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» 2009年09月29日 00時00分 公開

質問投稿でも設計でも、どうか「目的を明確に!」「技術の森」モリモリレビュー(2)(1/3 ページ)

今回も、設計の際の材料選定関係の投稿をピックアップしたのだけど……質問以前の問題が。「ねえ、いったい何を聞きたいの?」

[小林由美,@IT MONOist]

 「技術の森」の中から“気になる感じ”のQ&Aをピックアップしていくシリーズ、第2回で紹介する投稿も、材料にまつわるものとなったが、機械設計者にとって材料に関する知識の習得は悩ましいもの。今回もまた、熱血設計コンサルタントの國井 良昌氏(技術士 機械部門:機械設計/設計工学)にご登場いただいた。

 そして今回は、技術の森の運営元・エヌシーネットワークの宇都宮 茂氏にもレビューに参加していただいた。同氏は、元生産技術者(自動車メーカー)。かつての現場実経験と、同社の顧客とのコミュニケーションから得られる情報とを掛け合わせての意見にご注目あれ!

 今回もまた「技術の森」内に宇都宮氏執筆のレビューが掲載されているので、本記事と併せてご覧いただきたい。

*本記事内の技術の森の投稿内容の転載につきましては、運営元であるエヌシーネットワークの許可を得ています。



あなたはいったい何を聞きたいの?

 國井氏と宇都宮氏は、今回の企画で初対面にもかかわらず、1つの投稿をきっかけに、話はまるでお互い旧知のであるかのように弾んでいく。それは両氏ともども、日本のモノづくり現場に対して、とにかくいいたいことがいっぱい! だからかもしれない。

國井「この方、午前中に投稿して、15時前には回答をもらっていますね」

宇都宮 茂氏

宇都宮「返事は、答えられる質問であるなら、比較的すぐにきますよ。昼休み前か最中ならなお早いですね。個人の設計事務所の方などは、特に早いです。CADで設計しながら、たまに息抜きでネットサーフィンしますからね。投稿者の中にはすでに現場を引退した方も多くいらっしゃいます。技術の森の利用者(投稿・回答者)の年齢層は、ネットコミュニティにしては高めですかね。40代半ばから60代ぐらいまでの方が多いんですよ」*技術の森は匿名投稿だが、投稿の際には会員登録が必要。よって管理側は登録者のプロフィールを見ることができる

國井「確かに、この投稿も言葉が丁寧ですね。それにこの方も、口語体じゃない」

宇都宮「投稿の仕方について、怒られている方をよくみかけますよ。それから利用者の方々の中には、普段から教えたがりなんだろうなっていう方も多いですね」

國井「しかしそういう、やさしくて親切な人って、出世しないんだよなぁ〜(笑)」

宇都宮「そうですねぇ(笑)」

 両氏が見ている質問が、下記だ。

「金属材料の材質の違いと特徴」

設計で材料選定をしているのですが、どのようなものを使ったらいいのかわかりません。候補はS45C,SCM415,SCM435なのですがそれぞれどのような用途に使用すればいいのか教えてください。

S45CなどS□□CとSCM415などのSCM□□□では材質的にどのような違いがあるのでしょうか?

S45C,SCM415,SCM435はそれぞれどのような特徴や違いがあるのですか?

(硬さや熱処理などでどう違うのか?)教えてください。よろしくお願いいたします。

國井 良昌氏

國井「まず、この投稿の文章では、いったい何を聞きたいのかがよく分かりませんよ。それから、何の設計をしている方なのか。そして、何を検討しているのか。材料なら何でもいいのか……。社内の機密保持の心配があるにしたって、ここでは会社名も実名も出ないのだから、もう少しだけ具体的に情報を出してもいいのになぁ。せめて高速ギアの材料を探しています、とか。とにかく、まずは目的をいってくださらないと、せっかくの親切な回答者の方もうまく答えられないと思うんですがね」

宇都宮「確かにこれではよく分かりませんね。技術の森では、初心者の方の投稿によくありがちなんですよ」

 この姿勢、日ごろの設計業務でも同じではないことを願いたい……。なお宇都宮氏が執筆したコラムで、投稿の作法について、ちょっぴり厳しいアドバイスを述べているので、そちらもぜひご覧いただきたい。

 ちなみに、投稿者が一番の良回答としたのは、下記。

「この森のNo.30026でも似た内容の質問があり、回答しました。

この森の投稿検索で、S45C SCM435 キーワード検索 すべてからの検索で検索しても出てきますので、確認してみて下さい。

さて、

(1)S45C,SCM415,SCM435の硬さや熱処理は、資料(1)素材データベースの機械構造用炭素鋼鋼材(S45C等)の[材料特性]をクリック確認。クロムモリブデン鋼鋼材(SCM415,SCM435)の[材料特性]を確認して下さい。

そして、硬度と引張応力は、ある程度までは比例するので、その資料は、資料(4)硬度換算表データベースを確認下さい。

また、他の材料は、以下URLを素材に関する資料の鉄鋼記号の分類別一覧や鉄鋼記号の見方を参考に、資料(1)素材データベースで確認下さい。

それに、基本的な内容は、

* 機械構造用鋼の選び方と熱処理特性

の特に4.JISによる機械的性質の比較を

* 熱処理のやさしい話

は全般を

確認してみて下さい。」(回答4さん)

「ありがとうございます。大変参考になりました。」(投稿者さん)

 投稿者は、設計の目的はともかく、まず材料の情報入手の基本を知りたかったのかもしれない。一方、回答4の方も、どの設計のケースにでも当てはまるような答えを示すしかないと考えた結果が、その回答内容となったのだろう。

國井「とかく、漠然とした質問には漠然とした回答が返ってくるものですね」

宇都宮「僕が回答者の立場だったら、これ、答えないないなぁ……(笑)。みんな優しいですね」

 この投稿者は、幸いにして親切な回答者に恵まれた。良回答が付かなかった回答についても、つたない投稿文から自分なりに意図を一生懸命解釈しよういう心遣いが伺えた。しかし本来は、投稿者の職場に彼らのような優しき存在がいることがベストなのだろうけれど……。

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