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» 2009年06月23日 00時00分 公開

トヨタのカーデザインとデジタル生産(前編):トヨタの意匠 少し昔の事情といまの課題 (3/3)

[武藤一夫/静岡理工科大学 理工学部 機械工学科,MONOist]
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スタイリング工程(アイデア、イメージスケッチ工程)

 以降では、デザイン工程の中身について、もう少し詳しく説明していく。

 コンセプトの段階では、商品企画からの提案を踏まえてデザイン戦略を立てた後、アイデアスケッチを描き、Photoshopやサーフェスモデラーなどを使ってデザインを進める。このコンセプト領域での情報システムとして、トヨタ自動車では14〜5年前からCASを立ち上げ、活用している。

 従来手書きで行われていた作業は、現在、すべてCGによる作業に取り変わっている。コンセプト初期の頃から、2次元CGでスケッチやレンダリングが行われてきたが、さらにここ最近では3次元CGによる形状モデリングやレンダリング、プレゼンテーションに移行している。

 PLMデータベースによってデザイン部門で作成されたデータは、次工程の設計部門で直接利用される。

デザイナに求められる資質

 従来のスタイリング工程では、すべて図4に示すように、スケッチなどは手書き作業だった。そのスタッフは絵描きが上手な美術大学の卒業者の方が多かった。

図4 手書き作業によるスケッチ(トヨタ自動車提供)

  しかしこの手書きだった作業は、図5に示すように、コンピュータグラフィックス(CG)を用いた作業に置き換えられていった。

図5 コンピュータ・グラフィックス(CG)を用いたスケッチ・レンダリング作業 (トヨタ自動車提供):(左)CGによるデジタルスケッチモデリング、(右)CGによるデジタルレンダリング

 図5(a)では、Photoshopを使い「サイノス」の車体をスケッチモデリングしている。図6(b)では、そのデジタルレンダリングをしている。

 トヨタ・デザインのCGの考え方として、プロセス、目的に応じて以下の使分けが行われる。

  1. コンセプト段階:開発車の企画・提案に利用する
  2. アイデア・立体化:スタイルCAD、カラーCADなどのインハウス(内製)システムを利用している
  3. CADデータの評価、意匠評価:同上のシステム、インハウスで開発したソフト、例えばハイライトチェックソフトによって面品質の検討を行っている

 また、その期待効果としては、以下が挙げられる。

  1. コンセプト、アイデアの品質向上
  2. アイデアサイクルの増強による洗練されたスタイリング練り込みを行うことで高品質化を推進
  3. 実モデルでは困難な多角的な評価を支援(競合車比較、市街地走行)
  4. クレイモデルでは実現できない市街地走行をCGにより、ヴァーチャルクレイモデル想現実)にて種々のシチュエーションに合わせて検討
  5. 開発期間の短縮、スピードアップ
  6. 開発コスト(リソース)の適正化

 もはや、デザイナの資質も美大卒のような絵の上手さではなく、新しい車造りができる独創的で豊かな発想を持つことにある。

 よって図6のように、広い分野を見渡せる新たな人材が重要になってきている。

図6 これからのデザイナの資質(トヨタ自動車提供)

 絵の上手さは、いまやコンピュータが補完してくれる時代となった。

 1995年、奥田碩氏がトヨタ自動車の代表取締役社長に就任*1999年に退任し、大々的な構造改革が進められた。先述したように、その当時の同社内では統合CAD化が推進された。そしてデザイン部門では、主体のプロジェクトとして「プログレ(NC250)」「アルテッツァ」「bB」が立ち上げられた。

 後、bBのプロジェクトでは、V-commを本格導入しクレイモデルレス化がなされた。近年は、急激なグローバル展開によってCGやCAD/CAMが急速に普及し、そしてリードタイムは短縮され、クレイモデルレス化がますます推進されている。

 次回は、意匠におけるCAD工程、およびCAM工程(モックアップ)に関する説明から始め、クレイモデルレス化、設計・生産とデザインデータの連携についての説明へ展開する。(後編に続く

編集部注:本記事と参考文献

本記事は、武藤一夫氏著『進化し続けるトヨタの生産システムのすべて』(技術評論社)の内容を参考にし、記事公開時の現状を踏まえて、本サイトの読者向けに執筆したものです。


Profile

武藤 一夫(むとう かずお)

1955年生まれ。静岡理工科大学 理工学部 機械工学科 准教授。1989年、労働省所轄 職業訓練大学校講師。1993年、東京農工大学工学部 工学研究科 大学院 博士後期機械システム工学専攻修了、工学博士号取得。著書に『進化し続けるトヨタの生産システムのすべて』(技術評論社)、『これだけは知っておきたい金型設計・加工技術』(日刊工業新聞社)などがある。


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