびにメッシャーの改良に対応してきた」(辻氏)。

 ソリッドモデラーでは変数を指定しておけば、3次元CADのようなパラメトリックモデリングもある程度は可能だ。なお対応している3次元モデルのインポート/エクスポートフォーマットはParasolid(拡張子は「.x_t」)。

 解析ソフトウェアは外資ベンダのものが目立ち、しかも表現や用語が特殊なため、日本語の翻訳が非常に難しいといわれ、強引に訳されたことで単語の意味がすっかり通じないこともあり得る。Femtetはソルバもプリポストも自社開発、つまりすべて日本製なので、当然、UIやマニュアルも日本語だ。マニュアルには日本語の用語解説やチュートリアルも付いている。この点は、英語が不得手な日本人ユーザーにとっては安心感が大きいといえる。

 これまでは電機・部品メーカーを中心に販売をしてきたが、今後は産業機械や自動車部品メーカーにも広めていきたいという。

流体解析の第一人者が作ったCAE――CHAM

 チャム・ジャパンは流体解析ソフトウェア「PHOENICS 2008」を展示。チャム(CHAM)は英国生まれのソフトウェアベンダ。英国本社の代表者で「PHOENICS」の開発者 スポルディング(Prof. D. Brian Spalding)教授は流体解析の第一人者といわれる。

 「当社よりも後にできたCAEベンダ(当社のブースの周囲にいるベンダなども)の開発者には、スポルディング氏に学んだ人が多いはず。PHOENICS で用いられている理論は流体解析の教科書ともいわれる」(CHAM 東京支店 技術開発部長 立野 泰昭氏)。

 同社は1980年代のスーパーコンピュータ時代から二相流や化学反応を考慮できる、当時としては高度な熱流体解析を提供してきた。「創立者も研究者なせいか、強い商売気質がない企業。いまも販売促進をというよりは、とにかく“システムの普及をしたい”」(立野氏)。

 また「他社製品では非構造メッシュが多い。時代遅れといわれようとも当社は直交メッシュにこだわってきた」(立野氏)という。直交メッシュは、その名のとおり直交の格子で、円状の境界の認識が粗くなってしまう。そこをカットセルという手法で補完するという。計算速度は純粋な直交メッシュのときよりも当然、若干は遅くなるが、解析に支障を来すほどではないと立野氏はいう。

PHOENICSによる流体解析

 UIは基本的に英語。同社 東京支店の提供するパッチを当てることで日本語化も可能だ。

*バージョン2008では未対応:2009年4月現在、マニュアルは日本語版あり

 先述のとおり、特殊な表現や用語を無理やり日本語に訳すには限界があるが、同社ではあえて訳さない方を選択したというわけだ。

 価格は初年度のみ約200万円を買い取りということで支払い、以降の年は20万円の保守費用のみとなる。2年目からの保守は、ユーザーが不要と判断すれば断ることができる。当然、サポートサービスは受けられなくなるが費用は発生しなくなる。

 同製品のユーザーは医療関係が目立ち、耳鼻咽喉科や循環器科関連の解析にもよく使われているとのことだ。

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