測定/キャリブレーションプロトコルとは?測定/キャリブレーションプロトコルXCP入門(1)(2/3 ページ)

» 2010年04月09日 00時00分 公開
[庄井美章(ベクター・ジャパン),@IT MONOist]

機械的キャリブレーションと測定

 機械的制御を行っているキャブレーターの場合、混合気や燃焼後の排気ガスなどをセンサで測定することでキャリブレーション結果を知ることができます。つまり、キャリブレーションを行うときには、必ず測定が必要になります。

 機械的キャリブレーションにおいては、測定とキャリブレーションは1対であり、キャリブレーションした結果の指標を求めるために測定が必要であるといえます(図3)。

測定とキャリブレーションの関係 図3 測定とキャリブレーションの関係
※ベクター・ジャパンの資料を基に作成

ECUにおける測定

 電子化されたECU内のソフトウェア制御においても測定は必要ですが、要求される測定項目が追加されます。前述の機械的キャリブレーションと同じく、センサを使った最終的な制御結果の測定に加え、制御しているソフトウェアの内部値の測定が必要になります。

 このソフトウェアの内部値の測定を行うことで、制御そのものの妥当性を調べることができます。さらに、ECU内のソフトウェアでは混合気制御だけではなく、燃焼制御など、ほかの制御を組み合わせた統合的な制御を行っています。この場合、ソフトウェアの内部値である制御間の受け渡し値を測定しない限りその妥当性を知ることはできません。

 測定がキャリブレーションと同じ状況で必要とされ、かつECUソフトウェア内部に対するアクセスが必要とされることから、キャリブレーションツールには必ず「測定ツール」としての機能が含まれるようになり、測定もまた“プロトコル化”され、統一されることになりました。

測定/キャリブレーションプロトコルへ

 測定とキャリブレーションが、同じ状況で同一対象へのアクセスを行うということから、これを実現するための機能を持つ、測定/キャリブレーションプロトコルが誕生しました。

 本連載の主役であるXCPとは、測定/キャリブレーションツールとECUソフトウェア間の通信を行い、キャリブレーションするパラメータおよび内部測定値へのアクセスを可能にするプロトコルです。また、ツールとソフトウェア間のCAN(Controller Area Network)やFlexRay、Ethernetなどのあらゆる通信媒体において利用できるように汎用化されたプロトコルになっています(図4)。

XCP 図4 XCP
※ベクター・ジャパンの資料を基に作成

測定/キャリブレーションプロトコルの歴史

 汎用的な測定/キャリブレーションプロトコルとして、最新のものがXCPであり、現在そのバージョンは1.1となっています。

 ここで、XCP誕生の歴史的背景を簡単に紹介しておきます。

(1)CCPの誕生

 キャリブレーションするパラメータおよび内部測定値へのアクセスを可能にするためのプロトコルとして、まず「CCP」プロトコルの最初のバージョン(Version 1.0)が、1992年に規格化されました。CCPとは“CAN Calibration Protocol”の略であり、CANを使った測定/キャリブレーションプロトコルという意味になります。CCPは、その後、機能が追加されてバージョンアップし、1999年にVersion 2.1になりました。これがCCPの実質的な最終バージョンであり、それ以降の機能追加はXCPに引き継がれることになりました。

(2)CCPの普及

 CCPは、CANの普及とともに広く使用されるようになりました。その背景は、ECU内部のソフトウェアへアクセスするための通信媒体としてCANを使うことで、低コストで汎用性のある測定/キャリブレーションが実現できたからです。実際、車載ネットワークに接続されているECUにCCPドライバを組み込むだけで、すでに設置されているCANを使ったECUの測定/キャリブレーションが可能となります。

(3)CCPからXCPへ

 CCPの普及後、ECUの性能の向上とともに測定/キャリブレーションに対する要求仕様が拡大していきました。例えば、CCPが規格化されたときに想定されていなかった測定速度や測定点数の拡大があります。さらに、CANだけではなく、FlexRayなどCAN以外の車載ネットワークが規格化され、実際に搭載されるようになったこともその理由の1つです。

 これらを踏まえ、CCPの仕様を引き継いだうえで新たな機能を追加し、さらには異なるネットワークでも対応できる汎用的な唯一の測定/キャリブレーションプロトコルとして、2003年にXCPのVersion 1.0が規格化されました。

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