Googleも想像しなかった“先を行く”Android展開組み込みAndroidレポート(2/2 ページ)

» 2010年05月12日 00時00分 公開
[石田 己津人,@IT MONOist]
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未来のAndroidデバイスに向けた取り組み

 基調講演の最後では、新しい「Future System WG」の立ち上げも発表された。

 新WGは近未来のAndroidデバイスに盛り込む要素技術をリサーチするのが役割である。コーディネータにはインタラクティブブレインズ会長兼CTOの武田 政樹氏が就任する。武田氏は、ナムコ(現:バンダイナムコゲームス)においてアーケードゲーム「リッジレーサー」の3Dエンジンやカスタムチップを開発したり、最近ではDeNAの「モバゲータウン」で使用する3Dアバターシステムの開発に従事していた。

 そのFuture System WGが進めるのが「DENSUKEプロジェクト」である。DENSUKEとはAndroid搭載のペット型ロボット。基調講演では、プロジェクトが構想する“Future Life with DENSUKE”をアニメーションビデオで紹介した。その生活空間では、DENSUKEをインターフェイスとして人々がデジタル技術を自然と使いこなす。例えば、手首の“バイタルリスト”がリアルタイムに計る脈拍・血圧をDENSUKEがモニタリング。異常値に達するとほえて本人や周囲に知らせる。“DENSUKEハウス”がホームサーバの役割を果たし、ユーザーが見たい写真をDENSUKEに音声で伝えると自動でテレビに映し出される……。そのほか、非接触で操作可能な“Androidパッド”、Androidスマートフォンと交信する“Androidサイネージ”“Androidビークル”などのアイテムがビデオに登場していた。新WGでは、AR(Augmented Reality)、BMI(Brain-machine Interface)、3D映像など新しい要素技術と既存の技術・サービスをAndroidデバイス上で融合し、新しいユーザーエクペリエンスを実現させていく考えだ。

Future System WGが推進する「DENSUKEプロジェクト」の概要 画像8 Future System WGが推進する「DENSUKEプロジェクト」の概要

最新のAndroidデバイスが多数!

 Android Steps Ahead 2010/Tokyoでは、OESFメンバーによるブース展示も行われた。基調講演で紹介された最新のAndroidデバイスの多くが実際に見られるとあって盛況だった。そこで目に付いた製品・技術も紹介しておこう。

 基調講演で取り上げられたミックウェアのPNDは、ITRON/Androidのハイブリッド環境で動作し、仲介にウェルインテクノロジーの仮想化技術「Embedded VRT」を使用。カーナビはITRON、ネットワークアプリケーションはAndroidと使い分けていた。ウェルインテクノロジーは「精緻な制御が必要な部分には、リアルタイムOSで既存資産も多いITRONを使いたいという機器メーカーは多い。ITRON/Androidのハイブリッド環境なら、Androidデバイスで問題となる起動の遅さも解決する手立てはある」と話す。

ITRON/Androidのハイブリッド環境で動作するミックウェアのPND 画像9 ITRON/Androidのハイブリッド環境で動作するミックウェアのPND

 家庭で使うAndroidデバイスにおいて、DLNA(UPnP)によるデジタルAV機器連携は欠かせないポイントになる。富士通ソフトウェアテクノロジーズは、OESFが策定した拡張ミドルウェア「OESF DLNA extension」に含まれるDLNAプレーヤ機能「OESF DMP」と自社ライブラリ製品「Inspirium HomeNetworkライブラリ for AV」の両方を実演展示していた。OESF DMPは市販Androidスマートフォン、Inspiriumはデモ用オーディオ装置に搭載、DLNAサーバ(Windows 7機)の音楽データをスムーズに再生していた。同社では「機器メーカーはオープンソースのOESF DMPを使うこともできるし、サポートが必要な場合はわれわれのInspiriumを使うこともできる」としていた。

 KDDI研究所が実演していた「携帯電話・STB連動アプリケーション」も注目を集めていた。これは、電話の発信・着信により遠隔にある2台のSTBをひも付け(発信・着信情報をSTBへ自動的に通知)、クラウド上のコンテンツサーバを介してコンテンツを共有したり、動画ストリーミングを可能にするアプリケーションである。通常の動画共有サービスと違い、携帯電話で簡単に共有設定が行えるところがミソだろう。セイコーエプソングループのアヴァシスが開発したBluetooth対応印刷アプリケーションも使い勝手がよかった。Bluetooth対応プリンタにOPP(Object Push Profile)形式でファイルデータを送信して印刷を行うため、当然プリンタドライバが不要になる。

Bluetooth印刷に向けたAndroidアプリケーションを展示するセイコーエプソングループのアヴァシス 画像10 Bluetooth印刷に向けたAndroidアプリケーションを展示するセイコーエプソングループのアヴァシス


 組み込み機器へのAndroid適用は緒に就いたばかりだが、ビジネス・技術の企画は百花繚乱(りょうらん)だ。OESFマーケティングWGコーディネータの岩井 一裕氏は次のように語る。「Androidを生み出してくれたGoogleには非常に感謝している。ただ、そのGoogleでさえも、日本のOESFを中心に起こっている組み込み機器への展開は想像していなかっただろう」。まさにAndroid Steps Ahead 2010/Tokyoは、組み込み分野におけるAndroidの可能性を十分に示していた。

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