走行・音声認識を強化、日立の人間共生ロボットオフィスなどにおける人間共生ロボットの実用性向上

日立製作所は人間共生ロボット「EMIEW2」の実用性向上を目的に、走行機能の強化と雑音の中でも声を認識できる音声認識機能を開発した。

» 2010年06月18日 00時00分 公開
[八木沢篤,@IT MONOist]

 2010年6月18日、日立製作所は人間共生ロボット「EMIEW2」の走行機能と音声認識機能を強化・開発。オフィスや病院での案内・巡回監視などのサービスを行う人間共生ロボットの実用化に向けて開発を加速すると発表した。

 EMIEW2が開発されたのは2007年のこと。独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「次世代ロボット実用化プロジェクト(プロトタイプ開発支援事業)」の一環として2005年に開発された「EMIEW」がベースとなっている。EMIEW2は、人の早足とほぼ同じ時速6kmで2輪の自律走行を行うことが可能。しかし、オフィスや病院などでの実運用を行ううえでは、配線やマット・敷居などの段差、音楽・放送や人の話し声をはじめとするさまざまな雑音など、予期せぬ障害やオフィス・病院などの特有の環境を把握し、適切に対処することが課題となっていたという。

走行機能と音声認識機能を強化した「EMIEW2」 画像1 走行機能と音声認識機能を強化した「EMIEW2」

 今回、同社はEMIEW2の実用性向上を目的に、走行機能を強化するとともに、さまざまな雑音の中でも人の声を正しく認識できる音声認識機能を新たに開発した。

 床面の段差に乗り上げた際の大きな衝撃をバネで吸収し、バネの変形に伴うロボットの姿勢の傾きをアクチュエータの伸縮で補正することで、安定した姿勢を維持する「アクティブサスペンション」を装備したほか、段差を乗り越える際に浮いた車輪が過剰空転するのを抑制し、着地後にも安定した走行を継続する「空転制御技術」を足回りに搭載。この2つの技術により、予期せぬ段差や配線を乗り越えても安定して走行できるという。

 また、現行のEMIEW2で採用している、左右方向の音の聞き分け機能に、上下方向を新たに追加。これにより立体的な音の聞き分けが可能になったという。頭部に搭載された14本のマイクを用いて、高い精度で雑音を除去するとともに、ロボット内部で発生する雑音専用の除去機能により、音声認識性能を飛躍的に向上しているとのこと。これにより、構内放送などのさまざまな雑音の中でも、人の声を正しく認識できるという。

寸法 W300×D250×H800(mm)
重量 14kg
移動機構 二輪・四輪変形移動機構
アクティブサスペンション機構
最大速度 6km/h
最大加速度 2m/s2
自由度 25自由度(自由度とはロボットの間接の数)
動作時間 約1.5時間(フル充電して稼働率50%の場合)
音声認識 14チャンネル マイクアレイによる遠隔音声認識
自己位置認識 レーザスキャナを用いたスキャンマッチング
表1 EMIEW2の主な仕様

 同社は今後、実証試験を通じ実用化に向けたデータを蓄積し、人と安全に共存しながら案内サービスや巡回監視サービスを安定的に提供する人間共生ロボットとしての応用を目指すとしている。

 なお、2010年7月22〜23日の2日間、東京国際フォーラムで開催する創業100周年記念イベント「日立 uVALUEコンベンション2010」でEMIEW2の展示を行う予定だという。

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