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» 2009年11月10日 00時00分 公開

シックスシグマの落とし穴(1):例題で理解する「そもそもシックスシグマって何だっけ?」 (2/5)

[楊 典子/五葉コンサルティング,@IT MONOist]

シックスシグマって何?

 シックスシグマを簡単にいうと、「顧客満足の向上を目的に、製品やサービスのばらつきを抑えられるように業務プロセスを改善するための、体系だった改革手法」といえます。

 日本で計数的な管理をする場合、多くの場面で「平均値」が評価として使われます。例えば、「製品Aの納期は?」を計算する場合には、これまでの製品A受注から納品までの日数を足し込んで、受注件数で割る、という計算がよく行われています。

しかし、これは顧客の立場で見てみても、本当に必要な情報といえるのでしょうか?

例題:床屋のサービスで考えるシックスシグマの世界

 分かりやすく、ちまたではやっている10分1000円カットハウス(床屋)を例に考えてみましょう。

 あなたが客先回りの空き時間で、10分くらいなら余裕があるので散髪しようとお店に入ったとします。

 ところが、自分を担当する理容師は10分たっても、15分たっても、切り終える様子がありません。一方、隣の席を受け持つ理容師は3分ほどのカットで、次々にお客さまを回しています。結局20分もかかり、次の約束に遅れそうになったため、店長にクレームしてみても、「いやぁ、これはあくまで“平均”ですから」の回答。

 この答えを聞いたあなたは、余程のことがない限り、今後このお店を使うことはないでしょう。

 現実にはこのようなことは起きることなく、どの理容師さんに当たっても、約10分前後で、同じくらいの品質が提供されています。10分1000円のカットハウスが繁盛しているのは、自分が行ったときに、予想される仕上がりで、10分でカットが終わることが、ほぼ確信できるからなのではないでしょうか?

 顧客が一番知りたいのは、「平均がどうか」ではなく、「自分の場合はどうか?」です

 シックスシグマでは、提供する製品やサービスなどのばらつきを最小限に抑え、この要求に応えることを目指しています。先ほどの例でいえば、「カットなら、10分±1分でできます。このお約束が守れないのは、100万回に3.4回です」というのが、シックスシグマの目指すところになります。


100万回に3.4回という重み

 「ばらつきをなくすことが重要なのは分かったけれど、欠陥を100万回のうち3.4回に抑えるというのは、やり過ぎじゃないの?」

 シックスシグマのお話をするときに、よく出されるご質問です。では、100万回のうち3.4回、つまり99.99966%の世界がどういうものか、身近な例でご紹介しましょう。

99%の場合 99.99966%の場合
電気 毎日どこかで15分、停電が起こる 7カ月間のうちどこかで1分、停電が起こる
毎日1本、テレビ番組を録画予約する 3、4カ月に1回、録画がされていないことがある 8年に1回、録画がされていないことがある
毎日メールを50通、受送信する 2日に1通、メールがちゃんと送れなかったり、届かなかったりすることがある 2カ月に1通、メールがちゃんと送れなかったり、届かなかったりすることがある

 毎日15分も停電が続いたりしたら、もちろん大問題になりますね。録画予約の場合、3、4カ月に1度の不具合が起きるようであれば、間違いなくメーカーはクレームの嵐になるでしょう。メールに至っては、99.99966%の品質でも、インターネット接続サービスプロバイダーに対するお客さまからの評価は下がってしまうものと思われます。

 当然ながら、改善対象となる業務プロセスの特性や、重要性などにより、この目標が高過ぎるのか、低過ぎるのかという基準は変わってきます。ただ、「やり過ぎ、というわけでもないな」ということは、感じていただけたのではないでしょうか。

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