「電子スロットルが加速方向に誤作動することはない」――トヨタ自動車豊田社長が説明

» 2010年02月17日 00時00分 公開
[Automotive Electronics]

 トヨタ自動車は2010年2月、都内で記者会見を開催し、同社が販売する自動車のリコールの状況などについて説明を行った。会見において、同社社長の豊田章男氏(写真1)は、自動車のアクセルにおける加減速をつかさどる電子スロットル制御システムの安全性について説明した。

 豊田氏は、「当社の自動車に搭載されている電子スロットル制御システムには、多くのセンサーによる幾重ものフェールセーフシステムが組み込まれている。万が一何らかの異常がシステムに起こった場合でも、アイドリング、もしくはエンジン停止などの状態に戻るような制御を行うようになっている。また、製品開発における試験の過程においても、決して加速の方向に制御することはないように、電磁波や振動の存在するさまざまな環境下で、厳しい基準による試験を行っている。今後は、外部の調査機関による実証検査を行ってさらなる信頼確保につなぎたい。この調査結果については、後日公表する予定だ」と語った。

写真1 トヨタ自動車の豊田章男氏 写真1 トヨタ自動車の豊田章男氏

 トヨタ自動車の電子スロットル制御システムでは、2台のECU(電子制御ユニット)を使って互いの動作を監視することにより、フェールセーフを実現しているという。同社副社長の佐々木眞一氏によれば、「もし、1台のECUが減速の制御を行おうとし、もう1台のECUが加速の制御を行おうとしている場合には、必ず減速の制御が優先されるようになっている。電磁波や衝撃などの外乱に対しての試験も十分に行っている。例えば電磁波については、欧州の安全基準の2倍の強度の電磁波に耐えられることを確認している」という。ただし、同氏は「現在、顧客がアクセルによる加減速の異常を感じるという問題が起きているわけだが、顧客による自動車の操縦方法や周辺環境などに関する情報を収集する能力や体制が当社に不足していた。そのため、電子スロットル制御システムの不具合が加減速の異常ではないことを、それぞれの顧客にきちんと説明できていなかった」との課題を挙げ、「このような課題を解決するための品質向上活動に積極的に取り組んでいきたい」という見解を示した。

 また、今回の会見に併せて、今後同社が世界で生産するすべての自動車について、ブレーキオーバーライドシステムを搭載することを明らかにした。ブレーキオーバーライドシステムとは、アクセルとブレーキが同時に踏まれた場合に、かならずブレーキの制御を優先するシステムのことである。佐々木氏は、同システムの搭載の目的について、「今回のフロアマットやアクセルペダルの不具合のように、予期しない加速が起きた場合にブレーキによって確実に減速することを可能にするためだ」と述べている。

 さらに、同社が販売するほとんどの車種に搭載されているイベントデータレコーダ(EDR)を、より積極的に活用する方針も示した。EDRは、事故や不具合が発生した際に、車両の速度やブレーキの作動の有無などを記録する装置である。これまで、トヨタ自動車が、EDRに記録された情報を調査するのは、政府機関などから要求があった場合などに限られていた。今後は、不具合の原因究明などのために、同社が自ら積極的にEDRの記録情報を活用していくという。

(朴 尚洙)

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