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» 2009年06月26日 00時00分 公開

危機の先を見据えたモノづくり方法論を確立せよモノづくり最前線レポート(10)(2/3 ページ)

[原田美穂,@IT MONOist]

よりドラスティックな企業間の連携が始まる

――企業間ネットワークといった場合に、日本では企業グループ同士の連携が想起されます。

三澤 PLMそのものがモノづくりネットワークとならないと景気はよくならないのではないかと思います。グローバルなサプライチェーンでは、自前の組織内だけでなく、すでに同業他社を巻き込んで戦略を練っています。

 企業グループ体は従来系列グループ同士での連携が主でした。しかし、今後は最良の結果を導くために、こうした枠組みを超えたドラスティックな連携も多くなっていくでしょう。

 企業が生き残るためには世界的なネットワークを持つ必要があり、かつ、戦略的にそれを管理し、いかに効率のいいリソース管理を行うかが重要です。成功した企業の技術のみが、デファクトスタンダードとなっていく時代が来るでしょう。デファクトとならなかった企業は技術供与を受けざるを得ず、利潤を得難い状況となっていくでしょうから、危機意識を持つべきでしょう。

――グローバルなネットワークが実現しつつある企業がある一方で、日本国内の企業におけるPLMの活用レベルはCADやCAEなどの範囲に限られており、モノづくり戦略に生かすには至っていない場合が多いような印象です。

三澤 日本で導入されているシステムの多くはCADやCAEなどが中心です。しかし、先ほどお話ししたように、この不況をきっかけによりネットワーク性の高いソリューションへのニーズは高まってくるだろうと考えています。この意味で、日本のモノづくりには進化の余地が十分にあるといえます。

 むろん、現段階ではまだコスト調整フェイズのただ中という企業は多いですが、その中でも、不況後に向けた戦略として、当社が扱うTeamcenterのようなグローバルな展開を視野に入れた検討している企業が少なからず存在しています。

――今後のPLM普及は、海外との連携に焦点が当たっていくと考えるべきですね。

三澤 そうしたことも念頭に置いておくべきですが、導入後すぐさま海外を視野に入れる必要はありません。実際には他国との取引には時間がかかるものです。スケールメリットがあるもの以外では、まずは国内で、さらにいい環境を考えていくところから始めてもいいでしょう。

初期投資のリスクを低減する「仮想モノづくり」環境

――ここまでで、世界的なネットワーク上でPLMを展開することを視野に入れるべき、というお話がありましたが、それ以外の側面はどうでしょうか?

三澤 製品開発段階での研究開発コストを削減するために「仮想モノづくり」環境を構築しようと考えている企業もいくつかあるようです。CAEを使ってさまざまな分析を仮想的に行い、製品化に向けてじっくり研究するというものです。幸か不幸か、いまは研究開発に充てる時間が取りやすい時期ですしね。

 試作を繰り返す段階などでは初期投資費用のみがかさみ、回収の目処が立たない、という状況が発生しますが、この部分を例えば3次元CADなどで仮想的に制作すれば、実質的には限りなくゼロに近いコストで研究開発が行えるようになります。システム導入にはコストがかかりますが、長期的視座に立てば、圧倒的に低コストで機動性の高いモノづくりが可能となるでしょう。

 また、デジタルマニュファクチャリングという考え方があります。もともとは、工場内部の配置をデジタル化し、効率よく管理する手法です。

 この3月は、不況の影響で、多くの企業が生産ラインの縮小や工場の閉鎖などを行わざるを得ない状況でした。在庫調整とコストカットを目的とした施策でもコストが発生します。現場の方ならお分かりのように、工場の停止にはかなりのコストが掛かります。機材を別の工場に移すにせよ、1度配置して失敗しては移動させて、といったやり直しが発生すればなおさら多くのコストが掛かります。

 これはいずれも実際の機器を動かしながら調整しているために発生するものです。これを例えば仮想的にコンピュータ上でシミュレーションできるとどうでしょうか。何度やり直しを行ってもコストも時間もかかりません。

 多数の工場を持つような企業ではすでに配置変更や工場の新設、統廃合の場面での効率を向上させるためにデジタルマニュファクチャリングを実施しています。

 そもそものデジタルマニュファクチャリングは、生産ラインの設計にかかわるものでしたが、ラインの統廃合でも活躍しています。

 一度デジタル化した機器のデータは、再利用できますから、別の配置を検討する際にも活用できます。

――デジタルマニュファクチャリング製品を販売している企業はまだ数が多くありませんね。

三澤:そのとおりです。まだ数社しかありませんから、選択肢は限られていますね。だからといって何でもいいわけではなく、ほかのデータとうまく連携できているか、という点は製品選定の際には重視すべきポイントとなるでしょう。

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