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» 2010年05月31日 00時00分 公開

いま知っておくべき中国の製造業事情(2) :中国国内生産・販売における障害とその対策〜クラボウの中国進出 (2/3)

[藤井 賢一郎/アスプローバ,@IT MONOist]

繊維産業の先進的な業態転換

 繊維産業といえば日本の認識では、比較的早い段階から中国に工場を持ち、廉価な製品を日本国内で販売している印象があります。事実、普段われわれが日本で購入する服飾のほとんどが中国製です。機械産業からはややずれてしまいますが、中国進出の課題にいち早く取り組んだ業界の事例として参考になる部分が多いと思います。

 今回はシステム事業部門が当社の日本の代理店でもある倉敷紡績株式会社(クラボウ:http://www.kurabo.co.jp/)の倉紡貿易(上海)有限公司 波多野副総経理にお話を伺いました。

 クラボウといっても、当社のようなシステムを取り扱う事業部が存在したり、事業自体、繊維だけでなく幅広く手掛けています。繊維事業を中核としてエレクトロニクス分野、バイオマス・リサイクルや排ガス処理施設などのエンジニアリング分野、自動車内装部材や建材に活用されるウレタンフォームなどを扱う化成品分野など、同社の事業は多岐にわたります。

 以下は、当社からの質問への波多野副総経理の回答を基にまとめています。

◇ ◇ ◇

1. 御社の中国工場の生産物が、日本への輸出から中国内地販売に転じた時期はいつごろでしょうか?

 繊維事業と非繊維事業では状況が異なるため、個別にお話しします。

 まず、繊維事業については、クラボウは中国に自社工場として浙江省桐郷市に縫製工場を、広東省珠海市にデニムの生地工場を持っています。縫製品のOEMビジネスについては、2009年から中国アパレルの製品縫製を開始しています。また、デニム工場については、2010年(今年)から本格的に中国内販を開始しました。

 次に、非繊維事業については、生産工場としては広東省広州市にウレタン工場を持っています。この工場は日系自動車メーカーの広州工場と連携して動いています。このため基本的に中国内販が100%ではありますが、相手先は日系企業です。


2. 中国内地販売にシフトするに当たり、製造面・販売面でご苦労された点は?

 上記非繊維事業のウレタンの部分は内販ですが、意図される質問内容と異なるので割愛し、以下では繊維事業についてのみ述べます。

 まず製造面では、いろいろな問題がありますが、企画立案から商品化までの取り組み型でビジネスを考えることが多い欧米・日本と違い、すぐに現物を求めるスピード感に対応するのは非常に苦労しています。

 加えて、時として、いま生産している商品(ほかのお客さまから発注をいただき、生産している上市前の商品)の情報や生産のノウハウに関する情報の開示を簡単に要求するといった意匠に関する意識の低さが目立ちます。この問題は販売面でも同じ傾向にあります。この2つが現状の大きな問題であると認識しています。

 一方の販売面については、売掛金の回収が非常に困難な場合が多くあります。また、契約書文言の解釈に関する部分でも事後で問題が発生するケースが多く苦労します。特に中国企業とのビジネスでは連絡時に電話が多用されるため、後々になって「いった/いわない」のもめ事が多発します。価格面より国情、商慣習に起因する部分の苦労が多くあります。


3. 中国の国内繊維産業との差別化という意味でどのような作戦を展開しているでしょうか。

 われわれの扱う天然繊維中心の素材では、以下のような取り組みを行っています。

  • オリジナル技術で生産された商品での差別化
  • 各種の情報やお客さまが小売りされる際まで踏み込んだ企画の提案、コンサルティングなどの無形付加価値の提案など

4. 今後の中国市場の伸長は、どのように予測していますか。その予測に対する具体的な施策はなんでしょうか?

 中国はますます資本主義化が進むが日本のような市場にはならず、アメリカ的な生活レベル格差を容認する形で進むと考えています。この場合、衣料品マーケットも安価品と高級品の2極化の様相を呈すると思われ、そうなれば欧米へのあこがれが強い中国では高級品は海外製と一部の中国製、中級品は中国製中心、安価品はほかのアジア地区、アフリカ製と中国内陸製となると予測できます。従って、一般の中国製とは価格では競争できないわれわれは、

  • 富裕層のネットワーク上にある中国アパレルへの積極的な販売
  • 欧米著名アパレルへの販売

をコアにしなければならないと考えています。


5. 御社の中国市場におけるコンペティターはどういった企業になるでしょうか。

 現在のところ、日系繊維メーカー、繊維を得意とする商社全般になるでしょう。最近、中国繊維メーカーの企画提案力も向上してきているので、われわれはさらなる有形・無形の付加価値を創造し提供していかなければならないという危機感はあります。


◇ ◇ ◇

生産計画ソフトウェアの使用方法の変化と工場の立ち位置の変化連動

 当社の場合、多くの日系製造業の中国工場とは、守秘義務を締結しているため具体的な企業名などの公表は難しいのですが、生産計画業務という製造業の頭脳にも当たるシステム機能を担っていると、その工場の位置付けが徐々に変化していることに気が付きます。

 一番端的な傾向として、これまで日本本社に対する納期回答に利用されていた生産スケジューラが、自社工場内のディスパッチングに利用される例が出てきていることが挙げられます。

 このような工場は、自社工場内の生産品種が増えたこと、日本本国以外の仕向け先ができたと想定されます。実際に、システムを見てみると、品目マスタに完成品が登録されたり、仕向け先に中国の企業名が入ってきていたりします。

 さらに進んだ工場では、中国国内からの部材手配の拡大に応じて、資材納期の管理やコストシミュレーションを行う例も現れてきています。

 これら内製内販に移行しつつある工場で共通に見られる問題は、中国国内企業への部材手配の場面では品質ではなく納期の問題が課題となっていることです。せっかくのビジネスチャンスに資材が間に合わなければ製造できませんし、かといって、ボリュームゾーンで販売していくうえで、日本から高価な材料を入手するわけにはいきません。おのずと、工場内での安全在庫のポイントが高くなり、資材ショートを防止することになります。

図3 典型的な日本本社工場の生産計画システムと中国工場の生産管理による納期回答 図3 典型的な日本本社工場の生産計画システムと中国工場の生産管理による納期回答(SAP、Asprovaによる日程管理を行っている場合の例

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