資料から見るERP導入の“大きな忘れもの”セールス&オペレーションズ・プランニングの方法論(4)(1/3 ページ)

本連載では、日本企業の経営者が直面している重要な経営課題を取り上げていますが、今回は経営を支援するIT(情報技術)面の課題として、巨額のERPシステム投資を経営に生かす方法を取り上げて、S&OPプロセスがどのような役割を果たすのかについて筆者の意見をご紹介します。

» 2010年03月24日 00時00分 公開

はたしてERPパッケージは日本企業に浸透したか

 ERP(Enterprise Resource Planning;企業資源計画)パッケージが、世界のベストプラクティスを数多く搭載しBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)を実現する、まさに「夢の統合型基幹業務システム」として日本に紹介され、ブームを巻き起こしたのが1990年代の中盤のころでした。

 あれから15年あまりが経過したいま、はたしてERPパッケージは日本企業に浸透したでしょうか。ERP研究推進フォーラム(注1)が実施し、筆者もアンケート設計委員会の委員を務めたERPアンケート調査2009年版を参照しながら、以下にその実態について明らかにしていくことにしましょう(参考文献1)。

 まず図1をご覧ください。

図1 ERPパッケージの導入状況 図1 ERPパッケージの導入状況

 日本の2009年時点のERPパッケージ(注2)の導入状況は、現在運用段階にある企業が35.6%に上り、導入段階にある企業を含めると実に41.3%にも及んでいます。

 依然として「関心がない」とする企業が3割存在するものの、この全体的な数値を見る限りは、ERPパッケージは企業アプリケーション・システム構築の大きな選択肢として日本市場に受け入れられているように思われます。

ERPパッケージに潜む不満の声:ERPパッケージユーザーの八割が不満を抱いている

 約4割の企業がERPパッケージを採用(導入中を含む)している一方で、図2によれば、現在利用中のERPパッケージの「変更を検討」ないし「変更を決定した」とする企業が11.3%あり、「現在利用中のERPパッケージに不満はあるが継続して使う」の68.7%を合わせれば、ERPパッケージに不満を抱いている企業は、なんと80%にも達しているのです。

図2 現在利用中のERPパッケージに対する考え 図2 現在利用中のERPパッケージに対する考え

ERPパッケージの変更・中止の理由

 「ERPパッケージの変更・中止の理由」を見てみると、30%を上回る企業が回答している理由として

  1. ベンダに支払う年間保守費用
  2. バージョンアップに伴う投資額

 という、ERPパッケージのコストの側面と、

  1. 現パッケージが自社業務に合わない
  2. ユーザー部門の改善要求への対応
  3. 狙った効果と実績のギャップ

 という、ERPパッケージの機能や導入効果に関する問題の双方が指摘されています。

ERPパッケージに対する満足度は平均以下

 先の調査によれば、「ERPパッケージ導入済み企業のシステム化に対する満足度」は、総合評価で1.89ポイントと、満足度は平均を下回っており(注3)、通常の製品やサービスなら市場に生き残ることさえ困難な状況にあるのです。

ロックインされているERPパッケージのユーザー

 これほど満足度が低いにもかかわらず、図2にあるように約7割近いユーザーが「現在利用中のERPパッケージに不満はあるが継続して使う」と回答しているのはいったいなぜなのか不思議に思われるはずです。

 筆者が考えるに、これはERPベンダに「ロックイン」されているにほかなりません。初期導入ユーザーに多い、大規模なカスタマイズ(パッケージ機能に対する追加、修正)や、SEやユーザーのパッケージ固有の言語や機能への慣れ、そして構築したデータの移管の難しさなどが足かせとなって、不満があっても変更できないでいるという事態が推測されます。

経済危機でERPパッケージに逆風が吹いている

巨額のERP投資金額

 10年以上前から、ハードウェア、ソフトウェアそしてサービスを含むERPパッケージの導入コストは、上場企業であればひと声10億円は下らないといわれていました。

 ERP研究推進フォーラムによる先の調査によれば、ERPプロジェクトに関する累積投資額として、1億円未満が46.8%と最も多く、1億〜10億円が28.8%、10億円以上が、24.5%となっています。また、100億円以上というものが1.4%も報告されています。

 同調査には、中堅規模の回答企業(売り上げ高が300億円未満の企業が、回答企業の34.2%含まれている)と、同市場をターゲットとしたパッケージが含まれていることを考慮するなら、前述の話がプルーフされたことになるでしょう。

IT投資の代表格ERP

 IT投資予算額に占めるERP投資の割合について見てみると、「ERPへの投資割合が最も高かったIT投資予算額10億〜20億円未満の企業」で、4億7000万円で、IT投資予算額に占めるERP投資の割合は、平均約3割にも達していることが分かります。

知的資本への投資の縮小

 リーマン・ショック以降の世界的な経済不況を受けて、上場企業を中心にコスト削減の嵐が吹き荒れ、中でも「3K」と呼ばれる交際費、交通費、広告宣伝費に加えて、人材育成やIT投資が大幅に削減されています。

 当然のこととして、いまやIT投資の代表格となっているERP投資も激減しており、地球規模での主要なERPパッケージベンダやそのパートナー企業の業績を直撃しています。


注1:ERP研究推進フォーラムは1996年にERPの普及を主な目的として、ユーザー、ベンダ、パートナーの三者が一堂に会して設立した調査・研究機関です(http://www.erp.jp/)。
注2:同調査において「ERPパッケージ」とは、調査用紙の参考資料に掲載された製品リストに含まれるパッケージ(63製品)を指す。
注3:評価は4段階の満足度指数で表され、満足度の高い方から順に、非常に満足=5、どちらかといえば満足=3、あまり満足していない=1、まったく満足していない=0ポイントの重み付けをしたもので、平均ポイントは2.25ポイントとなる)。


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