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» 2010年06月04日 00時00分 公開

競合他社の戦略を読み解くパテントマップ〜知的財産権情報の分析とビジュアル化自社事業を強化する! 知財マネジメントの基礎知識(5)(4/4 ページ)

[野崎篤志/ランドンIP,@IT MONOist]
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パテントマップってどういうもの?

講師

ちなみに皆さん、パテントマップ特許マップという言葉を聞いたことがありますか?

〜〜地西さんを含め、参加者は皆、黙ってうなずいています。〜〜

講師

いままでいろいろなグラフなどを提示してきましたが、これらがパテントマップといわれるものです。特許情報をある切り口で分析した結果を視覚化したものです。

特許情報だけではなく、自社の売り上げ高推移などの財務状況や市場シェアなどのマーケット状況についてもグラフなどで視覚化しますよね? なぜデータのままではダメなのでしょうか、グラフ化するメリットはどこにあるのでしょうか?

参加者

データだけいわれても頭の中でイメージがわきにくいからだと思います。グラフやチャートにすれば、パッと見ただけで増えているのか減っているのか、どれくらいのポーションを占めているのか、などが分かりますし。

講師

そうですね。グラフ化の一番のメリットは“理解の促進”です。理解を促進することで、傾向が把握しやすくなり、かつ課題・問題を発見しやすくなります。

パテントマップとは、ある特定技術分野や特定企業の特許出願状況を理解しやすいように視覚化したものです。競合他社は出願を増やしているのか減らしているのか、増やしているのであればどういった課題に取り組んでいるのか、その課題についてどのような解決方法で対応しようとしているのか、それは自社が現在取り組んでいる方法と類似していないか、などなど……。パテントマップは作成することが目的ではなく、作成したうえで自社の戦略や対応策を練ることが真の目的です。


参考:特許情報を分析する際の視点

 特許情報だけに限りませんが、情報を分析する際の視点には「量、時間、比率、比較」の4つがあります。仮に競合他社A社の製品Bについて調べたい場合、A社の出願件数はどれくらいあるのか(=量の視点)、出願件数の推移はどうなっているのか(=時間の視点)、製品Bの出願件数はA社全体の中でどれくらいの比率を占めるのか(=比率の視点)、自社と比べてどちらの件数が多いのか(=比較の視点)となります。

特許分析ツール・パテントマップ作成ツール

講師

さて、これまで説明してきた特許分析・パテントマップの作成ですが、無料で利用できるものもあれば、有料のものもあります

無料ツールの例

  • マイクロソフトExcel/拙著『EXCELを用いたパテントマップ作成・活用ノウハウ』などを参照
  • かんたん特許検索/出願件数推移や出願人ランキング、特許分類(IPC・FI)ランキングを算出可能のほか、特許データをCSVでダウンロード可能
  • 知財ラボ(IP Laboratory)/特許事務所、出願人、技術分野、出願国といったさまざまなランキングを算出可能
  • Patent Scope(WIPO:世界知的所有権機構)/PCT出願件数推移、出願国籍、出願人ランキング、IPCランキング

有料ツールの例

注:筆者が日常業務で利用しているのはマイクロソフトExcel(たまにWordを組み合わせますが)です。有料のソフトウェアも上記に挙げたものを含めて多数販売されていますが、最近の傾向として無料で特許分析・パテントマップ作成ができるWebサイトが増えてきました。公的なWebサイトであればWIPO(世界知的所有権機構)の提供しているPatent Scopeを使うと件数推移やランキングなどを算出してくれます。今回は時間が足りないので、次回説明したいと思います。


意匠情報・商標情報の分析・マップ化は?

チザイさん

今回は特許情報の分析やパテントマップが講義の中心だったと思うのですが、意匠や商標ではどうなっているのでしょうか?

講師

ご指摘いただいたとおり、今回は特許情報分析、そしてパテントマップについて重点的に解説してきましたが、特許だけではなく意匠や商標も分析対象となります。特許庁では意匠や商標情報について分析した意匠・商標出願動向調査や意匠情報を視覚的にまとめた意匠権設定状況マップなどを公表しています。

また特許情報分析レポートやパテントマップについては、以下のように特許庁やその外郭団体の工業所有権情報・研修館などから発表されており、誰でも見ることができます。まずは下記のリンクをたどって、ご自分の会社に関連しそうな技術分野のレポートを見て特許分析やパテントマップに慣れていただくといいでしょう。


参考:無料で閲覧できる特許分析報告書・パテントマップ

◇ ◇ ◇

 以上で第5回は終了です。お疲れさまでした。

 今回は知的財産権情報(主に特許情報)の分析手法やパテントマップとはどういったものかについて解説しました。

 次回は本連載の最後となりますが、ある仮想の企業が新規事業を検討する際に、どのようなステップで特許検索・特許分析、そしてパテントマップを作成していけば良いか? などについて解説します。


筆者紹介

ランドンIP合同会社 野崎篤志(のざき あつし)

1977年新潟県生まれ。
2002年慶応義塾大学院 理工学研究科 総合デザイン工学専攻修了(工学修士)。
2010年金沢工業大学院 工学研究科 ビジネスアーキテクト専攻修了(経営情報修士)。
日本技術貿易株式会社・IP総研を経て、現在ランドンIP合同会社シニアディレクター(日本事業統括部長)。

知的財産権のリサーチ・コンサルティングやセミナー業務に従事する傍ら、Webサイトe-Patent Map.nete-Patent Search.netやメールマガジン「特許電子図書館を使った特許検索のコツ」を運営・発行している。
著書に『EXCELを用いたパテントマップ作成・活用ノウハウ』(技術情報協会)、『知的財産戦略教本』(部分執筆、R&Dプランニング)、『欧州特許の調べ方』(編著、情報科学技術協会)、『経営戦略の三位一体を実現するための特許情報分析とパテントマップ作成入門』(発明協会)がある。



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