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» 2009年06月26日 00時00分 公開

危機の先を見据えたモノづくり方法論を確立せよモノづくり最前線レポート(10)(3/3 ページ)

[原田美穂,@IT MONOist]
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グローバルサプライチェーンで市場を把握するのが日本企業生き残りのポイントになる

三澤 ある大手アパレルメーカーの生産・販売戦略で、非常に興味深いものがありました。共通の素材、共通の型を使ったうえで、配色バリエーションを持たせることで、廉価で高い品質の製品を市場に投入するというものです。

 調達ではスケールメリットを追求し、型も限定して工数を削減しながら、単調な製品になることなく、カラフルでファッション性に富んだ魅力的な製品を低価格で実現したからです。この事例では販売網も含めたコントロールも実現して、より効率的な生産体制を整えています。

 この事例は、PLMの考え方として非常に示唆に富んだものだと思います。

 不況を脱した後の日本のモノづくりの世界は、この事例のように、製品ライフサイクルの後半、つまり、初期投資を抑えたうえで迅速に回収し、利益を得るフェイズに到達するまでを短期間で実現することと、それ以降の収益を上げる期間をいかに長いものとするかが重要となってきます。いままでのように、初期投資をして、とにかくたくさん作って売る、という発想の時代は、少なくとも日本のモノづくりにおいては終焉を迎えるでしょう。

 大量生産を行ったとしても新興国の安価な人件費による生産には太刀打ちできません。価格競争になどなったら真っ先に苦しくなることも目に見えています。むしろ、グローバルサプライチェーンを用意し、販売状況を迅速に把握していく仕組みを用意しておくことが、日本の製造業の生き残るためのすべだと、私は考えます。

――初期投資期間の短縮と低コストの実現には仮想モノづくり環境やデータの再利用がカギになりそうですね。

三澤 初期投資期間を短く、低コストで実現するためには、デジタルデータの再利用が重要になってきます。従来、こうした議論は、より上流の工程で活発に行われていましたが、今後はより現場に近い部分でのデジタル化が重要です。

 いずれにしてもこの不況をきっかけに、モノづくりの世界ではかなり大きな変化が起こるでしょう。とくに日本の製造業界ではそれが顕著になるだろうと予測しています。加えて、モノづくりという言葉の持つ意味合いも変わってくると考えています。

 今後はものの作り方ではなく、いうならば「モノづくり方法論」が議論されるようになるでしょう。モノづくりの現場の皆さんがこうした事柄を意識するだけでも、日本のモノづくりはずいぶん変わってくるのではないでしょうか。

 「いいモノを作る」と「いいモノづくり」は似て非なる言葉です。今後は「モノを作る」ことだけでなく、製品ライフサイクルを含めた方法論を考える「いいモノづくり」をよく議論すべきでしょう。

 「いいモノづくり」には、モノづくりのプロセスを再利用する、つくったものを再利用するという考え方は非常に重要です。うまく再利用が可能になる仕組みを考えていくことで、おのずと日本の製造業の進むべき道が見えてくるはずだと思います。

三澤 もう1つ加えるなら、実のところ、身の回りには不況に動じなかった息の長い製品が多数存在します。今回のような世界的な危機に際しては、このような不況を通過してきた製品を研究するというのも、1つのヒントとなるでしょうね。

――ありがとうございました。

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