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» 2010年06月17日 00時00分 公開

モノづくり最前線レポート(20):中国生産に向けて日系企業が考えるべき法的課題とは (2/3)

[原田美穂,@IT MONOist]

――中国には各国メーカーが工場を置いていますが、各国と比較した日本企業の状況はどう見ていますか。

 日本企業に限ってみると、それほどひどい状況にはない場合が多いようです。

 ただ、日本企業によくあるケースとしては、圧倒的に品質に関するトラブルが多いようです。例えば現地サプライヤと何らかの部品を調達する契約を交わしたとして、品質の定義をはっきりとしていない場合が多いのです。どういったものを納品したら不良品とするか、その責任はどちらにあるか、という定義があいまいなため、納品後になって「この品質では購入できない」といってくる。一方のサプライヤは当然「要求どおりに作ったのだから対価を支払うべき」と訴えてきます。契約書に明記されていない場合のリスクは大きいといえるでしょう。

 例えば、ドイツの企業などは非常に綿密な契約書を作成します。それこそ数百ページにもなる書類で、あらゆる不良品の可能性を書き連ねます。また、不良品が含まれていた場合、どちらがその責任を持つかといったことも、すべて記入しています――プロのわれわれが見てもやり過ぎではないか、と思うほどのち密さです。

 ここまでの厳密さが必要とはいいませんが、日本企業の場合は「あうんの呼吸」が通用しないサプライヤに対応する方法を考えるべきでしょう。たいていの企業が、社内に現地サプライヤとの契約ノウハウを持っていないようで、われわれから見ると「ざる」のような契約書を作成してくる場合もあります。わたしの見解としては、ドイツと日本の中間に位置付けられる、米国企業式の契約方法が適していると思います。

撤退リスクを考慮した進出計画が重要

――中国では撤退リスクが非常に高いといわれています。いま、各社が中国市場のシェア獲得を目指して進出が進んでいますが、仮に市場獲得に失敗した場合も撤退できないとなると、これは非常に大きなリスクではないかと思います。

 中国に限ったことではありませんが、海外の企業が撤退する際には少なくとも半年以上の時間をかけて手続きしなくてはなりません。まず、撤退するためには、雇用していた人たちへの賠償責任があります。撤退するためには賠償責任を果たしたうえで破産手続きを取る必要があります。

 しかし、撤退を検討する企業のほとんどは従業員に対しての賠償を行えるほどの資金は持ち合わせていない、という場合もあります。こうなると、破産手続きが承認されることはありません。もともと、政府の方針として、企業の破産は「好ましくない」とされていることもあります。さまざまな手続きがクリアしなければ撤退できないため、企業活動を行うこともなく、オフィスだけが登録され「塩漬け」されている場合も多いようです。それでも日本企業はきちんと責任を果たそうとしている場合が多いようですが、最悪の場合では夜逃げ同然に帰国してしまう企業もあり、ここでは国名は述べませんが外交問題に発展したところもあります。

 事業を展開する際には、こうしたリスクについて十分に準備しておくべきです。加えて、現地の情報を素早くキャッチアップするためにも、信頼のおける専門家から現地の情報を獲得しておくべきです。

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