製造業×品質、転換期を迎えるモノづくりの在り方 特集

品質要件マネジメント手法とフロントローディング開発いま考えるべき品質マネジメント改革(2)(2/6 ページ)

» 2010年05月25日 00時00分 公開

ハード・ソフト統合型製品における、上流フェイズでの仕様整合の重要性

 制御システム開発では、設計詳細度に対応するテストフェイズを実施する、いわゆるVプロセスが採用されることが一般的です。ハード・ソフトが統合化された電子制御製品の場合は、要求定義や構想設計段階ではハード・ソフト共同で仕様検討しますが、それ以降は総合テストまで、ハード・ソフト個別のVプロセスで開発が同時並行的に進行します(図2)。

 このプロセスの場合、仮に要求定義や仕様設計段階で、ハード側とソフト側の認識に誤解や整合不足があると、Vプロセスの途中段階(個別に詳細設計している段階)では、要件認識のギャップに気が付かないまま、詳細化されていきます。要求定義で決定された仕様がテストされるのは、総合テストの段階ですから、要求定義で作り込まれた不具合は、かなり後工程になってから発見されることになります。仮に実装テストや製造ライン検査で発見できなかった不具合は、市場に出てからのユーザー利用時に発生してしまいます。機構的な不具合の場合は目視で確認できるのですぐに対策できるのですが、電子制御に起因する不具合は、問題を再現できないことも多く、本質的な原因追究に時間を要することが多いとされています。開発上流段階での、仕様や品質特性の整合がいかに重要であるかが、ご理解いただけるかと思います。

図2 ハード・ソフト統合製品の開発プロセス(2つのVプロセス) 図2 ハード・ソフト統合製品の開発プロセス(2つのVプロセス)

複雑な電子制御製品において、早期問題発見が難しい理由

 開発上流段階で仕様や品質特性を十分に整合してから開発を進めることが重要であることを説明しました。しかし、大規模かつ複雑な電子制御製品の場合、設計要素間で、仕様や品質特性を十分に整合してから開発に着手するのは難しいと考えられています。

 なぜなら開発手順として、システム設計⇒ユニット設計⇒回路・メカ・ソフトなどの要素設計の順にブレークダウンしながら進行しますので、設計が詳細化されるまで、仕様や品質特性の整合はできません。

 また、ユニット設計や要素設計段階に入ると、それぞれの要素が異なる部門や企業、異なった地域で設計が進行する場合が多く、システムやユニットは最終組み立てメーカーで設計、メカ部品は国内のサプライヤで設計、ソフトウェア設計は海外でオフショア開発、といったような例が典型です。このような場合、出張やTV会議が必要となり、頻繁に仕様整合することが実質的に難しくなっています。

 このような理由で、複雑な電子制御製品において、要求定義や仕様設計などの開発上流段階で、ハード・ソフト間の仕様や品質特性の整合を十分に図ってから開発を着手することの難易度は高まっていると考えられます。

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