デザイン審査の最優秀5校の車両設計第7回 全日本学生フォーミュラ大会 レポート(3)(2/3 ページ)

» 2009年10月14日 00時00分 公開
[小林由美MONOist]

豊橋技術科学大学

 豊橋技術科学大学は昨年、日本大会で初めてとなるカーボンモノコック車両を持ち込んだ。今年は、さらにそれを進化をさせた。

 具体的には、昨年のものと比べ、モノコックの形が変化している。形状そのものは、直線部よりも、曲面が多くなっている。「見た目の美しさを求めるうえで、カウルと一体となった部分が多くなりました」(赤澤 直哉さん)。去年は、四角いモノコックに、CFRP製のカウルを取り付けていた。それが、今年はモノコックがカウルも兼ねている。美観追求のほか、軽量化へもつながったとのことだ。

 またこの車両でユニークな所は、エンジンをドライバーの入るコクピット側から入れること。この狙いについて、赤澤さんはこう話した。「コクピットの開口部は広くて余裕があるので、そこからより安全にエンジンを取り付けられるようにと考えました」。

豊橋技術科学大学

 カーボンモノコックのシングルシーターの場合では、モノコックがエンジン手前で終わり、それ以降はエンジンそのものがむき出しになっている、あるいはスペースフレームを含んでいるなどが一般的とのこと。同校の車両では、エンジン部分までモノコックが来ている。

 「昨年度の車両から、モノコックでエンジン部まで包んでいて、排熱の問題が気になりました。今年度は、エンジン部のモノコックの横の一部を開口し空気を流入させ、車両後部から排出させるという仕組みにしました」(赤澤さん) 。

 またエンジンが人の側にあることや、コクピットに触ってしまうことは不安ではないのかという審査員からの指摘があった。少々危ない構造なので、何らかの対策をしたほうがいいとアドバイスがあった。

エンジン

 今年度のパワートレインは、直線コースでの加速性能を重点において開発をしたという。ヘッド面を研削し圧縮比を上げる、またはカムのプロフィールを変えてオーバーラップを増加させることで、中回転域の馬力の損失がない状態で、高回転域により馬力を上がるような設計を行ったとのことだ。

2速以外は不要

 配点の一番高いエンデュランス審査のコースを想定し、エンジンの各ギアにおける動力の曲線図を描きながら、適切な馬力の範囲について検証をしたという。その結果、2速だけでエンデュランスを走行することが可能と判断し、エンジン部の不要なギアを取り除き、約1.5gの減量をかなえた。


岐阜大学

 チームメンバーが7人という、こじんまりしたチームである岐阜大学は、デザインファイナルに初登場。同校車両の基本コンセプトは「軽量、低重心、省慣性モーメント」。つまり、基本に忠実な小型マシンというわけだ。

岐阜大学

 最大の特徴は、リア周りのパッケージング。横置きのチェーンドライブを採用。一般的なチェーンのように、出力軸から直接デフにチェーンに掛けるのではなく、間に一段ミドルシャフトをかませ、二段で減速しているとのこと。デフを中央にレイアウトすることができ、ドライブシャフトを左右対称にレイアウトできるという。それにより、サスペンションアームを長くすることができ、レイアウトもコンパクトにできるとのことだ。アプライドは、アルミ切削の部品に、CFRPの板を接着および機械締結するハイブリッド構造にし、変形を抑制しているという。ほかにも、CFRPを使った部品がいくつか見られた。「CFRPの部品については、新規に作る技術および設備は当校にありません。市販されているパイプや板材などを活用し、サスペンションアームやロット、ベルクランプなど製作しています」と同校チームリーダーの奥村 駿さんは説明した。

 ベルクランクは、入力部を片持ちにしないようにした。特にフロントはショックアブソーバを床下に置く多く関係で、一般的なロッドでは、このようなレイアウトはできないという。同校はそれをCFRP板にすることで、コンパクトな両端支持を実現させた。

 同校の車両も、さらなる軽量化が課題とのこと。「車両の公式重量は、220kgだったのですが、実際は……カウルが重くなってしまい、もう少し重いです。今年は、CFRPの採用を考えましたが、金銭的な問題と時期的な問題があり、見合わせました」(奥村さん)。コンパクトにまとまっているので、もう少し軽くできれば、よりよい車両になっていくと審査員の講評だった。

空力検証は、実験で

 「8分の1の車両モデルを作り、風洞実験を行い、空力面の検証を行いました。フロント周りの流れとCD値、CL値などを計測しながら、デザインを直しました」(奥村さん)。この実験をするにあたり、同校内の研究室にお願いし、風洞を使用させてもらったという。しかし実物大に換算した風速は、実際の車両の車速には追いついていないとのことだ。

電子制御

 冷却系のウォーターポンプを電動のものに変えたとのこと。エンジンの回転によらず、いつでもクーリングが最適に保たれるようにしたという。また、電子シフタを使い、2ペダルのパドルのみで操作可能だとのことだ。

関連リンク:
岐阜大学「GFR」

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