SolidWorks2010のもはや紹介しきれない新機能ソリッドワークス・ジャパンの新製品発表

» 2009年09月24日 00時00分 公開
[小林由美,@IT MONOist]

 ソリッドワークス・ジャパンは2009年9月24日、日本向け新製品記者発表会を開き、「SolidWorks2010」の新機能を紹介した。同製品の発売は2009年12月中になる予定だ。

 「CATIA」(ダッソー・システムズ)や「Unigraphics」(現在はシーメンスPLMソフトウェア「NX」に統合)のようなハイエンドな3次元CADがまだ主流であった1995年、「1人の設計者に1台の3次元CADを」というチャレンジングなコンセプトの下に「SolidWorks」は誕生し、いまもなお同社はその考えを貫き続けている。2003年にはCADの中で立ち上がる解析機能を実装(旧名「COSMOS Works」、SolidWorks 2009より「Solidworks Simulation」)、2008年には3次元図面や公差検証、製造検証などを追加。そして14年目である2009年に登場するSolidWorks 2010は、環境を考慮した設計検討機能を提供する。

 新機能の実装・改善については、毎年、ユーザーを対象に行う調査で要望を募り、最も多いものを年次のグローバルユーザーイベントで公表し、毎年のメジャーアップグレードでもそれらを取り入れていく。前年度に出た要求ベスト20に対し、9割は実現するようにしているとのこと。

ソリッドワークス・ジャパン マーケティング部 プロダクトマーケティング 吉田 聡氏

 SolidWorks2010では、小さなものまで合わせれば200以上の機能増強を行ったという。そのうちの優先度トップ20機能だけでも、「記者説明会の2時間では到底説明できません……」とソリッドワークス・ジャパン マーケティング部 プロダクトマーケティングの吉田 聡氏は苦笑した。今回は主にトップ10の機能に絞り説明を行ったが、それでもなお走り気味な説明となるほどに、盛りだくさんな機能拡張だ。

 SolidWorks2010の新機能のTop10として、吉田氏は以下を挙げた。

  1. SolidWorks SustainabilityXpress
  2. 図面の詳細設定のためのラピッド寸法
  3. アセンブリでのミラー構成部品の機能強化
  4. マルチボディの板金部品のサポート
  5. マウス動作によるヘッズアップユーザーインターフェイス
  6. 板金のDXF/DWG へのエクスポート機能
  7. Configuration Publisher
  8. イベントベースのモーションシミュレーション
  9. SolidWorks Enterprise PDMでのコンフィギュレーションサポートの強化
  10. 3DVIA ComposerでSolidWorksコンフィギュレーションのサポート

 まず「SolidWorkS Sustainability Xpress」とは、部品設計段階で、それが環境にまつわる要件にどう影響していくか検証ができるツールだ。材料や製造プロセス、拠点などの条件を設定し、「材料」「製造」「移動手段と使用用途」「エンドオブライフ(廃棄)」の4項目別に基づいて、グラフで比較ができる。また条件を振っての比較も可能だ。この結果を利用して、共有ドキュメント化も行える。

環境の影響をグラフで比較する:ベースラインは条件変更前

 同ツールのデータベースには 独PE INTERNATIONAL社のLCAシステム「GABI」を利用している。LCAは製造業に特化したデータベースというわけではなく、設計・製造において絶対値での検証をするには弱いデータだという。拠点を変えた場合、材料を変えた場合ではどうパラメータが変化するかなど、同製品では相対比較に適するとのことだ。また同ツールの提供は2009年末〜2010年頭、もしくはそれ以降になる予定。

 これまで課題が多かった2次元製図に関連した機能も改善した。「マニピュレータ」という機能を追加し、寸法の配置を迅速に行えるようにした。この機能では平行に並んだ寸法を均等な幅で並べるようにナビゲートしてくれる。また画面中に「寸法パレット」という小窓を配置し、プロパティマネージャを使用しなくても、寸法スタイルの適用などができる。また断面図を製図する機能の改善も行った。

オレンジと水色のパイ状のGUIが「マニピュレータ」 オレンジ側をクリックすると、投影図に対し左側に適当な位置で寸法がプレビューされる

 モデリング機能については、アセンブリの対称コピー・反転機能の改善を行った。ミラーに関する構成部品を一括管理できるようにしたことで、「向こう側に1つのアセンブリを対称コピーしたいが、アセンブリそのものの構成は反転させたくない」など、細やかな要求に対応可能とした。従来、このような処理は、対称反転ではなく、通常の複写で行っていた。

