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» 2010年01月14日 00時00分 公開

組み込み企業最前線 − アクテル −:アクテル、“真の”Flash FPGAでPLD市場を広げる (2/2)

[石田 己津人,@IT MONOist]
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狙うは3つのアプリケーション領域

 では、アクテルは真のFlash FPGAでどのようなアプリケーション領域を狙っているのか。それを同社は「システム・クリティカル」「ポータブル」「システム・マネジメント」と3つに分類している。

 システム・クリティカルは、前述したとおりアンチヒューズFPGA製品ですでに実績を築いている航空、宇宙、防衛に加え(2009年第3四半期で同社売上高の43%を占める)、車載やセキュリティなどの分野を含み、ProASICの適用を目指していく考えだ。ProASICは、米航空業界の品質保証基準「DO-178B」に含まれる、ASIC/FPGA論理回路向けのガイドライン「DO-254」の認証を取得したり、米国の自動車メーカーとサプライヤが設立した「Automotive Electronics Council」による車載電子部品の品質基準「AEC-Q100」のGrade1/2認証を業界ではじめて取得したりしている。アンチヒューズFPGA並みの信頼性が確認されるなら、書き換え可能なFlash FPGAへの置き換えや新規採用は進むだろう。


市場に合った製品の提供 図3 市場に合った製品の提供。アクテルがFlash FPGA製品で狙う3つのアプリケーション領域。それぞれで競争優位性を持つ

 次のポータブルは、まさにTrue Flashがもたらす低消費電力、省サイズの利点が最も生きるアプリケーション領域である。ポータブルといっても、携帯情報端末、デジタルカメラ、電子ブック端末などコンシューマ向け機器のみならず、ハンディ端末、血糖値計などの携帯型医療機器、スマートメーターといった産業向け機器も含まれる。要するに「電池駆動で待機時間が長い機器に適する」(ムバラック氏)のである。

 例えば、コンシューマ向けの適用例では、電子ペーパーのデファクトといえる米イーインク製「Vizplex」のディスプレイ制御部品にProASICが選定され、実際、Vizplexを搭載するソニーの電子ブック端末などで使われる。こうしたデザインインの獲得により、数年前は数%しかなかった“コンシューマ”の売上高構成比が直近では15%へ上昇している。「低消費電力FPGAへのニーズは相当に強い。ProASIC3 nano、IGLOO nanoはリリースされたばかりだが、ユーザーの関心は高い。デザインインがはじまれば、構成比はもっと上がるだろう」(ムバラック氏)。nanoは50種類以上のパッケージが1ドル以下で提供され、大量生産のコンシューマ機器にも向く。一方、産業向け機器も狙い目である。この種の機器は元来、ASICを起こして使うほどのロット規模に達しない場合が多く、FPGAの適応性が高い。

 最後のシステム・マネジメントは、ミックスドシグナルFPGAのFusionが担うアプリケーション領域だ。AD変換器、電圧・電流入力などアナログ回路とデジタル回路を混載したFusionには、モータ制御やロボットなど産業用制御機器、医療機器、通信機器など幅広い用途があり、ASIC/ASSPのみならず、MCUのアプリケーション領域にも食い込みそうだ。2008年には、通信機器向けボード規格「xTCA」に対応した制御部品で知られた米ピジョンポイントを傘下に収めたことから、キャリアグレード機器への適用も広がる。アクテルの売上高に“コミュニケーション”が占める割合は現状1割もないが、今後は、この分野で売上高の半分近くを稼ぐザイリンクス、アルテラとの競合が激しくなることも予想される。

利害が一致するアームと協業

 このようにアクテルのFlash FPGAは、幅広いアプリケーション領域で成長する可能性を秘めているといえるが、その成長を英アームとの協業が加速させそうだ。アクテルのFlash FPGAでは、CPUコアとしてアームの「Cortex-M1」が搭載可能である(一部のデバイスは非対応)。Cortex-M1は、アームのMCU向け32ビットCPUコア「Cortex-Mシリーズ」の1つとして、アクテルとアームが共同でFPGAに最適化させたものだ。ライセンス/ロイヤルティ不要で、小ロットなアプリケーションでもARMコアが使える利点がある。ムバラック氏は「携帯電話以外の組み込み領域でARMコアの浸透を狙うアームとわれわれの利害は一致している」と話し、アームとの協業をテコにFlash FPGAを伸ばしていく考えである。

 ザイリンクス、アルテラの存在があまりにも大きいため気付きにくいが、PLD業界ではFlash FPGAという新しい潮流が起こりはじめているのかもしれない。アクテルはそのリーダーであることは間違いないだろう。

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アクテルジャパン

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