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» 2009年10月06日 00時00分 公開

経済不況の影響知らずの電脳加工屋メカ設計製品/サービスレポート(3)(1/3 ページ)

不景気のあおりを大きく受けている加工業だが、そんな中、ユニークで便利なシステムで前向きに頑張る企業の部品加工サービスを紹介する。

[小林由美,@IT MONOist]

 ある日突然、長い付き合いの加工業者の工場が閉鎖されてしまったとしたら、どうするか。また新しい加工業者を探すことになるが、簡単にいい加工業者を見つけることはできるだろうか。金型試作の費用はグレーだといわれ、高額を吹っかけられる可能性もある。お互いが幸せになれるかどうかは、実際に取引してみないと見えない部分もある……。

 今日の不景気でメーカーの業務縮小や工場の閉鎖が相次ぐ中、堅調に生き抜くだろうポテンシャルを秘めた加工業者が今年の春に日本へ進出した。全世界的な厳しい不況にもかかわらず、ワールドワイドで年商50億円規模を維持しているのが、米国生まれの小ロット生産専門の部品加工カンパニー、プロトラブズ(Proto Labs)だ。

プロトラブズ 代表取締役 矢田 勲氏

 プロトラブズの強さの秘密は、従来の加工業からすれば型破りといえるそのシステムにある。今回は、その日本法人のトップである矢田 勲氏に、同社のユニークな取り組みや、モノづくりの国・ニッポンで不景気に負けないためのヒントなどをお伺いした。

 同社の日本法人は神奈川県海老名市に生産拠点を置く。その付近にはメーカーの工場が多々ある。中小企業が多くを占める加工業は地域に根ざし、その地域を代表するような大手企業に支えられつつ栄えていく。しかし同社にいたっては、海老名が拠点であること自体に、それほど大きなこだわりはない。

電脳加工屋の玄関

 プロトラブズへの見積もり依頼、打ち合わせ、発注の一切は、同社Webサイト経由で行われる。すなわちWebサイトが同社の玄関口、ときに打ち合わせ室でもあって、そこが大きな特徴となる。

 同社のサービスは、樹脂射出成型、切削加工(樹脂とアルミ:アルミは2009年10月1日より開始)の2つがあり、それぞれ専用のWebページが用意されている。顧客の望む方のサービスのページへ行き電子メールアドレスを入力すると依頼用フォームが出てくる。フォーム上部には、3次元モデルを直接アップロードできる欄を備えている。そこに必要事項を記入した後、フォームを送信すると、早ければ数時間、遅くとも24時間以内に部品製作の見積もり回答のWebページが得られるという仕組みだ。見積もり回答の結果ページから、直に発注することも可能。

射出成型の見積もり依頼におけるパーツアップロード画面

 ※画像クリックで拡大します

 3次元モデルを加工業者に送付し、NC加工などでデータを利用することは、従来各社が取り組んできたことだ。同社の場合、そういった見積もり依頼などの処理を単にWeb化したというだけのサービスではない点にくれぐれも注意していただきたい。

 見積もり回答はWebページの形で提供されるが、そこには製作の際の懸念事項の指摘も書き込まれる。また3次元モデルの画面キャプチャに色付けした図も添付され、ビュア越しに3次元モデルを確認することもできる。また納期や個数などの条件をいろいろ変えて、金額のシミュレーションも行える。金型にあまり詳しくないような設計者が作った3次元モデルでも、同社のシステムが製作に不利な条件などを3次元モデル上で具体的に示してくれる。このシステムを使うにあたっては、使用料金、会費などの年・月費用などは一切かからない。

 上記結果は経験豊かなオペレータが導き出したものではなく、コンピュータが自動かつ高速で解析して割り出したもの。その解析には独自で開発したソフトウェア(ソルバも自社製)が使われ、サーバー32台を稼働させ並列計算をしていく。この計算過程と見積もり作成の際、人はほとんど関わらない。

Protolabsの頭脳、サーバーX32台

 この仕組みは、見積もり回答のパターンをいくつか登録しておいて、それに則って割り出すといったものではなく、依頼者から受けとったモデルを見積もる段階で、コンピュータが自動で金型設計をしてしまうという。見積もり後、実際に発注となると、その時点ではすでに設計が済んでいるため、製作から納品までの間が早くなる。

 「早くできるといっても、あくまで条件付きです。何でも作れるわけではありません。逆に、その条件さえ満足してもらえれば、早く納品します」(矢田氏)。あまりに複雑、あるいは特殊な加工を要する部品は、やはりそれなりに日数がかかる。ただしその場合も、理由を明確にしている。同社でスムーズに部品加工を進めるための設計条件(推奨肉厚や肉抜きの方法など)については、同社Webサイト(「設計ガイド」)に詳しく出ている。同社に限定しない一般的な部品加工条件も載っているので、部品加工のことをよく知らない設計者にとってはよい資料・教材にもなりそう。

 見積もりや製作のプロセスにおいて人が関わらないとすると、打ち合わせをしたい場合はどうなるのか。打ち合わせは、やはりWeb上で同社のエンジニアと直接行えるようになっている。ただし顧客が希望すれば、メールや電話でも可能だ。また、大雑把なアイデア段階の設計についての相談もそこでできる。

 データのやり取りについてはSSLを経由するので、データセキュリティについては問題ないと同社はいう。米国本社のシステムでは、IDとパスワードを入力して閲覧するカスタマー専用ページが用意されており、そこで顧客自身の発注履歴などが閲覧可能になっている。日本版でも後々に対応予定とのことだ。

 ABS、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)など世の中で広く使われている材料は同社でストックしている。それで対応できない場合は、顧客に支給してもらうこともある。一般的な熱可塑性の樹脂であれば成型可能だが、非常に高温な熱で溶かさないといけないような特殊な樹脂は除くとのことだ。

 同社のシステムを構成する1つ1つの技術を見ていけば、極めて高度で独特だということはなく、基本的には他社でも使われているソフトウェア技術や装置が応用されているに過ぎない。「ただ、当社のように多くの部分を自動化してというのはあまり聞かないですね」(矢田氏)。

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