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» 2009年07月01日 00時00分 公開

LED室内灯の開発に役立つ熱流体シミュレーション (3/3)

[菊池 和重(市光工業 研究開発部),Automotive Electronics]
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室内灯全体の温度評価

 最後に、LED室内灯全体について、実測/シミュレーションでの評価/検証を行った。LED室内灯の温度評価を実際に行うために、写真2のような試験装置を製作した。室内灯は、車両の天井に相当する樹脂板にはめ込まれ、さらにその上部には車体の屋根を模した樹脂板が設置されている。そのため、 LEDで発生した熱は、ヒートシンクを介して2枚の樹脂板の間の空間に対して放出される。試験は、さまざまな環境温度で実施する必要があるため、装置全体を恒温槽内に入れて行う。このとき、装置は出射光が下向きとなるように設置する。


写真2LED室内灯の試験装置 写真2 LED室内灯の試験装置 室内灯が車両内に設置される状態を模している。

 シミュレーションについては、室内灯試験装置の計算モデルを準備する。同モデルは、右側のマップランプを点灯した状態を模擬するために、右半分のみをモデル化した。このモデルにおいて、放熱はヒートシンクの周辺だけで行われることになる。すなわち、試験装置よりも樹脂板を小さくすることで、計算に必要なメッシュ数を制限することが可能である。また、試験装置の外枠も省略した。

 LED室内灯の試験は、試験装置を恒温槽内部に配置して行う。それに当たっては、内部撹拌用のファンによる循環流の影響を小さくするために、装置全体を紙製の箱で覆って温度を計測した。ただし、循環流が装置の設置された金網の下部を通過するので、室内灯の温度に影響を与えている可能性がある。一般に、循環流の流速は3〜5m/sとされているが、実験は室温に近い温度で実施したので、ファンによる循環流速は比較的小さいと考えられる。そこで、シミュレーションは、2m/s、3m/s、4m/sのそれぞれ一様な流速(一様流)を条件として実施し、試験結果と比較した。計算条件は、実測試験と同一とし、LED1 個当たりの負荷電力0.30Wの85%が熱に変換されると仮定した。抵抗などを含む総発熱量は1.27Wで、環境温度は28.7℃である。

図4室内灯試験装置のシミュレーション結果 図4 室内灯試験装置のシミュレーション結果 試験装置の中央断面の様子を表している。カソード部の温度に対して、循環流に相当する一様流やヒートシンク直上の空気流速が影響を与えていることがわかる。

 撹拌用ファンによる循環流の影響をシミュレーションにより検討する必要がある。そのため、図4のシミュレーション結果(速度ベクトル図)のように、試験装置(LEDマップランプユニット)のほぼ中央断面部において、ヒートシンクと樹脂板(車体の屋根に相当)に挟まれた領域の空気速度とLEDのカソード部温度との関係を調べた。環境温度は、実験と同じく28.7℃とした。

 実験により計測されたカソード部温度は、57.1℃である。カソード部温度の計算値は、一様流の速度が2m/sの場合に58.7℃、3m/sの場合に 54.3℃となることから、実験値(57.1℃)を計測した際の循環空気流速は2〜3m/sの間である可能性が高い。また、これらのシミュレーション結果から、ヒートシンク−樹脂板間の流速は一様流の速度の3〜4%程度であるにもかかわらず、カソード部の温度に大きな影響を与えていることがわかる。なお、室内灯の樹脂製ハウジングは熱伝導率が低いため、温度が高い領域はヒートシンク周辺のみとなっている。

 LEDのTjは、カソード部温度である57.1℃と負荷電力0.30Wから、81.7℃と推定される。従って、Tjの最大許容値をTjmaxである 130℃とすれば、48.3℃の余裕があり、単純計算では環境温度77.0℃まで使用可能ということになる。ただし、恒温槽での試験は循環流の影響で、温度が低く計測される傾向にある。そのため、適切なジャンクション温度の推定は、この点を考慮して慎重に行う必要があるだろう。

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