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» 2010年02月01日 10時00分 公開

SCMだけでは収益は上がらない!! 現場の数字を掌握するマネジメントとはコンサルタントが語る「収益重視のマネジメント」

SCMの取り組みが収益と結びつかない理由は何か。現場担当者が調整に奔走する一方で、経営的視点からは企業の収益性への貢献が限定的であるとの見解が広まりつつある。SCMのこうした課題を打破し、業績に貢献するサプライチェーン管理の方法について、サプライチェーンマネジメントに詳しいサプライチェーンカウンシル(SCC)日本支部のS&OPコンソーシアムでアドバイザーを務めるKAI Management Research Institute代表 貝原 雅美氏と日立東日本ソリューションズ ビジネスソリューション本部 主任技師 壁谷 武憲氏に話を聞いた。

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 日本の製造業におけるSCM(サプライチェーンマネジメント)の取り組みが定着して、もう10年以上がたつ。多くの企業ではSCMを推進することにより、在庫圧縮や製造リードタイムの短縮などに一定の効果を上げてきた。しかし昨今、特に世界同時不況を契機に、SCMの限界が見え始めてきたと考える経営者も多いようだ。SCMの限界を突破し、経営により直接的に貢献するサプライチェーンの仕組みとして最近にわかに注目が高まっているのが「S&OP」(Sales & Operations Planning)だ。

 S&OPとはいったいどのようなもので、どんなメリットを企業にもたらすのだろうか?それを実現するためには具体的にどのような取り組みが必要なのだろうか? サプライチェーンカウンシル(SCC)日本支部のS&OPコンソーシアムでアドバイザーを務めるKAI Management Research Institute代表 貝原 雅美氏と、日立東日本ソリューションズでS&OPソリューションに取り組む ビジネスソリューション本部 主任技師 壁谷 武憲氏に話を聞いた。

企業の収益と乖離(かいり)するSCM

 S&OPとはそもそも、どのような課題の解決を目指すものなのだろうか? 貝原氏は、これまで行われてきたSCMの取り組みには、2つの課題があると指摘する。

 「多くの製造企業ではSCMにもう10年以上も取り組んできており、需給調整や在庫調整などについては、すでにギリギリのレベルまで高めることに成功している。しかし、SCMの本来の目的であった、企業の収益をどう上げていくかということよりも、コストをいかに下げるかという部分に焦点が当たってしまっているのが現状だ。現在の日本におけるSCMは、収益や売り上げの世界と大きく乖離かいりしてしまった。そしてもう1つの課題は、現在のSCMが経営環境の急激な変化に対応できない点だ。ちょっとした需要変動などの“小波”には対応できるが、世界同時不況や大幅な為替変動などの“大波”に対しては対応する術を持たない」(貝原氏)


サプライチェーンカウンシル(SCC)日本支部 S&OPワーキンググループリーダー KAI Management Research Institute代表 貝原 雅美氏 サプライチェーンカウンシル(SCC)日本支部 S&OPワーキンググループリーダー KAI Management Research Institute代表 貝原 雅美氏
富士通株式会社において、主に製造業向けの製造・生産管理、ERP、SCMの導入、開発のコンサルティングに従事。その後米国i2テクノロジーズ社にて、SCMのコンサルティングに従事し、コンサルティング、マーケティング、セールスの各ディレクターを歴任。i2退社後リスク管理、内部統制の外資系日本法人立ち上げを経て独立、現在はITを活用した経営改革、SCM改革、業務改革等の研究、支援を行う。現在、KAI Management Research Institute代表。サプライチェーン・カウンシル日本支部S&OPワーキンググループリーダー。

 いままでのSCMへの取り組みは収益や売り上げに結び付いてこなかった理由は何か? 貝原氏は次のように説明する。

 「会社組織内のそれぞれの立場によって“指標(=KPI)”がばらばらなことが原因の1つ。営業部門にとっての指標は、たとえどんなモノを売ろうとも、とにかく金額を達成すること。一方生産部門はというと、売れるかどうかは別として、モノを言われただけ言われたとおりに作ることが指標になっている。このように部門が異なると指標も異なり、その結果として部門ごとの行動がまったく異なってしまっている」

 壁谷氏も、SCMソリューションを提供する側の立場に長く身を置く経験から次のように指摘する。

 「例えば、製造現場の担当者がいくらSCMへの取り組みを一生懸命やっても、最終的な人事査定は『きちんと納期を守ってモノを作れたか』で決まってしまう。日々の業務が収益に貢献できたかということについては、客観的に判断できる仕組みがない。そのため、製造現場では『どうしたら収益を高められるか』という発想がなかなか出てこない」

