ついに開幕「Imagine Cup 2009」−いざ決戦の地へImagine Cup 2009 イベントレポート(2)(1/2 ページ)

いよいよ開幕した「Imagine Cup 2009」世界大会。日本で行われた代表壮行会の模様とエジプトで行われた開会式の模様をお伝えする

» 2009年07月06日 00時00分 公開
[八木沢篤,@IT MONOist]

モノづくり大国ニッポンの未来を担う若者たちへ

――彼らを目の当たりにして、毎日アルバイトや遊びで時間を費やしていた過去(学生時代)の自分を悔いた。本当に何も考えずに貴重な時間を無駄にしてきたと思う。ましてや自分が世界の大舞台で何かを成し遂げるなどということを少しも考えたことがなかった。壇上で堂々とプレゼンテーションを行う彼らがまぶしく見えた。

 2009年7月1日、マイクロソフト 新宿本社で「Imagine Cup 2009」世界大会進出を決めた日本代表チームの壮行会が行われた。

 ソフトウェアデザイン部門に出場する同志社大学と京都大学の混合チーム「NISLab++」。彼らはImagine Cup 2008フランス大会に続き2回目の出場となる。また、組み込み開発部門、初出場で世界大会進出を決めた国立 東京工業高等専門学校のチーム「CLFS」。そして、紅一点の武蔵野美術大学の寺田志織さんが写真部門で出場を決めている。

 前回の記事「学生たちが世界を救う−Imagine Cup 2009世界大会」でも紹介したが、世界175の国と地域から約30万人がエントリーした今回のImagine Cupで3部門から世界大会進出者が選ばれたことは素晴らしい快挙といえる。

加治佐 俊一氏 画像1 マイクロソフト 業務執行役員 最高技術責任者 加治佐 俊一氏

 壮行会では、マイクロソフト 業務執行役員 最高技術責任者 加治佐 俊一氏が登壇。日本代表チームにエールを送った。「マイクロソフトは、これまで学生支援を行いながら人材育成とイノベーションの発展を進めてきた。こうした活動の中から今回、Imagine Cupで日本代表が3部門で出場を決め、世界に挑戦するということは非常に喜ばしいことだ」(加治佐氏)。

 同社は教育分野への取り組みとして「競争力のある人材育成」「研究支援と社会展開」「先進教育環境の提示と展開」の3つの柱を掲げ、それに必要となる4つの力「国際力」「想像力」「実践力」「専門力」についてさまざまな取り組みを行ってきた。その1つが今回のImagine Cupだ。同大会は特に国際力と想像力を高める取り組みとして位置付けられている。

 「今回の経験を通じて、世界中の優れた学生たちから刺激を受け、いろいろなことを学び取ってほしい。こうした経験がさらなる飛躍を生み出す原動力となる」(加治佐氏)。今後、同社は「IT業界への就職支援」や「学生ベンチャー支援」など、“就職”をキーワードに学生向けの支援を強化していく構えだ。

「教育分野への取り組み」についてのスライド 画像2 「教育分野への取り組み」についてのスライド

中山 浩太郎氏 画像3 東京大学 知の構造化センター 特認助教 中山 浩太郎氏

 また、ソフトウェアデザイン部門で過去3回の世界大会出場経験者である東京大学 知の構造化センター 特認助教 中山 浩太郎氏が応援に駆け付けた。ちなみに、同氏は今回の世界大会でソフトウェアデザイン部門の審査員として参加することになっている。

 同氏は過去の出場経験を踏まえて日本代表に次のようにアドバイスした。「勝つことも大切だが、Imagine Cupは勝ち負け以上に大切な“経験”が得られる場である。高いスキルを持った学生が多く集まる中で、自分に何が足りないのか、何が自分の強みなのかを感じてきてほしい。私自身、過去の経験がいまも生きている」(中山氏)。


母子手帳をヒントにしたソリューションで世界に挑戦

 本稿では、組み込み開発部門に初参加し、世界進出を決めた国立 東京工業高等専門学校のチーム「CLFS」に注目し、壮行会で行われた本番さながらの英語によるプレゼンテーションとデモンストレーションの模様をお伝えする。

チーム「CLFS」 画像4 チーム「CLFS」。左から長田さん、佐藤さん、宮内さん、有賀さん

 彼らは『乳幼児と妊産婦の死亡率低減』をテーマに日本の母子手帳を参考に、体温や体重、血圧など妊婦と乳幼児の健康管理に必要な情報を各計測器で測定し、タッチパネル式の小型ディスプレイに表示する機能を備えた「The Electronic Maternal and Child Health Handbook」を開発した。例えば、乳幼児の熱が高かった場合などは、必要な応急措置の方法などを紙芝居風に小型ディスプレイに表示することができる。

 彼らは「発展途上国などでは乳幼児や妊産婦の死亡率が高いケースがある。こうした国や地域の各家庭や村などにこのデバイスを配ることで死亡率の引き下げに貢献できる」としている。実際、同様のソリューションはWindows PCでも実現可能だが、コスト面、そして環境面で先進国よりも劣る国や地域にとって組み込みOSを搭載したデバイスの方が安定稼働が実現できる。

東京高専チームが開発した「The Electronic Maternal and Child Health Handbook」 画像5 東京高専チームが開発した「The Electronic Maternal and Child Health Handbook」

 また、彼らのメンターを務めた国立 東京工業高等専門学校 松林 勝志氏は「日本の母子手帳という文化を参考にしたソリューションであるため、その点がどこまで受け入れられるかがポイントとなりそう」と語っていた。

 壮行会で受けた彼らの印象は“チームワークの強さ”。特に好感が持てたのは英語でのプレゼンテーションを全員で分担して行っていた点だ。長田さんは「プレゼンテーションの原稿が完成したのが6月29日、まだ通しで練習したのは数回だけ」と不安も覗かせていたが、世界大会進出に向け約2カ月間、英語講師(ラモナ リン コルソン 渡辺先生)による特訓を続けてきた彼らの成果が発揮されるのか? 事後のレポートで詳細をお届けする。

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