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» 2009年10月22日 00時00分 公開

モノづくり最前線レポート(13):今すぐ真似したい生産・設計プロセス改善のヒント (2/2)

[原田美穂,@IT MONOist]
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富士ゼロックスの進める標準化と+αのアイデア

 設計ツールにせよ、会計システムにせよ、ベンダ提供の製品は100%自社の業務フローにマッチしているものはほとんどないだろう。それゆえ、導入したツールやシステムが「使えない」という印象を持たれる方も多いのではないだろうか。

 富士ゼロックスでは、この100%に足りない部分に注目した仕組みづくりを目指している。こうした方向性を目指すには、「自社に不足している部分をどのように補うかという点こそが企業の競争力の源となる」という考えが背景にある。標準化可能な部分は標準化し、その上で足りない部分がどこか、それをどう補うかを日々探求しているのが、同社内に作られたワーキンググループによる生産プロセス改善活動だ。

BOMの検索機能を駆使すれば組み付け行程検証も半自動化できる

 例えば、組み付け工程検証のためのデザインレビューにおける工具アクセス性のチェックでは、3次元設計環境を導入したことにより、仮想環境下で事前の検証が可能になったという。「ただし、これでは不十分でした」と富士ゼロックス 生産本部 商品システム生産準備部 生産準備プロセス改革グループのグループ長を務める野村 浩氏氏。

 「同じようなネジを同じような場所に設置する場合でも、機種や場所がことなればそれぞれを仮想ドライバモデルを使って1つずつ検証する必要がありました。実機製作の工数が減ったとはいえ、個別にモデルを用意して検証する手間が増えてしまったのです」。

 そこで、同社の設計部門では、こうした組み付けに関る部品それぞれに、あらかじめ組み付け工具モデルを組み合わせて用意しておく方法を考案した。

 先のネジの例で言えば、通常の設計を行った後、組み付け工程検証の段階で部品「ネジ」を「ネジ+ドライバ」モデルに一括置換するというものだ。

 部品表やPDMがしっかり整備されていれば、どのような大掛かりな製品であっても部品モデルの置換自体は一括で、瞬時に実行できる。このような細かな点の効率化を積み重ねることで、設計効率の向上をはかっているという。

標準化された生産準備フローによるリスク回避と、万が一のフィードバック体制

 同社では、生産準備の段階で、すべてのフローが標準化・自動化されており、また、それをチェックするための会議体も定期的に開催されている。このフローの標準化によって、市場投入前におおよその問題はクリアされるようになったという。

 生産準備のワークフローはすべて社内システム内で手続きが可能だ。担当者は、デスクトップ上で、用意されたさまざまな項目を設定していくだけで標準的に必要になる処理をすすめることができる。

 とはいえ、万が一の不具合発生のリスクを100%回避できるわけではない。そこで、同社では発見された不具合をすべて「過去トラバンク」と呼ばれるデータベースに蓄積、他のシステムからでもトラブル事例を参照できるようにしておくようにしているという。「将来的にはVPSのツールバーから直接『過去トラバンク』に接続できるようにし、利用者の利便性を高めたい」としている。

 将来的には3次元設計ツールであるVPSをカスタマイズし、設計者が画面を切り替えることなくVPS上からトラブル事例データベースにアクセスできるようにする予定だという。

海外生産拠点への技術移管にかかる期間をいかに短縮するか

 同社には、海外生産拠点も多数ある。試作までを日本で行い、量産段階で海外拠点に技術移管を行う場合が多いという。

 現地スタッフを日本に招き、試作機ベースで作業工程を覚えてもらうまでに、従来であれば1カ月程度は必要だったところ、VPSベースで情報を提供するかたちに変更したことで、来日前に作業指示書を動画付きで現地スタッフに渡したうえで、事前に各自で工程について深く理解してもらえるようになったという。

 「日本に呼び寄せたときには、スタッフが自ら手順書を作成、持参してくることも多くなりました。指導も、より踏み込んだところから始められるので、短期間で習得してもらえるようになりました」とのことだ。

 指導用の情報をより具体的かつ詳細に事前に示すことで、いままで日本に招いてから具体的な指示を行わなくてはならなかった行程を大きく短縮することに成功している。

 加えて、作業指示書の制作1つ取っても、自動で作成できる部分が多くなった事で、今まで1枚あたり1時間ほど掛かっていたところを、平均11.4分と、1/6近く短縮できたという。

 生産プロセス改善の効果を実感している同社では、さらに活動を進め、生産準備の上流での適用だけでなく、下流への適用を目指しているということだ。

 標準化のためにワーキンググループを作り、検討を進める作業には、それなりの労力が必要となるが、その成果は、検討に費やした労力を上回るものになっているようだ。

 ◇ ◇ ◇ 

 以上、各社の改善の取り組みを紹介した。富士ゼロックスの事例は、ある程度、製造工程の情報共有が実現している前提が必要となるものもあるが、例えば部品表の検索・置換による一括での組み付け検証などはBOM環境が整備できていれば、すぐにも参考にできるだろう。

 また、3次元設計環境の導入がうまく実現していない場合でも、エムケー精工の取り組み事例は、導入の際に非常に参考になるのではないだろうか。とくに現場の設計者・オペレーターのメンタリティを考慮した同社の方法論には注目したい。

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