 板金部品設計では、マルチボディを扱えるようにし、溶接で組み合わさるような複雑な板金構造に対応しやすくした。溶接ビードの検討も可能にした。溶接ビードは、フィーチャーの1種として扱う。板金部品の展開図は、DXF/DWGへエクスポート可能で、データ作成時にビューアで状態を確認しながら、加工には必要ない線を削除することができる。

 今回からMozilla FirefoxなどのWebブラウザの操作でよく使われるマウスジェスチャーが登場。クリックやドラッグの挙動の組み合わせで機能を呼び出す。このマウスジェスチャーには、ビュー移動のほか、ファイルの保存やスケッチの挿入など、よく使うコマンドをユーザーの好みで登録することが可能だ。

マウスジェスチャー

 部品設計時に、基本となる部品を流用して部品のバリエーション(部品の兄弟)を複数増やしていくことがあるが、そういった際に便利なダイアログボックスのパブリッシャ機能を今回から付けた。「取り付け方法は?」「ストローク長さは?」「シリンダータイプは?」などの質問項目とそれに属する選択項目を設定でき、チェックボックスでの制御も可能だ。ユーザーがダイアログボックスを製作することができ、ほかの設計者が部品バリエーションを増やす際、そのダイアログボックスに従い部品を作ってもらうという、標準化された作業フローが実現する。

コンフィグレーション パブリッシャ機能の画面

 モーションシミュレーション(機構解析)では、イベントに基づいたシミュレーションが行え、部品干渉時の動きや、サーボモータ制御などのイベントを設定することが可能だ。ただ、(If、Doneのような)複雑な分岐のあるイベント設定まではできず、そのような用途では、同社パートナーのナショナルインスツルメンツ(NI)社の提供するAPI「LabVIEW SolidWorks版」の利用を検討して欲しいとのこと。

 ほか、SolidWorks Enterprise PDMと3DVIA Composerでコンフィギュレーション(分解図や部品図の表示非表示設定など)対応のサポート強化を図った。

 上記に限らず、アセンブリの可視化機能や参照平面の設定の簡略化(MONOistNewsを参照)など新たに多くの機能を実装している。

この不景気、当社も当然辛いが

 同社のSolidWorksは、発表日時点で、全世界で106万9200ライセンス、企業数で12万300社以上に導入された販売実績を誇るミドルレンジ3次元CAD。日本は全ライセンス数に対して約1割を占め、学校と企業とでは、5対5とのことだが、学校への導入は年々増加傾向であるという。全世界では、全ライセンス中、学校対企業で7対3の比率で、教育がやや多めとなっている。

 2008年度の年間売上げ実績は、407.3万ドル(約400億円)で、対前年比で16%アップとのことだ。顧客の属する業種は機械系がトップで、次に電子機器、家電・精密機器と続く。この3業種で全体の売上げの7割を占めているという。

ソリッドワークス・ジャパン 代表取締役社長 飯田 晴祥氏:連休中は野球でハッスル! されたとのこと

 「最近は、ここのところの不況で、どこのCADベンダも苦戦していると思います。もちろん当社も苦戦していますが、競合他社と比べれば、まだ良い方です」とソリッドワークス・ジャパン 代表取締役社長 飯田 晴祥氏はいう。

 矢野経済研究所の2009年版調査レポートによると、2007年の機械系CAD業界においてのSolidWorksのシェアは25.6%、その翌年2008年は27.7%、さらに今年の2009年(推定値)は30.9%まで増える見込みだという。調査データを見ると、数量ベースで年々数値が減っている(マーケットが縮小している)のに対し、SolidWorksは着実にシェアを伸ばしている。「他社のシェア(販売数)が減少していることが、SolidWorksのシェアが増加した要因の一部ではないか」(飯田氏)。

矢野経済研究所のデータに基づく3次元CAD市場動向グラフ

 現在の同社製品は代理店経由の販売が主だが、ユーザー会や技術交流会の開催、企業訪問など、直接ユーザーにアプローチする機会を積極的に作っているという。ユーザーによるブログのコミュニティの動きも大変活発だ。そういったこともシェア拡大につながっているのではないかと飯田氏はいう。なお同社はTwitterのIDを持っているが、それはグローバルなもので、日本法人独自のIDを作る予定はないとのことだ。

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