方法改善は「4つのポイント」を見逃さないことがコツ!!実践! IE:方法改善の技術(1)(3/4 ページ)

» 2009年10月29日 00時00分 公開

2.3 方法改善のポイント3:実際に作業をする現場の人たちの納得を得る

 新しい改善案を実際に実施する作業者の心底からの納得を得ることが大切で、これができずに押し付けてしまうと、どうしても長続きしなくなります。どのような仕事でも、自分1人で完遂できることはほとんどなく、ほかの人たちの協力関係で成し遂げられます。

 従って、相手との信頼関係なくして仕事が完成することはないといっても過言ではありません。信頼関係を築くには、お互いを理解し、相手の心を動かすことが重要になってきます。

命令は反発のもと

 たとえ内容がどんなにいいものであっても、「このとおりやってください」といったくらいでは人は動いてくれません。それどころか、人間は、他人に使われていると気付くと怒りを感じるものです。「いいことなのだからやってくれるはずだ!」は、指示を出す側の身勝手な論理にすぎません。実行する側が「本気でやってやろう!」という気持ちになるのは、互いの信頼関係と、理解を得ようとする側の情熱が伝わらなければ、そのような状態には至りません。

 権力やトップ(虎)の威を借りて、一気に変えてしまおうとする例を多く見掛けますが、「いわれたとおりに黙ってやれ!」という態度では、いままでの慣れたやり方を否定され、新しいやり方へ強制的に慣れを求められる現場の納得は得られるはずもありません。

 このようなケースは、結局は効果も得られず、元の改善前の方法に戻すしかなくなる場合がほとんどです。長い間、続けてきた方法を、急に新しいやり方に変更しろ、といわれても戸惑ってしまうのは当然のことだといえますし、ましてや、それを強制的に新しい方法に変更しても、実際に作業をする現場の人たちの納得を得ていなければ、改善は決して継続的に実行されていくことはなく、一過性に終わり、やがて元の方法に戻ってしまいます。

 改善によって新しい方法を導入する場合には、現場の人たちの理解と納得を得なければなりません。それには、新しい方法の導入方法のやり方と、実施後のきめ細かいフォローアップが重要です。まず、人の気持ちを大切にする心を忘れないことが大切です。相手の気持ちを無視して、強制的に押し切ってしまおうとすれば、必ず反発を受けてしまいます。「ナゼ、作業方法を変えなければならないのか」「何がどのように変更となるのか」などを、納得がいくように分かりやすく丁寧に説明していくことが大切です。

検証なしの導入は危険

 JIT生産方式や5Sの導入などに頻繁に見られるような、それを適用した場合のメリットやデメリットをあまり検証しないままに、ツールありきの改善に陥ってしまう場合に、このような例が多く見られますので注意が必要です。これでは、自分自身も納得しているような、していないような状態では、とても他人の理解や納得を得ることはできません。

 人に自分の思いを伝え、それを理解してもらうことは、とても難しいことではありますが、一番大切なことは相手を理解することです。人は、自分を理解してくれる人に対して心を開き、説得にも応じてくれます。その次に大切なことは、自分自身の伝えたいという熱意と情熱です。熱意とは、熱心な気持ち、意気込みです。情熱とは、激しく燃え立つ感情のことです。

 人は、しばしば相手の本気や熱意を試していることがあるそうです。つまり、「この人は本気だ!」と分かれば「協力しよう」という気持ちを抱くということです。人は、熱意や情熱だけで動いてくれるわけではありませんが、熱意や情熱を持たない人が、周囲に影響を与え、人の心を動かすことは難しいのではないでしようか。まず、自分自身が仕事に本気で向き合い、本気で何かを変えようとしなければ「熱意や情熱」は、生まれてこないのではないでしょうか。

2.4 方法改善のポイント4:不安定な作業を攻めよ!

 「不安定な作業」が「気に食わない作業」の最も根本的条件でもありますが、これを改善して作業を安定させれば次のような効果が得られるはずです。

  1. 時間のバラツキが小さくなり、結果的に作業時間が短縮できる
  2. 作業が楽になることで疲労が軽減され、ひいては時間が短くなる
  3. 時間が短くなる→少ない人員で作業ができるようになる
  4. 工程間の作業時間のバランスが安定し、モノの仕掛かり量が減り、リードタイムの短縮や手待ち時間が減少する
  5. 作業が安定することで、作業不良が低減される
  6. 複雑な作業動作や、作業のカンやコツが解消されるために、習熟期間が短縮される

 これに対して、安定している作業を改善した場合には「3.時間が短くなる」に効果が出るだけです。不安定な作業を改善する理由の1つはここにあります。

 また、不安定な作業については、現状をよく見極めて、うまく作業が進むような補助的手段か、「気に食わない作業」が少なくなる補助的手段を考えればいいわけですから、現在の作業のやり方を変更される人たちにとってもあまり無理はありません。結果的に改善が比較的受け入れられやすくなります。これが不安定作業の改善を狙うもう一つの理由です。

 すなわち、改善がしやすく、効果も大きいことから、不安定な作業の改善から先に手を打つことが好ましいといえます。不安定な作業を見つけ次第、不安定の原因を分析し、その原因を除去することによって、改善していくことができます。図2は、不安定な作業の一般的な原因を特性要因図で示したものです。

図2 不安定作業の一般的な原因 図2 不安定作業の一般的な原因

 よく言われる「7つのムダ(作り過ぎのムダ、手待ちのムダ、運搬のムダ、加工そのもののムダ、在庫のムダ、動作のムダ、不良を作るムダ)」は、ムダの所在を示しているだけで、それを知っているからといってすぐにムダの排除に取り掛かることはできません。ムダを排除するには、ムダを発見する目とムダを排除するチエが必要です。また、たくさんのムダを抱えている職場はなかなか問題として出てきませんので、にわかにムダ排除とはいかないのが現実です。

 改善を進めていくことで、たくさんの問題点が目に見えるようになって、初めてムダを省き、問題点を改善できるようになるというのが現実的な流れでしょう。

 そうはいっても、何とかしてムダの排除をしていかなければならないわけですが、最も効果的な方法が、この「不安定な作業」を発見して、これを改善し「安定した作業」へと変換していくことです。「不安定な作業」には、たくさんのムダが含まれています。

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