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» 2009年11月30日 00時00分 公開

セールス&オペレーションズ・プランニングの方法論(1):経営と現場の情報は「超」シンプルにつなぐべし (3/3)

[松原 恭司郎/キュー・エム・コンサルティング,@IT MONOist]
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「当たり前」をベストプラクティス化できるS&OP

 皆さんは、「キスの法則」をご存じでしょうか? 

 ここでいう「キス」は口づけのKISSと同じつづりを書きますが、意味は“Keep it simple, stupid !”つまり「何事も単純明快に」という標語の略語です(本稿1ページ目の図1を参照)。

 MRP(資材所要量計画)やMRP II(製造資源計画)の生みの親であるオリバー・ワイト氏は「精緻さの極みが、単純である」という言葉を残していますが、S&OPが欧米の製造業や流通業で広く普及してきた背景には、S&OPプロセスが当たり前のことを当たり前に行うという、至極自然でシンプルであることに起因しているといっても過言ではないでしょう。

「次世代S&OP」への移行が始まっている

 前稿「世界のバリューチェーンから日本がはじかれる!? S&OPに対応すべきこれだけの理由」でご紹介したように、欧米のグローバル企業では、グローバル化やITの進化に対応したいわゆる「次世代S&OP」への移行が数年前から始まっています。

 筆者は複数のグローバル企業の日本の組織の担当者と討議する機会を持ってきましたが、あるグローバル企業の「次世代S&OP」の概要を示した資料を拝見したときの率直な感想は「至極当たり前の、実にシンプルなプロセス」というものでした。

 これほどシンプルなビジネスプロセスが、前出の「SCOR」を含めて、ベストプラクティスとして紹介されているのなら、S&OPは、まさにガーウッド氏がいうように「nエグゼクティブマネジメントにとって、概念的にはシンプルでありながら最もパワフルなツールの1つ」ということになるのです。

S&OPプロセスの導入

 ガーウッド氏は、また「S&OPはプロセスであり、ソフトウェアのパッケージやテクニックではありません。S&OPプロセスの有効性は、このプロセスを管理するにあたって、譲渡できない原則と役割を理解しているエグゼクティブのリーダーシップに懸かっているのです」と指摘しています。

 つまり、S&OPのキーは「人」そのものにあるのです。それも、マネジメントのリーダーシップや機能部門のミドルマネジメントのチームワークといった「組織資本」にあるのです。

S&OPプロセスは人が根幹

 S&OPプロセスは、クロス・ファンクショナルな「人」が集まるコミュニケーションと意思決定の「プロセス」であり、ITを含む「ツール」によって支援されるプロセスです。

 図3は、S&OPプロセスを、これを構成する「人、プロセスそしてツール」の3つの要素で表したものです。

図3 人間系の正しい判断を支えるものこそがS&OP 図3 人間系の正しい判断を支えるものこそがS&OP

 「仏作って魂入れず」という言葉がありますが、これをS&OPに当てはめれば、「プロセス」と「ツール」が仏(仏像)であり、「人」が魂ということになります。S&OPプロセスのステップを設計したり、支援ツールを導入しさえすれば、S&OPがうまく動くと考えてはならず、最も重要なのは、トップのリーダーシップであり、S&OPプロセスの参加者の持つクロス・ファンクショナルなマインドとコミュニケーション能力の養成にあるのです。

◇ ◇ ◇

 本連載の第2回以降では、今回ご紹介したS&OPプロセスを使って、どのようにして、さまざまな経営課題を解決していくかについて見ていくことにしましょう。


より詳しくS&OPを学ぶための参考文献

 S&OPが1988年に提唱されてから20年余りが経過しますが、ここ5年間程、グローバル化の進展などから、英語圏ではS&OP関連書籍が増えてきています。日本語でS&OPを包括的に取りまとめた書籍としては、拙著『S&OP入門 グローバル競争に勝ち抜くための7つのパワー』日刊工業新聞社、2009年6月があります。


筆者紹介

松原 恭司郎
キュー・エム・コンサルティング有限会社 取締役社長

公認会計士/情報処理システム監査技術者
現在、中央大学専門職大学院(国際会計研究科)特任教授、東北福祉大学(総合マネジメント学部)兼任講師、BSCフォーラム会長、ERP究推進フォーラムアドバイザーなどを務める。
国際会計事務所系コンサルティング会社などを経て1992年より現職。バランス・スコアカードを活用した戦略マネジメントと業績管理、ERP、S&OP関連のコンサルティング業務に従事。
 S&OP/ERP/MRP?関連の著訳書に、『S&OP入門』、『図解ERPの導入』、『キーワードでわかるSCM・ERP事典』(編著)、オリバー・ワイト著『MRP?は経営に役立つか』(訳)、アンドレ・マーチン著『実務DRP』(訳)日刊工業新聞社などがある。またBSC関連の著訳書に、『バランス・スコアカード経営』’00日刊工業新聞社、ニーブン著『ステップ・バイ・ステップ バランス・スコアカード経営』(訳)’04、『バランス・スコアカード経営実践マニュアル』(共編著)’04、『税理士の戦略マップ』(共編著)’07中央経済社などがある。


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