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» 2009年10月19日 00時00分 公開

経営と基幹業務の現場をつなぐS&OP:世界のバリューチェーンから日本がはじかれる!? S&OPに対応すべきこれだけの理由 (2/4)

[松原 恭司郎/キュー・エム・コンサルティング,@IT MONOist]

「世界の工場」中国ではすでにS&OPが動き出している

 2009年8月に「APICS(米国生産在庫管理協会)が実施しているCPIM(公認生産在庫管理士)資格試験をいよいよ東京でも受験できる」との案内メールが筆者あてに届きました。いよいよ日本でも実施されるのか、と思い、詳細を確認すると、主催者は同協会の中国の提携組織となっており、しかもその中国の組織のWebサイトにはすでに「S&OP立ち上げサービス」の案内が掲載されているのです(注2)。

 グローバルで展開している企業の方ならお分かりになるように、海外の企業と取引する際には、相手の国や企業の要求に合わせた報告や情報提供が必須となりつつあります。場合によっては、こうした情報の提供インフラが整っていないことを理由に、取引先リストから除外されてしまう、といった事態も発生しています。仕組みが欠如しているだけで、いくら優秀な製品を作ったとしても、取引相手として承認してもらえないという恐ろしい現実があるのです。

 この点で、近年急速に力を付けつつある中国企業はいち早くS&OPプロセスを学習し、欧米企業とのビジネスを有利に進めつつあります。先のCPIM資格試験についても、中国はいち早く実施しています。一方の日本は、20年以上も前からAPICSとの提携組織はあったものの資格試験を含めた取り組みに出遅れている傾向にあります。

 本稿の冒頭で、読者の皆さんがいままでS&OPという言葉を知らなかったとしても不思議なことではない、と述べたとおり、生産管理やERPシステムへの取り組みなど、日本では過去の成功体験なども障害となり、深刻に受け止められていなかったという状況があります。

 しかし、いわゆる「リーマンショック」に端を発した不況以降の市場では日本企業も生き残りをかけたグローバルな競争にさらされている点で変わりはありません。より多くの取引先とより有利なビジネスを展開するためにS&OPプロセスをしっかり理解しておく必要があるのです。

 日本でのCPIM資格試験開催が中国の組織によって実施されるという事態に危機感を覚えるのは筆者だけではないはずです。



グローバル・バリューチェーンで「ジャパン・パッシング」の危惧(きぐ)も

 これら欧米のグローバル企業のみならず、世界の工場―中国でもS&OPが注目されている背景には、グローバル・ビジネスが抱える共通の課題への対処があります。

 2008年秋のリーマンショックに端を発した百年に一度という世界同時不況に見舞われ、輸出立国日本の基幹産業である自動車、電機など輸出型の製造業を中心に、急激な在庫調整や生産調整が進み、非正規雇用社員の契約打ち切り、工場の休止、新工場の建設の延期など需給のバランス面で大鉈(おおなた)が振るわれています。

 もし、これらの企業がS&OPプロセスを導入していたら、その対応のタイミングと内容はどうなったでしょうか。

 欧米のグローバル企業による検証済みのプロセスとして、いま、日本企業がS&OPプロセスを学習し、さらに昇華させることの意義は大きいといえます。

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