組み込み技術者育成のいま 〜はこだて未来大学の取り組み〜Windows Embeddedセミナーレポート(2)(2/2 ページ)

» 2010年01月13日 00時00分 公開
[西坂真人,@IT MONOist]
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地元企業相手の実践的な学習

 このような2年間を踏まえて、今年度(2009年度)に行っている課題が「デジタルサイネージを用いたリアルタイム情報配信システムの構築」だ。

 「今年度はハードウェアの設計など、これまで時間がかかってきた設計部分を大きく減らした。ハードウェアの設計開発がない分、システム開発・運用を確実にやることが狙い。ハードウェアとして日立アドバンストデジタルのデジタルサイネージを提供してもらえることになり、これを使って何かやろうということになった。また、いつまでも先生相手では成長しないので、お客さんとして地元企業をターゲットにした」(長崎氏)。

長崎 健氏 はこだて未来大学 情報アーキテクチャ学科 准教授の長崎 健氏

 地元で観光遊覧船「ブルームーン」を運営するマルカツグループ魚長食品をお客とし、ブルームーンの集客向上とマルカツグループ関連施設のプロモーションを目的としたデジタルサイネージ活用をテーマとした。

 「地元企業をターゲットにしたとき、注意するのは“社会の仕組みを理解する”ということ。これは将来、社会に出たときにも役立つだろう。また、先生と学生の関係だと、どうしても甘えが生じてしまうので、ドライにやってもらえる外部の企業を相手にすることで、コミュニケーションの訓練にもなるのではと考えた」(長崎氏)。

 企業(お客)との実際のコミュニケーションも、最初の2回は先生が同行したが、3回目以降は学生のみで話し合いを進めたという。

提案したデジタルサイネージ活用システム 提案したデジタルサイネージ活用システム

 「壁にぶつかって脱落したグループもあった。8月には無線LANの接続不良があったり、船内に置いたセンサーノードに遊覧船の艦長が立腹されたりといったトラブルもあったが、学生にはいい経験になったと思う。実践的IT人材育成講座も3年目になって、これまでの学生がよく手伝ってくれた。学生に指導する際の心掛けとして注意したのは、

  • 適度な失敗をさせる
  • あまり口を出さない
  • 放置はしない
  • 先生以外の人の意見を求める場を作る
  • 背伸びをさせすぎない

ということ。今年度の経験を踏まえ、現在次年度案を検討している」(長崎氏)。

そのほかの講演

サムシングプレシャスの古賀 信哉氏ソフトウェアテスト技術振興協会(ASTER)理事の安達 賢二氏 (左)サムシングプレシャスの古賀 信哉氏は「Armadillo-500で広がるWindows Embedded CE6.0の開発」と題した講演を実施。Armadillo-500用に同社が無償で提供しているWindows Embedded CE 6.0 BSP(Board Support Package) の紹介や、組み込み機器開発を促進するWindows Embedded CEの魅力について、事例を交えて紹介した/(右)「北海道におけるソフトウェアテストの人材育成」と題して講演を行ったのは、ソフトウェアテスト技術振興協会(ASTER)理事の安達 賢二氏。組み込みソフトウェア不具合の事例などからソフトウェア品質の現状を紹介するとともに、ASTERの活動目的やその内容、ASTERが考えるテストエンジニア育成のシナリオなどが語られた

渡辺 登氏 「組込みスキル標準(ETSS)の活用事例」について語ったのは、情報処理推進機構(IPA)ソフトウェア・エンジニアリング・センターの渡辺 登氏。組み込みシステム開発現場におけるスキルの可視化による人材育成や活用の事例を紹介し、ETSSの現場活用が進んでいることをアピール。ETロボコン2010で初開催が予定されている北海道地区大会の説明も行った

松岡 正人氏太田 寛氏 (左)マイクロソフト OEM統括本部 OEMエンベデッド本部 シニアマーケティングマネージャの松岡 正人氏からは、Windows Embeddedの概要と技術ロードマップの説明、そして組み込み開発者コミュニティ「エンベデッドフォーラム」の紹介が行われた/(右)マイクロソフト デベロパー&プラットフォーム統括本部 UXテクノロジー推進部 エンベデッドデベロッパーエバンジェリストの太田 寛氏から、Sensor and Locationプラットフォームのデモンストレーションも行われた

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