MATLABなら、コード1つで分散配列が可能Parallel Computing Toolboxの新バージョン

» 2009年11月18日 00時00分 公開
[小林由美,@IT MONOist]

 マスワークス ジャパン(MathWorks Japan、正式名称「マスワークス合同会社」)は2009年11月18日、「Parallel Computing Toolbox」(以下、PCT)の新バージョン 4.2を発表した。MATLABとの直接連携するための分散配列構文を追加した。2009年9月、米MathWorks社が米国で発表した並列計算対応のMATLAB(マットラブ、マトラボ)とSimulink(シミュリンク)のプロダクトファミリー新製品「リリース2009b」(以下、R2009b)のアップデート分だ。

 「Toolbox」とはMATLABの拡張機能パッケージのことで、ある機能に必要なMATLAB関数のセットが含まれている。PCTは、並列計算のためのパッケージで、デスクトップパソコンでも並列計算を可能にする製品だ。

製品名について:「リリース2XXXx」=「リリース+発売年+発売時期(春がa、秋がb)」「R2009b」は2009年秋発表の製品群、「R2009a」は2009年春発表の製品群となる。



 R2009bではマルチプロセッサやマルチコアなど高度なハードウェアを実装したデスクトップパソコンの性能を生かし、大規模なデータの計算効率をアップさせる機能を強化している。現在はローカル内の最大8コアまで対応している。今回は、その機能拡張を生かしたMATLABとPCTとの連携をさらに強化するということで、並列計算の改良と分散配列のプログラミングの簡易化を図った。新しいPCT 4.2では、プログラム内に「distributed」というコードを1つ書き込めば、データ配列を複数のクラスタに分け、ローカル内の複数のワーカー(計算プロセス)に振り分けての計算が自動で行える。既存のアルゴリズムについても、分散化をするためにプログラムをわざわざ大きく書き直す必要がない。

分散配列のコード:乱数のコードに分散配列のコードを加えるだけ

 また、この分散配列を可視化したグラフをMATLABの作業ウィンドウ内で自動でプロットする機能も追加した。

 PCT 4.2は、統計解析用「Statistics Toolbox」、通信処理用「Communications Toolbox」と併用することも可能だ。

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日本法人の立ち上げは順調

 米MathWorks社の日本法人であるマスワークス ジャパンは2009年7月1日に設立。それまでサポートを委託していたサイバネットシステムからの業務引き継ぎも順調だったという。またサイバネットシステム内のMATLABサポートエンジニアの移籍の了解も得たとのことだ。

 日本法人立ち上げを助けるため、米国本社からもエンジニアが頻繁に来日し、日本法人のエンジニアたちの教育に当たったという。

 同社社長 梨澤 利隆氏は、「立ち上がりは、非常に順調。いまの時点では、業績の数字も予想どおり。これまで以上に、米国との情報パイプを太く、その流れも早くしつつ、顧客からの改善提案もたくさん取り込んで対応している。その結果が、いま出てきている」と述べた。

 同社のユーザー向けイベントの集客も順調で、特にWebセミナーが好評だという。今日の不景気による各企業の出張禁止命令が原因ではないかと梨澤氏はいう。

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