SCMの限界を突破するための方法論「S&OP」

 S&OPとは、このような経営と現場の間での数字や指標のギャップを埋め、事業全体の状況を定量化された形で可視化することにより、経営の意思決定の迅速化を図るマネジメント手法である。1980年代後半にアメリカで提唱された方法論で、需要計画、生産計画、供給計画などといった現場のサプライチェーン情報と、経営や財務の情報を同期させるためのマネジメントの仕組みと具体的なプロセスを定義したものだ。

 サプライチェーンの現場の情報は、「SKU(Stock Keeping Unit:在庫維持単位)」と呼ばれる在庫管理単位の数量で管理される。一方、経営の情報は金額で管理される。S&OPプロセスの実現にはまず、この「数量」と「金額」という異なる数字の間をひも付け、いま現場で行っている業務が収益の金額にどう反映されるのか、一目で把握できる仕組みを作り上げる必要がある。

 S&OPプロセスではさらにこの仕組みを使い、現場の実績や計画が事業計画とどの程度整合性が取れているのか、月次単位でレビューしつつ将来予測を立てるプロセスが定められている。数量と収益の金額のすり合わせをきめ細かく実行し、事業計画を見直すことで、経営面では次のような効果があるという。

 「まず予算を立てて、その達成度合いを半期や四半期ごとにチェックして……という現在のやり方では、予算の達成状況や業績はふたを開けてみるまでまったく分からない。これを、S&OPのように定常的にチェックする仕組みを確立すれば、予算達成度合いの確度を上げたり、予算未達のリスクを減らすことができる。経営層から見ると、S&OPのこうした効果に対する期待感が大きい」(貝原氏)

 また、S&OPプロセスは、ただ単に数字をチェックするだけではない。もし計画と実績が乖離かいりしていた場合や、経営環境が大きく変動した場合にどのような施策を打てばいいのか、あらかじめ需給調整などについて複数のシナリオを策定しておくよう定めている。こうした取り組みは、経営層のみならず現場のSCM担当者にも大きなメリットがあるという。

 「現在、ほとんどのSCM担当者は社内外との調整会議に日々追われ、疲弊しきっているのが実情だ。しかしこうした調整業務は、事業計画に基づいたシナリオがあらかじめ用意されており、リスクマネジメントもきちんとできていれば、さほど大変にはならないはず。こうした面でも、S&OPへの期待は大きい」(貝原氏)

グローバル化の流れで求められるS&OPへの取り組み

 昨今、製造業におけるグローバル化の流れはさらに加速し、ある程度の規模の企業ともなれば、生産や販売の拠点が世界中に散らばっているのはごく当たり前のことになった。そこで問題となるのが、国内の本社と海外拠点との間の情報流通をいかに密に、かつ正確に行うかという点だ。こうした課題に対しても、S&OPは大きな効果を発揮するという。

 「これまでのSCMの取り組みでは、海外拠点のモノとお金の出入りは見えていたが、その中で実際に何が行われていたかはまったく見えていなかった。海外拠点で生産計画や販売計画の数字をどのようにいじっているかすら見えない。S&OPの仕組みを全社的に導入すれば、こうしたことが可視化されるという期待もある」(貝原氏)

壁谷 武憲氏 日立東日本ソリューションズ ビジネスソリューション本部 主任技師 壁谷 武憲氏

 株式会社日立東日本ソリューションズにて主に生産計画パッケージの開発および導入に従事し、現在は、販売計画も含めたSCM全般のソリューションに従事。4月1日に発売するS&OPツール「SynCAS/Coordinator」の開発ではリーダーとして製品開発を推進。

 日立東日本ソリューションズは、こうした課題に早くから取り組んできたベンダの1社だ。同社は1992年から製造業向けに生産計画、調達計画などの計画系ソリューションを提供してきたが、1997年からは国内製造業が次々と海外に生産拠点を設立するのに合わせ、海外工場の生産計画やグローバルSCMに対応したソリューションを提供してきた。壁谷氏も、これまでのグローバルSCMが抱えていた課題を次のように指摘する。

 「個々の国や地域によって事情が異なるので、本社ですべての海外拠点を画一的に統括するというのは現実的ではないかもしれない。ただし、各拠点から最終的なアウトプットの数字がちょっと出てくるだけでは、本社も拠点内で何が起こっているのかが分からず、経営の打ち手がどうしても後手に回ってしまう。経営陣が見て判断できる数字が、定常的に上がってくる仕組みがあれば、もっといろいろな経営判断が迅速にできるようになるはずだ」

