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» 2009年09月11日 00時00分 公開

3次元データ活用入門(3):10倍の給料をもらえるモノづくり環境を目指せ (2/3)

[鳥谷浩志/ラティステクノロジー,@IT MONOist]

神器2:3次元データを基軸に情報連動させて情報の質を高める3次元部品表

 2番目に、軽量3次元データを利用した部品表のソリューションについて説明しましょう。このソリューションの基盤になるのは、XVL Web Masterというソフトウェアです。これは、CADから生成されたXVLと、納期・価格・納品先といった部品にかかわる属性を一括して連動させ、3次元データ付きの部品表を作成するソフトウェアです。

 下図のようにXVLに工程情報や分解図の情報を定義しておけば、作業工程表やパーツリストの作成も半自動で行うことができます。また、生成された情報は3次元画像やイラスト、属性情報がすべて連動します。この情報の連動は言葉だけでは伝わりにくいでしょう。サンプルのデモコンテンツがありますので、興味のある人は見てください。ただし、デモを閲覧するにはプラグインであるXVL Playerもインストールする必要があります。もちろん、XVL Playerは無償なので、見るだけなら費用を心配する必要はありません(注4)。

XVL Web Masterによる作業工程表やパーツリストの自動作成 XVL Web Masterによる作業工程表やパーツリストの自動作成

 サービスセンターで利用される部品補給のためのパーツリストは、設計が変更されるたびに世界中のサービスセンターに修正情報を送る必要がありました。しかし、このような半自動での情報生成システムをWeb上で構築しておけば、そのような手間は一切なくなるわけです。

 また、これを参照する側も無償のXVL Playerを利用して手軽に3次元でパーツカタログを参照できます。軽量なXVLであれば、世界中で最新のパーツカタログを参照できるわけです。パーツカタログをWeb化し共有することのメリットに関しては、農機具メーカーの共立で大きな成果を収めています(注5)。

 3次元の作業指示や部品表のソリューションを組み合わせて実現できるのが、紙の図面レス、帳票レスで実現する製造現場です。拙著「3Dデジタル現場力」(JIPMソリューション)からその概要を説明しましょう。

 下図が、金型メーカーのアルパインプレシジョンで実現した図面レス・帳票レスの実際です。紙の図面や帳票がすべてデジタル情報に置き換わったのです。筆者も実際の工場を見てきましたが、通常の製造現場にある紙の帳票や図面は一切ありません。この最大の効用は金型製造期間が半減したということです。

軽量3次元データを利用した図面レス・帳票レスの実現 軽量3次元データを利用した図面レス・帳票レスの実現

 では、この半減の原動力は何でしょうか。まずは、現場のニーズに即したシステム構築ということが挙げられるでしょう。後工程で必要とする情報をきちんと定義し、それをCADからXVLに変換可能にしたのです。CADで形状情報とともに、金型製作に必要な製品仕様や部品情報といったすべて属性情報を設定するというルールを策定し、それをXVLに自動変換しました。この結果、金型設計部門は帳票や図面を書くという手間から解放され、製造部門は設計完了と同時に、製造に必要なすべての情報を入手できるようにしたのです。


注4:詳細はこちらで紹介しています。
注5:詳細はこちらで紹介しています。


ぼうっとしている人がいなくなった!

 筆者が同社で聞いた話で印象的だったのが、製造部門でぼうっとしている人がいなくなったということです。以前は、図面で指示された金型形状が把握できず、考え込んでしまい作業に入れずにいたのです。十分な情報が来てないために、作業に入れずぼうっとしているように見えたわけです。今は、製造指示がXVLで伝達されてきます。

 3次元データで即座に形状把握できるので、設計完了と同時に作業の段取りに入れます。また、製造現場ではXVLモデルで断面を計測し、作業するといった風景も見られました。かつては、設計者が記載した寸法のみが図面に記載されて渡されてきました。手元に届いた図面には、製造するうえで知りたい寸法が欠落していることもありました。多忙な設計者に、細かな寸法ななかなか確認しづらいでしょう。いまでは、XVLの3次元モデルを計測すれば、現場で知りたい寸法を現場の人が計測できるのです。

 また、軽量な3次元モデルで金型全体の形状を表示できます。自分の製造している金型だけでなく、周りの部品形状や加工精度をも把握して、加工することで、製造の手戻りが激減したといいます。

 下図に同社の実際の写真をお見せしましょう。この写真のように金型を製造し、組み付け、仕上げるというすべての工程でデジタル情報が参照されているのです。こうして、金型製造の納期を短縮し、品質を向上させたのです。これはまさに「現場力を引き出すIT」とも呼べるものでしょう。

アルパインプレシジョンのデジタルものづくり現場 アルパインプレシジョンのデジタルものづくり現場

 豊かな情報を現場に流すことで、日本の優秀な現場の人々が独自に工夫し、高い品質の金型を短納期で製造できるようになったのです。「モノづくり情報」の流れを作るのが、軽量XVLの役割であると述べてきました。製造現場に「モノづくり情報」を流すというのは、こういう意味だったのです。東大ものづくり経営研究センター長の藤本隆弘教授の言葉を思い出しましょう。

 強い製造業の特徴は、「知のめぐりのよい組織」なのです。「知のめぐりのよい組織」では、豊かな情報に基づき、製造現場が独自の工夫をしていくのです。そして、ニッポン製造業の競争力の源泉であった擦り合わせ型の組織が、「モノづくり情報」の流れを作るITで武装することによって、その組織はますます強くなっていくのです。

軽量3次元データXVLはいかに進化したのか? その2

 やがて2000年代に入ると3次元CADの導入が進み、すべての製品データを3次元で正確に入力するようになります。パソコンとCADの性能の向上により、これまで省略していたような形状までも精密に3次元設計をするようになります。ここで大きな問題にぶつかります。個々の部品で3次元設計ができても、製品全体をアセンブルすると、データが大きくなり過ぎて、CADでは表示が遅い、あるいは、全体データを読み込めないといったことが起こったのです。これに対応して開発したのが、第2世代のV(Visual)-XVLでした。V-XVLでは、表示高速化に適したデータ構造を持ち、ソフトウェアの工夫によりメモリ消費量を極限まで抑えることに成功したのです。結果的にCADで数ギガbytesにも及ぶ自動車データでさえ、32bitパソコンで表示できるようになったのです。

 さらに時代が進み、3次元設計の活用範囲がさらに拡大してくると、自動車設計の現場からは自動車の新旧モデルを2台並べて見たいという要望が出てきます。半導体製造装置の分野ではハーネスまでも精密に設計したフルモデルを高速に見たいというニーズがありました。

 一方、日本で設計して海外で製造するメーカーからは、途上国の貧弱なインターネットインフラを介して、XVLの製造指示書を高速に参照したいというニーズがきます。軽量で高精度、大容量データも処理でき、しかも大きなメモリを必要としないという三拍子そろったフォーマットが必要とされたのです。そこでラティス・テクノロジーが開発したのが、第3世代U(Unified)-XVLです。P-XVLとV-XVLの長所を融合し、さらに性能を改善することに成功したのです。


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