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» 2010年01月06日 00時00分 公開

シックスシグマの落とし穴(3):どうすればプロジェクトを阻む要因を排除できる? (3/3)

[楊 典子/五葉コンサルティング,@IT MONOist]
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3. Analyze(分析)フェイズに潜む障害

 Aフェイズは根本原因の可能性がある要因:潜在的根本原因(Potential Root Cause)を洗い出し、根本原因を特定するためのフェイズです。

 根本原因が特定できれば、9割がた成功も見えてきたという状態になるのですが、残念ながらこの根本原因の特定に失敗してしまい、良い結果を生み出せないケースも多々あります。

 根本原因を見誤ってしまう要因として代表的なのが、潜在的根本原因と潜在的解決策を取り違えてしまうケースです。ここでは、潜在的根本原因と潜在的解決策の取り違えという障害とその対策について見ていきましょう。

事例3:特性要因図と根本原因の特定

 欠品率低減プロジェクトも順調に進み、現状の業務プロセス製品別の欠品率やそのバラツキ、欠品の発生しやすい時期の分析、現状の業務プロセスフローなどを通じて、現在の状況が明確に見えてくるとともに、これが根本原因かな? と思える潜在的原因がいくつも考えられるようになってきました。

 K課長はメンバー全員とこれまでの分析結果を振り返り、考え得る潜在的原因を、ブレインストーミングのように、自由に挙げてもらうことにしました。

 ツールとしては特性要因図を活用し、情報をまとめていったのですが、情報システム部のメンバーから潜在的原因として「需要予測のシステムがない」という意見が挙がり、ほかのメンバーもそれに深く同意しました。

 K課長も納得し、次の意見に移ろうとしましたが、シックスシグマの研修で「根本原因が特定するまで、解決策は決して考えないこと」と念押ししていたことを思い出し、この意見が解決策「需要予測のシステムを導入する」の裏返しであることに気付き、軌道修正が必要なことを認識しました。


特性要因図 特性要因図

対応策:原因と対策の見極め

 K課長は、メンバー全員にきちんと理解してもらうために、「それは違う」とはいわず、情報部のメンバーに対し、次のように質問をしました。

「需要予測のシステムがないために、どんな問題が起きていますか?」

「その問題の原因となっているものには、ほかに何が考えられますか?」

「(挙がった原因に対して)なぜそれが起こったと思いますか?」

 情報部メンバーからは、潜在的根本原因として「営業から見込情報をもらう頻度が月次である」という項目が挙げられました。K課長はこれを例に取り、もう一度「原因」と「解決策」との違いをメンバーに説明し、根本原因を特定することの大切さと、この時点で解決策に走ってしまうことの問題点について、チームの理解を得ることができました。

ポイント:このフレーズが出たら注意!

 シックスシグマのプロジェクトで最も起こりやすく、結果に大きな影響を与えやすい障害が、「潜在的根本原因と潜在的解決策の取り違え」です。リーダーが十分に注意を払わないと、取り違えが発生したことにも気付かずに、先へと進んでしまい、決して効果的とはいえない解決策を導入することが発生します。

 過去の経験を照らし合わせると、シックスシグマプロジェクトに限らず、優秀なビジネスマンほど、「早く課題を解決し、行動に移せる答えを手に入れたい」という衝動に突き動かされている方が多いように思います。しかし、結果的には、本当は大きな問題ではないことのために、貴重な時間とエネルギー、そして費用を費やすことも少なくありません。

 限られた経営資源を最大限に活用するために、ここはぐっと抑えて、根本原因を特定し、少ないコストで大きな結果を得られるようにするのが、肝要になります。

 Aフェイズまでの間に、形を変えて投げ込まれがちな「解決策」を見分けるために、注意が必要なフレーズをいくつかご紹介します。

「……をする必要があると思います」

「……するためには……をするべきです」

「……がしたいなら……しなくてはいけません」

 こうした言葉が聞こえてきたときには、潜在的根本原因と潜在的解決策の取り違えが発生している可能性がありますから、十分に注意しておく必要があります。

4. まとめ

 今回はD、M、Aフェイズで起こりがちな障害と、それを乗り越えるためのポイントについて紹介しました。

 今回紹介した対応策は、利害関係者に配慮して協力を得る、チーム学習を促進する、解決策に飛び付かずに原因と価値を見極めるなど、シックスシグマプロジェクトだけではなく、通常業務やほかのタイプのプロジェクトでも活用できるものになっています。ぜひ一度お試しください!


 次回(第4回)は最終回として、残るI、Cフェイズでの障害と対応ポイント、そして現在シックスシグマの進化系として活用され始めている「リーンシグマ」についてご紹介します。

筆者紹介

楊典子

五葉コンサルティング株式会社 代表取締役 楊 典子

 外資系コンサルティングファームにて大手自動車、機械、部品、消費財メーカーなど、多くの製造業のサプライチェーンマネジメント改革プロジェクトにて、コンサルティングに携わる。

 外資系医療機器メーカーにてシックスシグマを学び、業務プロセス改革、シックスシグマの展開、経営品質管理を行う。その後、五葉コンサルティング株式会社を設立し、代表取締役に就任。

【主な資格】物流技術管理士、SAP社SCM認定コンサルタント、シックスシグマグリーンベルト、アクションラーニングコーチ、中小企業診断士




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