 同社では、こうした課題を解決するソリューションの1つとして、需要予測とそれに基づく販売計画の策定を支援するツールを提供しており、これまでに多くの実績を積み重ねてきた。しかし、これからの企業経営には、こうしたソリューションだけでは必ずしも十分ではないという。

 「世の中の変化の幅が小さいときはいいが、今日のように大きな変化が次々と起こる時代には、過去の実績データに基づいた予測は当たらないことも多い。こうなってくると、変化にいち早く対応するための情報収集力と意思決定の早さが重要になってくる」(壁谷氏)

 経営の意思決定のスピードを速めるには、現場の状況と予算がどの程度乖離かいりしているのかを素早く把握し、なおかつ取るべき施策のオプションをあらかじめ準備しておくことが必要になる。これはまさに、S&OPが提唱する方法論そのものだといえよう。

S&OPツール「SynCAS/Coordinator」とは

 実際に日立東日本ソリューションズでは、S&OPの実践を支援するシステムの開発に取り組んでおり、その第一弾製品として2010年4月1日に「SynCAS/Coordinator」というソフトウェア製品をリリースする。この製品は、現場レベルの計画と実績の数値を予算の単位で集計して、予算と計画を一目で対比できるようにした計画ツールである。

 本製品では予算ベースの金額だけでなく、現場が利用する集計単位や指標も扱うことができる。また、金額と数量の数値を換算することも可能だ。こうした機能を活用することによって、予算の金額を在庫管理単位や品目単位で、なおかつ地域や販社ごとに分けて現場が普段扱っている粒度の情報まで落とし込むことができる。これで、予算と計画の同期が取れているかどうかを常に確認できるようになるわけだ。

 さらに、もし予算と計画が乖離かいりしてしまった場合に実行する施策のシナリオを、あらかじめ複数登録しておくこともできる。後は、同製品を利用して予実と予測値のチェックを毎月行っていけば、S&OPのプロセスをすぐ実践できるようになる。まさに、これまで述べてきたS&OPの方法論を実践するためにうってつけのツールだといえよう。

 このような集計作業には、SynCAS/CoordinatorのようなITツールの活用が不可欠だ。考えてもみてほしい。社内の全部門、全製品、全品目の情報を集め、予算と対比させたうえで毎月レポートとして提出することが、人手で可能だろうか? これが例えばSynCAS/Coordinatorのようなツールを使えば、ほぼリアルタイムの数値をいつでも確認できるようになるのだ。

 貝原氏も、こうしたITツールの導入効果は高いと述べる。

 「S&OPのような取り組みには、まず第一に予算と実行のベースとなる計画を同一のものに保つための取り組みが必要。それがないと、いつまでたっても事業計画の歯車と実行計画の歯車がかみ合わない。それをかみ合わせるための仕組みの1つが、SynCAS/CoordinatorのようなITツールだ。こうしたツールを導入すれば、少なくともすぐに予算と実行の乖離かいりが見えるようになるので、それに対する対応策を迅速に実行できる。そういう意味での即効性は、非常に高いと思う」(貝原氏)

S&OPが切り拓く経営の未来

 さらに、S&OPが経営にもたらすメリットは、これまで述べてきたような事業内容の可視化や意思決定の迅速化だけにはとどまらない。貝原氏によると、最終的には「経営のエンジニアリング」とでもいうべき効果をもたらすという。

 「ある事象が起きたときに、それに対する原因分析を行って、あらかじめ準備しておいたシナリオから適切なものを選んで実行する。これが経営の意思決定になるわけだが、ここからさらに、そのシナリオを実行した結果を分析して、ナレッジとして蓄積しながら次のシナリオ策定に生かしていく。このような仕組みが定型化されると、経営の意思決定のかなりの部分が自動化できるはず。当然、組織としての意思決定のスピードは上がるし、競争力も強化できる。経営がやる仕事は、もっと本当に重要な部分だけに集中できる。具体名への言及は避けるが、海外ではすでにこうしたことを実践してトップに立った企業がある」(貝原氏)

 日本の製造業がグローバル市場における欧米やアジア企業との競争で勝ち残るためには、S&OPへの取り組みはもはや避けては通れない状況になりつつあるようだ。本来の教科書どおりのS&OPは全社レベルでの大掛かりな取り組みになるが、まずは手を付けられるところからスモールスタートすることも可能だという。その中でもまずは第一歩として、SynCAS/CoordinatorのようなITツールを活用して、予算ベースでの事業内容の可視化から始めてみてはいかがだろうか。


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提供:株式会社日立東日本ソリューションズ
アイティメディア営業企画/制作:@IT MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2010年3月24日