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» 2010年02月10日 00時00分 公開

成功するプロジェクトの進め方と「リーンシグマ」の波シックスシグマの落とし穴(4)(2/3 ページ)

[楊 典子/五葉コンサルティング,@IT MONOist]

2.Control(定着) フェイズに潜む障害

 Cフェイズは、Iフェイズで行ったトライアルを全体に展開し、新しいプロセスが狙いどおりの効果を生み出していることを確認して、今後の管理をプロジェクトチームからプロセスオーナー(該当業務プロセスの責任者)へ引き継ぎを行っていく最後のフェイズです。

 改善プロジェクト終了後に現場で大きな不満を生みがちな、「新しいプロセスで問題が出たけど、誰に相談していいかが分からない」「環境が変わってプロセスに変更を加える必要が出たけど、プロジェクトチームは解散していて、誰もリードしてくれない」といった状況は、Cフェイズでしっかり引き継ぎを行えていなかったことが要因になっています。

 ここではCフェイズで起こりがちな「当事者意識の弱いプロセスオーナー」に起因する障害と対策について見ていきましょう。

事例2:あいまいな引き継ぎが生むプロジェクト遂行後のダレ、揺り戻し

 小さなトラブルへの対応やプロセスの修正を行いながら、新プロセスの導入から2カ月間が過ぎ、欠品率も計画にほぼ沿った形で低減できました。役員会での結果報告も終え、社長からもチームに対し、ねぎらいと感謝の言葉をもらうことができました。

 チームもこれで解散ということになり、営業部長や生産部長など、新プロセスに関係する部門長への報告会を開くとともに、資料などの引き継ぎを行いました。

 K課長も「ようやくこれで肩の荷が下りた」と、自分の仕事に打ち込み始めたのですが、2〜3日に1件ほどの頻度で、営業部員から新しいプロセスについての問い合わせや、レポートツールの修正についての相談などが入り続けました。「できることはしてあげたい」という気持ちと責任感で、丁寧に対応を続けていたのですが、3カ月ほどたったころに、「営業週報の項目や運用方法を変えたいという」営業所長からの要望をもらい、これは片手間ではできないと、プロジェクトメンバーだった営業部員に相談しました。

 すると、営業部分の新業務プロセスは営業部長に引き継いだはずでしたが、細々とした対応が苦手な営業部長は、新プロセスに関する話があると「K課長に相談して」と対応していることが、彼の話から見えてきました。ほかにも、営業週報の提出率が少しずつ落ちていること、営業所長によっては、週報提出を指導していないことなども判明しました。


対応策

 営業週報の精度の確保は、プロセス全体にかかわる大事な要素のため、K課長は営業部門への新プロセスに対する責任と役割を再度明確にし、継続的な改善が図れるように、引き継ぎを行うことにしました。

 まずは営業部長と、現在起こっている問題や、このまま放置した場合に与え得る影響について共有し、その重要性を認識してもらうことから始めました。そのうえで、継続的に改善を図っていくことが営業部全体のためにもなるという視点で、新プロセスで営業部門に大きく関係する「営業週報レポート」「売り上げ見込みレポート」について、部内の責任者を選定することにしました。

 K課長は各責任者に丁寧な引き継ぎを行うとともに、営業部長が担当者決定を営業部全体に伝えるよう、働き掛けを行いました。

 また同じ失敗をしないために、営業部以外にも同様にそれぞれのプロセスに対する責任者を選定してもらい、3カ月に1度は新プロセス会議を設けて、互いの情報交換と、全体的な見直しを行うように設定しました。

 これらの対応策によって、現場の人々にとっては、この新プロセスに関連した問題点や要望を挙げやすい環境が整い、将来的に発生する環境や条件の変化に対してプロセス自体を見直すことができる体制が構築できたといえます。これで本当に、K課長はこのプロジェクトが自分の手から離れたことを実感できました。

ポイント

 業務プロセスの改善は、瞬間的にではなく、その後長期にわたって効果を生み出すものでなくては意味がありません。そのためには、プロジェクトからいかにスムーズに各業務プロセスの責任者にバトンを渡すか、そして将来的に間違いなく発生する、業務プロセスの変更やさらなる改善のためにどのような仕掛け(モニタリングやアクションの仕組み)を用意しておくかということが非常に重要になります。

 今回は引き継ぐ側に問題のあったケースを取り上げましたが、プロジェクトチームが「後はよろしく」と、引き継ぎや仕掛けづくりも中途半端な状態で現場に丸投げしてしまうという光景も、残念ながら目にします。せっかく生み出した成果をより継続的に高めていくためにも、ここは手を抜かずに、緻密(ちみつ)過ぎるほどに計画を立て、丁寧に引き継いでいくことが、プロジェクトの効果と最終的な評価を決定付ける、最後の関門となるでしょう。

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